• 民法担保物権ー4.質権
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  • Sec.1

1権利質

堀川 寿和2021/12/27 12:21

権利質の意義

 質権は、財産権をその目的とすることができる(民法362条)。

 債権、株式、無体財産権(知的財産権)、地上権・永小作権・賃借権などの用益権を目的とする質権を「権利質」という。権利質の中で最も重要なのが「債権質」である。以下、債権質を中心に解説する。


債権質の設定

(1) 債権質の意義

 債権質とは、債権を目的とする質権をいう。金銭債権がほとんどであるが、物の引渡債権等にも設定は可能である。



(2) 債権質の目的

 質権は、譲渡することができない債権をその目的とすることができない(民法362条2項→343条)ため、債権質の目的は譲渡性のある債権でなければならない。

 なお、債権に譲渡制限の意思表示がされていた場合(譲渡禁止特約のある債権)であっても、その債権を目的として有効に質権を設定することができる(民法466条2項)。ただし、質権者が譲渡制限の意思表示につき悪意または重大な過失によって知らなかった場合には、債務者は債務の履行を拒むことができる(民法466条3項)。なお、この場合も質権設定契約自体は有効であることに注意。


(3) 債権質の設定

 債権に質権を設定する場合、原則として、証書の交付は不要である。たとえば、質権を設定する債権が金銭消費貸借に基づく金銭債権で、消費貸借について金銭消費貸借契約書や借用証書が作成されていたとしても、これらの証書の交付を要せず、質権は成立する。

 例外的に、「指図証券」を目的とする質権の設定については、その証券に質権設定の裏書をして質権者に交付しなければ、その効力を生じない(民法520条の7→520条の2)。


債権質の対抗要件

 債権質の対抗要件は、債権譲渡の対抗要件と同じである。


(1) 第三債務者Bに対する対抗要件

 債権を目的として質権を設定したときは、質権設定者Aが第三債務者Bに対し、質権を設定した旨を通知するか、または第三債務者Bがその旨を承諾しなければ、第三債務者に対抗することができない(民法364条→467条1項)。



 質入れの通知はそれによって不利益を受ける質権設定者Aから第三債務者Bに対してなされることが必要である。質権者Cがした通知では対抗力はない。これに対し、承諾はBからAになされてもよいし、Cになされてもよい。


判例(最S58.6.30)
この通知・承諾は具体的に質権者を特定してなされたものであることが必要である。


判例(大T5.9.5)
債権の質入れは、第三債務者が通知を受け又は承諾したときから第三債務者その他の第三者に対抗することができ、第三債務者は質権を害する行為ができなくなる。その結果、第三債務者はその後質権設定者に対して取得した債権をもって質権者に対し相殺を主張することができない。


(2) 第三債務者以外の第三者に対する対抗要件

 また、この通知または承諾が確定日付のある証書によってされなければ、第三債務者以外の第三者(CにとってはD)に対抗することができない(民法364条→467条2項)。