• 民法担保物権ー7.非定型担保
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1譲渡担保

堀川 寿和2021/12/27 13:29

譲渡担保の意義と機能

 譲渡担保とは、債権を担保するため目的物の所有権を債権者に移転させ、債務が弁済されればその所有権は元の所有者に戻すが、弁済されなかったら目的物の所有権を債権者(譲渡相保権者)に帰属させ債権の弁済に充てるという形式の担保である。民法上規定されていない非典型担保であるが、古くから実務では利用されており、判例もこれを認めている。

譲渡担保の目的物

 不動産、動産、株式など譲渡可能なものであれば広く目的物とすることができる(ex.ゴルフ会員権、債権、有価証券)。

 形式上、所有権は債権者に移転し、不動産の場合には債権者名義に所有権移転登記をすることができる。


(1) 集合動産

 倉庫に保管されている商品等(集合動産)について、まとめて譲渡担保権を設定することも可能である(最S54.2.15)。


判例(最S62.11.10)
構成部分が変動する集合動産であっても、その種類・所在場所および量的範囲を指定するなどの方法によって目的物の範囲を特定することができる場合には、1個の集合物として譲渡担保の目的とすることができる。


(2) 集合債権

 たとえば、AがBに対する債権を担保するために、BのCに対する債権に譲渡担保を設定することもできる。そして、既に発生している債権およびこれから発生する債権(将来債権)について、一定の特定性があれば、これらを一括して譲渡担保の目的とすることができる。


判例(最H11.1.29)
将来発生すべき債権を譲渡担保の目的とする場合、一定の特定性があれば、その債権の発生が確実であるかを問わず、譲渡担保権を設定することができる。



譲渡担保の法的構成

 譲渡担保の法的構成をどのように捉えるかについては、大きく2つの説に分かれている。所有権の移転という形式を重視する説(所有権的構成)と、あくまでも担保目的という実質を重視する説(担保的構成)である。


(1) 所有権的構成

 譲渡担保権者は、目的物の所有権を(対内的にも対外的にも)取得すると考える説である。ただし、譲渡担保権設定者に対しては、取得した権利を担保の目的を超えて使用・処分しないという(債権的な)義務を負う。しかしこの義務は譲渡担保権者と設定者の間の対内的な義務であり、第三者との関係では目的物の所有権は譲渡担保権者に移っているため、もし譲渡担保権者が目的物を第三者に売却等してしまえば、この説によると買主である第三者は所有権を取得することができることになる。一方、譲渡担保権設定者は、目的物の所有権を失っているので、別の債権者のために同一の目的物に重ねて譲渡担保を設定したり、目的物を第三者に売却等することはできないことになる。


(2) 担保的構成

 譲渡担保の目的物の所存権は依然として設定者に帰属し、譲渡担保権者は目的物について担保権を有するに過ぎないと考える説である。担保的構成を採ると、目的物の所有権は設定者に帰属していると考えるので、同一の目的物について、複数の譲渡担保を設定することができることになる。


(3) 判例の立場

 大審院時代は、所有権的構成に立っていたが、近時の最高裁判例は、所有権的構成に立つものと、担保的構成に立つものに分かれる。


担保的構成に立つ判例

判例(最S58.9.28)
讓渡担保は、債権担保のために目的物件の所有権を移転するものであるが、この所有権移転の効力は債権担保の目的を達するのに必要な範囲内でのみ認められ、設定者は、譲渡担保権者が換価処分を完結するまでは、被担保債務を弁済して目的物件についての完全な所有権を回復することができる。したがって、正当な権原なく目的物件を占有する者がある場合には、特段の事情がない限り、設定者は、その占有者に対してその返還を請求することができる。