- 民法物権ー3.占有権
- 5.占有権の消滅
- 占有権の消滅
- Sec.1
1占有権の消滅
占有権は事実的支配に伴って生じ、事実的支配を失えば消滅するものである。したがって、目的物が滅失すれば占有権も消滅するが、他の物権共通の消滅原因である「混同」や「消滅時効」によって占有権が消滅することはない。
■占有権の消滅事由
(1) 占有の意思の放棄
「自己のためにする意思」を占有意思といい、したがって占有意思の放棄とは、占有者が自己のためにする意思をもたないことを積極的に表示することをいう。
(2) 占有物の所持の喪失
「所持」とは物を事実的に支配すること(自己の支配内に置くこと)をいう。それを失うことが所持の喪失である。
例外として、占有者が占有を奪われて所持を失った場合に、占有者が占有回収の訴えを提起したときには占有は失われなかったものと扱われる(民法203条ただし書)。よって占有を奪われていた期間も占有を継続していたこととなり、(取得)時効の中断事由は生じていないことになる。この場合、訴えを提起しただけでは足りず、勝訴することが必要であり、さらに現実に占有を回復することが必要である(最S44.12.2)。
■代理占有の消滅事由(民法204条1項)
(1) 本人が代理人に占有させる意思を放棄した場合(1号)
たとえば、本人が占有代理人に賃貸中の動産を第三者に譲渡し、指図による占有移転の方法で引渡した場合である。
(2) 占有代理人が本人に対して「以後自己または第三者のために占有物を所持する意思を表示した場合(2号)
占有代理人が単に返還を拒絶しただけでは本号に該当しない。
(3) 占有代理人が占有物の所持を失った場合(3号)
たとえば、賃借人が賃借物を他人に売却して引き渡せば、賃借人は所持(直接占有)を失い、賃貸人もまた代理占有権を失う(大S17.11.20)。
(4) 代理権の消滅と代理占有
代理占有は代理権が消滅しても、それによって当然には消滅しない(民法204条2項)。
代理占有は事実上の関係だから、本人と占有代理人との間の法律関係(たとえば、賃貸借、寄託契約等)が終了しても、そのことだけで代理占有は消滅しない。