- 民法物権ー5.用益物権
- 2.地上権
- 地上権
- Sec.1
1地上権
■意義
「地上権」とは、他人の土地において、工作物または竹木を所有するため、その土地を使用することを内容とする物権である(民法265条)。
① 工作物
工作物とは、地上や地下の建造物をいう。建物、電柱、道路、橋梁、駐車場、地下鉄、送電設備、ゴルフ場等である。
②竹木
竹木とは、土地に植栽される樹木および竹のことである。なお、桑・茶・果樹など、植栽することが耕作とされるものについては永小作権が設定されることになっているので、地上権の対象とはならない。
■地上権の成立
(1) 地上権の取得事由
① 地上権設定契約
地上権は、通常、土地所有者との地上権設定契約によって成立する。
② その他の取得原因
その他に、時効取得、譲渡、相続、遺言によっても取得される。また、抵当権実行による競売等により、法の規定によって「法定地上権」が成立することもある(民法388条)。
(2) 地上権の客体
地上権は、原則として、1筆の土地の全部を対象として設定される。では、次のような場合、地上権を設定することができるか?
① 土地の一部
1筆の土地の一部を目的として地上権を設定することができる(大M34.10.28)。
ただし、1筆の土地の一部に地上権を設定する旨を登記する方法は制度上存在しないので、その地上権が第三者に譲渡された場合は、地上権が1筆の土地の一部にしか及ばないことをその譲受人に対抗することはできない。したがって、1筆の土地の一部を目的として地上権を設定した場合は、いったん分筆登記をした上で設定登記をする必要がある。
② 共有持分上の設定
不動産の共有持分のみに対する用益権の設定はできない。たとえば、A・B共有の土地のA持分もしくはB持分のみに対する地上権設定はできない。
■対抗要件
(1) 登記
地上権の取得を第三者に対抗するためには登記を必要とする(民法177条)。地上権は物権であることから当然に「登記請求権」があり、設定者に対し登記に協力すべきことを請求できる。拒まれれば訴えを提起し、判決に基づいて単独で登記をすることができる(不動産登記法63条)。
cf.賃借権は債権なので、土地賃借人は、賃貸人との特約がない限り登記請求権を
先例 | (S37.5.4民甲1262号回答) |
当該土地につき地上権設定登記が存在する場合は、たとえその存続期間が満了しているときでもこの登記を抹消しない限りは重ねて地上権設定登記をすることはできず受理できない。 |
(2) 借地借家法による対抗要件
建物所有を目的する地上権または土地賃借権(いずれも借地権という。)の場合、その設定登記をしなくても、当該土地上に地上権者または賃借権者名義で登記された建物を所有するときは、その地上権または賃借権を第三者に対抗することができる(借地借家法10条)。
この建物の登記は、表示登記でよい(最S50.2.13)が、借地人名義の登記でなければならず、長男名義(最S41.4.27)、同居の妻名義(最S47.6.22)では、対抗力はない。