- 民法担保物権ー4.質権
- 3.不動産質権
- 不動産質権
- Sec.1
1不動産質権
不動産質権については、動産質権と結論の異なる部分がよく出題されるため、動産質権と不動産質権の異同をよく学習しておくことが重要である。不動産質権には「質権総則(民法342条~351条)」「不動質権固有の規定(民法356条~360条)」が適用され、さらに「抵当権の規定」が民法361条で準用される。
■意義
不動産質とは、不動産を目的として設定される質権をいう。目的物は土地と建物である。
■不動産質権の設定
(1) 不動産質権の設定
不動産質権の設定は、質権者(債権者)と設定者の間の質権設定契約によってなされる。設定者は債務者以外の第三者であってもよい(物上保証)。不動産質権も要物契約なので、目的物たる不動産を質権者に引き渡さないと、質権は成立しない点は動産質権と同様である。
なお、質権の成立に登記は不要である(登記は質権の成立要件ではなく対抗要件)。
(2) 引渡しの態様
引渡しは「現実の引渡し」だけでなく、「簡易の引渡し」、「指図による占有移転」でもよい。「指図による占有移転」でもよいから、賃貸中の不動産の質入れもできる。なお、「占有改定」による引渡しは認められない点は、動産質権設定の際の引渡しと同様である。
■不動産質権の対抗要件
(1) 対抗要件
不動産質権の対抗要件は、「登記」である(民法177条)。したがって、不動産に質権を設定する契約を締結して目的不動産の引渡しを受けていても、登記をしていなければ、不動産の所有者から所有権を取得した第三者に対して質権者は不動産質権を対抗することができない。
それに対して、不動産の引渡しがされていない場合には、質権設定の効力自体が発生していないため、登記だけしても不動産質権の効力が生じない以上、対抗力も有しない。
(2) 不動産の占有喪失
不動産質権が設定され、その登記がされた後は、不動産質権者が目的たる不動産の占有を失ったとしても、対抗力を失わない(大T5.12.25)。不動産質権者が、目的たる不動産を設定者に返還した場合でも、質権は消滅しないし、対抗力も失われない(大T15.12.25)。
cf.動産質権の場合