• 民法担保物権ー2.抵当権
  • 9.一括競売
  • 一括競売
  • Sec.1

1一括競売

堀川 寿和2021/12/27 09:37

一括競売の意義

 抵当権の設定後に抵当地に建物が築造されたときは、抵当権者は、土地とともにその建物を競売することができる(民法389条1項)。すなわち、更地に抵当権が設定された後、建物が築造された場合には、抵当権者は建物を土地とともに競売することができ、これを「一括競売」という。

一括競売の趣旨

 更地に抵当権が設定された後にその土地上に建物が築造された場合、法定地上権は成立しないので、土地が競売されると建物所有者は建物を収去して土地を明け渡さなければならない。しかし、それでは社会経済上の損失があまりに大きいし、また土地の買受人としても、建物の所有者に対して建物の収去を求めるのは、いろいろと手間がかかるため、このような場合に抵当権者は抵当権の目的である土地と共に抵当地上の建物も一括して競売できるとしたものである。

 もっとも、第三者が築造した場合に、その者が抵当地につき、抵当権者に対抗することができる権利を有する場合には一括競売は認められない(民法389条2項)。


一括競売の要件

 「土地に抵当権を設定した当時建物が存在せず、後に抵当地上に建物が建築されたこと」が必要である。建物は、抵当権設定者が建築した場合であると、第三者が建築した場合であるとを問わない。設定者が建物を築造し、後に第三者に譲渡した場合も一括競売することができる。