• 民法担保物権ー4.質権
  • 2.動産質権
  • 動産質権
  • Sec.1

1動産質権

堀川 寿和2021/12/27 12:10

意義

 動産質とは、動産を目的として設定される質権をいう。

動産質権の設定

(1) 動産質権の設定

 動産質権の設定は、質権者(債権者)と設定者の間の質権設定契約による。要物契約なので、目的たる動産を質権者に引き渡さないと、質権は成立しないことは前述のとおりである。なお、引渡しには「占有改定」は含まれないので(民法345条)、質権者に質物を占有改定の方法によって引き渡すことはできない。

 物の所有者ではない者が、自分が物だと偽って質権を設定した場合、原則として質権は成立しないが、質権者が善意•無過失であるときは、即時取得の規定により質権を取得することもあり得る(大S7.2.23)。


(2) 動産質権の順位

 「指図による占有移転」の方法によれば、同一の動産について複数の者にそれぞれ質権を設定することができる。同一の動産について数個の質権が設定されたときは、その質権の順位は、設定の前後による(民法355条)。


動産質権の対抗要件

(1) 対抗要件

 動産質権者は、継続して質物を占有しなければ、その質権をもって第三者に対抗することができない(民法352条)。つまり動産質権の対抗要件は、占有の継続である。


(2) 対抗要件の喪失

 動産質権者が質物の占有を失うと、質権を第三者に対抗できなくなる。しかし、質権自体が消滅するわけではない。したがって、質権設定契約の当事者間では目的物の占有を喪失しても質権を主張することはできる。

① 動産質権者が、質物を修繕目的で他人に保管させた場合であっても、質権者は質物に対して代理占有を有しているので、占有を失ったことにはならず、質権者は質権を第三者に対抗することができる。質権者が設定者の承諾を得た上で質物を第三者に賃貸して引き渡したような場合も同様である。

② 質権者は、設定者に質物の占有をさせることができない(民法345条)ため、質権者が設定者に質物を任意に返還した場合は、対抗力を失うことになる。

(3) 質物の回復方法

① 質権に基づく質物の返還請求

 動産質権は占有の継続をもって対抗要件とするから、目的物の占有を失った場合は質権を第三者に対抗できず、質権に基づく返還請求を行使することはできない。

② 占有回収の訴え

 もっとも、占有を奪われたときは、「占有回収の訴え」によって質物の回復を求めることができる(民法353条)。占有回収の訴えによって質物が回復されたときは、質権者による占有は中断しなかったことになる(民法203条ただし書)。占有を奪われたのでない場合、たとえば遺失や詐取の場合は占有回収の訴えによることはできず、質権者は目的物を取り戻すことができないことになる。占有を奪われた時から1年を経過したときも、もはや占有回収の訴えを提起できないから同様である。