• 民法担保物権ー3.根抵当権
  • 7.根抵当権の消滅
  • 根抵当権の消滅
  • Sec.1

1根抵当権の消滅

堀川 寿和2021/12/27 10:58

 元本が確定する前には付従性がないため、債権が消滅しても根抵当権は消滅しない。しかし、元本が確定したら確定債権の消滅によって根抵当権も消滅する。

根抵当権の消滅

(1) 物権共通の消滅原因

 根抵当権は物権であるので、物権一般の消滅事由によって消滅する。目的物の滅失、放棄、混同など抵当権と同じである。


(2) 担保物権共通の消滅原因

① 元本確定前

 元本確定前の根抵当権には、付従性はないため、弁済等によって被担保債権が消滅しても、根抵当権自体は消滅しない。

② 元本確定後

 元本確定後は、付従性を回復するため、確定債権全部が弁済等によって消滅すると、根抵当権は消滅する。


(3) 抵当権特有の消滅原因

 根抵当権も抵当権の一種であるから、抵当権特有の消滅原因によっても消滅する。代価弁済、民法379条の抵当権消滅請求など。民法379条の抵当権消滅請求は次の民法398条の22第1項の消滅請求と異なり、元本確定前後を問わず可能である。


(4) 根抵当権特有の消滅原因(根抵当権の消滅請求)

 根抵当権の元本確定後において、被担保債権の総額が極度額を超えているときは、物上保証人や抵当不動産の第三取得者等は、その極度額に相当する金額を根抵当権者に払い渡しまたは供託して、根抵当権の消滅を請求することができる(民法398条の22第1項)。

① 消滅請求権者

 物上保証人、根抵当不動産について所有権、地上権、永小作権もしくは第三者に対抗することができる賃借権を取得した者である。

② 消滅請求できない者

 根抵当権の債務者や保証人は根抵当権の消滅請求をすることができない(民法398条の22第3項→380条)。これらの者は全額弁済すべき者だからである。

停止条件付所有権、地上権等の取得者も、条件の成否未定の間は消滅請求できない(民法398条の22第3項→381条)。

③ 消滅請求の要件

(ⅰ) 根抵当権が確定していること

(ⅱ) 被担保債権の総額(確定した元本+利息・損害金の合計額)が極度額を超えていること。

(ⅲ) 極度額に相当する金銭を払い渡しまたは供託すること

④ 消滅請求の方法

 根抵当権者に対する意思表示による。形成権であるため、相手方(根抵当権者)の承諾は不要である。意思表示の到達によって当然に消滅請求の効力が生じる。共同根抵当権については、1つの不動産について消滅請求がされたときは、他の不動産についても根抵当権消滅の効力が生じる(民法398条の22第2項)。

⑤ 消滅請求の効果

 消滅請求によって根抵当権は消滅する。