• 民法担保物権ー5.留置権
  • 4.留置権と同時履行の抗弁権
  • 留置権と同時履行の抗弁権
  • Sec.1

1留置権と同時履行の抗弁権

堀川 寿和2021/12/27 12:48

留置権と同時履行の抗弁権

 留置権とよく似た権利として「同時履行の抗弁権」がある。たとえば、自動車の修理を内容とする双務契約において、依頼者が修理代金を支払うことなく、修理した自動車の引渡しを請求してきた場合、修理業者は修理代金を支払うまでは修理した自動車を引き渡さないと言える。これが同時履行の抗弁権の典型例である。

 訴訟における原告の物の引渡し請求に対して被告が同時履行の抗弁権を主張した場合、裁判所は原告敗訴判決ではなく、原告の履行と引換えに被告に物の引渡しを命じる引換給付判決を出す点では留置権と同じである。

 しかし、留置権は物権であるため、第三者に対しても主張できるのに対して、同時履行の抗弁権は双務契約によって発生する債権的権利であり、当事者である契約の相手方に対してしか主張できないという点が留置権とは異なる。また、同時履行の抗弁権には、留置権で認められる代担保供与による消滅請求の規定は存在せず、留置権には認められる競売権もない。

 同時履行の抗弁権について詳しくは、民法債権法にて。