• 民法担保物権ー2.抵当権
  • 11.抵当権の消滅
  • 抵当権の消滅
  • Sec.1

1抵当権の消滅

堀川 寿和2021/12/27 09:58

 物権共通の消滅原因、担保物権共通の消滅原因のほか、抵当権特有の消滅原因がある。

一般的消滅原因

(1) 物権共通の消滅原因

 目的物の滅失、放棄、混同など。

 建物に抵当権が設定された後、その建物が滅失し、新たに建物が再築されても、再築された建物には抵当権の効力は及ばない。


(2) 担保物権共通の消滅原因

① 被担保債権の消滅

 弁済、被担保債権の消滅時効など、被担保債権の消滅によって抵当権も消滅する(付従性)。

② 抵当権の実行

 抵当権が実行され、抵当権の目的不動産が競売されたときは、抵当権は消滅する。


抵当権特有の消滅事由

(1) 代価弁済(民法378条)、抵当権消滅請求(民法379条)


(2) 抵当権の消滅時効

① 債務者および抵当権設定者との関係

 抵当権は、債務者および抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しない(民法396条)。民法167条2項の規定により、所有権以外の財産権は20年間行使しないときは、時効によって消滅するはずであるが、債務者と抵当権設定者との関係では、被担保債権が存在しているのに、抵当権のみが独自に時効消滅することはない。

② 後順位抵当権者、第三取得者との関係(民法396条の反対解釈)

 後順位抵当権者、第三取得者との関係では、抵当権のみが時効消滅する。したがって被担保債権の弁済期到来後20年経過すると、被担保債権の消滅時効が更新されていても、後順位抵当権者、第三取得者などは抵当権の消滅時効の主張ができる(大S15.11.26)。

③ 第三者が抵当不動産を時効取得した場合

 時効取得は原始取得であるため、第三者が抵当不動産の所有権を時効取得すれば、その反射的効果として、抵当権は消滅することになる(民法397条)。397条は、債務者と抵当権設定者は除外しているため、債務者または抵当権設定者が抵当不動産について取得時効の要件を満たしたとしても、抵当権は消滅しない。

(3) 抵当権の目的たる用益権(地上権・永小作権)の消滅

 抵当権は、土地・建物の所有権のほか、地上権や永小作権を目的として設定できるが、これら地上権や永小作権が存続期間の満了等によって消滅すると、その上に設定された抵当権も消滅せざるを得ない。しかし、地上権や永小作権が放棄によって消滅した場合には、その放棄の効果を抵当権者に対抗できない(民法398条)ため、地上権・永小作権は消滅するが、抵当権者は抵当権は消滅していないものとして実行することができる。