• 民法担保物権ー2.抵当権
  • 1.抵当権総説
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  • Sec.1

1抵当権総説

堀川 寿和2021/12/23 15:54

抵当権の意義

 抵当権とは、特定の債権を担保するために債務者または第三者(物上保証人)の提供した不動産の占有を移転せず、債務が弁済されなかった場合にそれを換価して、その代金等から他の債権者に優先して弁済を受けるものとする約定の担保物権である。債務者のほか、第三者も債権者のために抵当権を設定することができる。


 Bが弁済期にAに対して弁済できなかった場合、Aはあらかじめ物上保証人C所有地上に設定した抵当権を実行し競売にかけ、その売却代金から優先弁済を受けることになる。



質権との差異

 抵当権も質権も当事者の合意(設定契約)によって設定する約定担保物権である点で共通するが、質権設定契約は目的物を引き渡すことによって効力が生じる要物契約である。一方、抵当権は目的物の引渡しは必要なく、設定者に占有をとどめたまま、当事者の合意(設定契約)のみでその効力が生じる諾成契約である。

抵当権設定の目的物

 抵当権は、目的物の引渡しを必要としないので、占有をもって公示方法とすることはできない。したがってその目的となるものは「登記・登録制度」のあるものに限られることになる。民法上、抵当権の目的物となるのは「不動産(所有権)」、「地上権」、「永小作権」に限られる(民法369条)。上記以外でも、公示制度(登記・登録制度)がしっかりとしているものについては、特別法によって抵当権の目的とすることが認められているものもある。

 ex.鉄道財団、工場財団等の各種財団、立木、船舶、自動車、航空機、農業用動産、建設機械

 通常の動産に抵当権を設定できないし、債権にも抵当権を設定できないため、「賃借権」を抵当権の目的物とすることはできない。