• 民法担保物権ー3.根抵当権
  • 2.根抵当権の変更
  • 根抵当権の変更
  • Sec.1

1根抵当権の変更

堀川 寿和2021/12/27 10:06

 根抵当権の設定時に定めた「債権の範囲」「債務者」「極度額」「確定期日」は、設定後に変更することができる。

被担保債権の範囲の変更

(1) 意義

 元本の確定前においては、根抵当権の担保すべき債権の範囲の変更をすることができる(民法398条の4第1項)。


(2) 当事者

 根抵当権の設定契約と同じく、根抵当権者と設定者(債務者または物上保証人)との変更の合意による。


(3) 利害関係人の承諾等

 後順位抵当権者その他第三者の承諾を要しない(民法398の4第2項)。


(4) 変更の態様

 債権の範囲を変えてしまう「交換的変更」、追加する「追加的変更」、一部を除外する「削除的変更」いずれも可能である。


        交換的変更  金銭消費貸借取引―→売買取引

        追加的変更  金銭消費貸借取引―→金銭消費貸借取引

                         売買取引

        削除的変更  金銭消費貸借取引―→金銭消費貸借取引

               売買取引


(5) 変更の効果

 債権の範囲を変更されると、変更前の債権の範囲に属する債権については、いっさい担保されなくなる。一方、変更後の債権の範囲に属する債権については、変更前に生じた債権も担保されることになる。たとえば、AのBに対する売買取引を担保するために設定された根抵当権の債権の範囲を、売買取引から金銭消費貸借取引に変更すれば、A・B間の売買取引によって生じた債権は変更前に生じたものも含めてまったく担保されなくなる。一方、A・B間で生じた金銭消費貸借取引上の債権は、変更後のものはもちろん変更前に生じた債権も担保されることになる。

(6) 変更の登記

 元本が確定する前に適法に債権の範囲の変更契約がされた場合でも、変更登記をする前に元本が確定してしまったら、その変更をしなかったものとみなされる(民法398条の4第3項)。つまり、元本確定前に変更の登記をしなければ、債権の範囲の効力が生じない。変更登記が事実上の効力発生要件となる。


債務者の変更

(1) 意義

 元本の確定前においては、根抵当権の債務者の変更をすることができる(民法398条の41項)。債務者の変更は、先述の債権の範囲の変更と考え方は全く同じである。


(2) 当事者

 債権の範囲の変更と同じく、根抵当権者と設定者(債務者または物上保証人)との変更の合意による。


(3) 利害関係人の承諾等

 後順位抵当権者その他第三者の承諾を要しない(民法398の4第2項)。


(4) 変更の態様

 債権の範囲を変えてしまう「交換的変更」、追加する「追加的変更」、一部を除外する「削除的変更」いずれも可能である。



(5) 変更の効果

 債務者が変更されると、変更前の債務者に対する債権については、いっさい担保されなくなる。一方、変更後の債務者に対する債権については、変更前に生じた債権も含めて担保されることになる。たとえば、AのBに対する売買取引を担保するために設定された根抵当権の債務者をBからCに変更した場合、A・B間の売買取引によって生じた債権は変更前に生じたものも含めてまったく担保されなくなる。一方、A・C間で生じた売買取引上の債権は、変更後のものはもちろん変更前に生じた債権も担保されることになる。


(6) 変更の登記

 元本が確定する前に適法に債務者の変更契約がされた場合でも、変更登記をする前に元本が確定してしまったら、その変更をしなかったものとみなされる(民法398条の4第3項)。つまり、元本確定前に変更の登記をしなければ、債務者の変更の効力が生じない。債権の範囲の変更と同じく変更登記が事実上の効力発生要件となる。


確定期日の変更

(1) 意義

 元本確定期日を定めるか否かは任意であるが、すでに定めた元本確定期日を変更したり、廃止したり、逆に新たに元本確定期日を新設することもできる。ただし、いずれも元本確定前に限られる(民法398の6第1項)。確定期日は、これを定めまたは変更した日から5年以内の日でなければならない(民法398条の6第3項)。


(2) 当事者

 債権の範囲の変更と同じく、根抵当権者と設定者(債務者または物上保証人)との変更の合意による。


(3) 利害関係人の承諾等

 後順位抵当権者その他第三者の承諾を要しない(民法398の4第2項)。


(4) 変更の態様

 「延期」「短縮」「新設」「廃止」がある。



(5) 変更の登記

 先に定めた元本確定期日までに登記をしないと、その確定期日で確定してしまうことになる。

 やはり、登記が事実上の効力発生要件となる(民法398条の6第4項)。