• 民法物権ー4.所有権
  • 4.建物の区分所有権
  • 建物の区分所有権
  • Sec.1

1建物の区分所有権

堀川 寿和2021/12/23 15:14

 通常、建物は1棟の建物が法律上1個の建物、すなわち1つの物として扱われる。いわゆる戸建ての建物である。一方、世の中には戸建てだけでなくマンションもある。マンションは、外から見たら1個の建物であるが、その中は構造上しっかり区分されており、それぞれが独立して住居として利用されている。このようなマンションにおいては、マンション全体(1棟の建物)を1個の建物として扱うのは適当ではない。そこでマンションのような建物においては、その中に存在するそれぞれの住居等に利用されている部分を法律上1個の建物とし、独立の所有権(区分所有権)の対象とすることとした。このような建物(1棟の建物が区分された建物)は、民法が予定している通常の建物とは異なるので、「建物の区分所有等に関する法律」(以下、「区分所有法」という。)によって規定されている。


建物の区分所有権の意義

 「建物の区分所有権」とは、1棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所または倉庫その他建物としての用途に供しうるものがある場合に、その各部分を目的とする所有権をいう。この区分所有権を有する者を「区分所有者」という(区分所有法1条2条)。


専有部分と共用部分


(1) 専有部分

 「専有部分」とは、区分所有の目的となる部分である。


(2) 共用部分

 「共用部分」とは、占有部分以外の部分で区分所有者共同で利用する部分である。マンションの廊下、階段、エレベーター、配管といった部分(法定共用部分)が共用部分の典型であるが、専有部分となり得る部分もマンションの規約によって共用部分とすることができる(規約共用部分)。たとえば、専有部分の1つを集会場としたような場合である。

 共用部分は、原則として区分所有者全員の共有に属する(区分所有法11条1項)。共用部分に関する各共有者の持分は、規約で別段の定めをしない限り、その有する専有部分の床面積の割合による(区分所有法14条1項)。共有者の持分は、専有部分の処分に従うとされているため(区分所有法15条1項)、共用部分と専有部分を分離して処分することも原則としてできない(同条2項)。共用部分について共有物の分割請求することもできない。



敷地利用権

 建物を所有するためには、その敷地の利用権が必要であることはいうまでもない。専有部分を所有するための建物の敷地に関する権利を「敷地利用権」という(区分所有法2条6項)。敷地利用権になり得る権利としては、所有権、地上権、賃借権、使用借権が挙げられる。

 敷地利用権は各区分所有者全員の共有(準共有)となる。敷地利用権の割合は、規約があればそれによるが、規約で定めがなければ、各専有部分の床面積の割合による(区分所有法22条2項)。


(1) 分離処分禁止の原則

 敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない。ただし、規約に別段の定めがあるときは、この限りでない(区分所有法22条1項)。分離処分が禁止されるのは、敷地利用権の種類(所有権・地上権・賃借権・使用借権)を問わない。

 分離処分禁止の原則に違反して、専有部分のみ、または敷地利用権の持分のみの処分がされた場合、その処分は無効であるが、その無効を善意の第三者に主張することはできない(区分所有法23条)。ただし、区分所有建物の登記記録に「分離して処分できない専有部分と敷地利用権である」旨の登記(敷地権の登記)がされている場合は、善意の第三者に対しても、分離処分の無効を主張することができる(同条ただし書)。


(2) 民法255条の適用の排除

 敷地利用権が数人の共有であり、分離処分禁止の原則が適用される場合には、民法255条の規定は適用されない(区分所有法24条)。つまり、分離処分禁止の原則が適用される敷地利用権に関しては、持分放棄による他の共有者への持分の帰属、相続人が存在しない場合の他の共有者への持分の帰属という民法の規定は適用されない。敷地利用権が共有持分であるときに255条の適用を認めると、敷地利用権は他の共有者に帰属し、占有部分は国庫に帰属することになり、分離処分したのと同じ結果を生ずるからである。