• 民法物権ー2.物権の変動
  • 2.不動産物権変動
  • 不動産物権変動
  • Sec.1

1不動産物権変動

堀川 寿和2021/12/23 10:37

不動産物権変動における公示(対抗要件)

(1) 不動産登記

 「不動産登記」とは、不動産の現況とそれに対する権利関係を一定の公の帳簿(登記簿)に記録することをいう。


(2) 登記の対抗力

 民法177条で、「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することはできない。」と定めているところから、わが民法上、登記は不動産物権変動の対抗要件とされている。

 つまり不動産の物権変動の効力は当事者の意思表示で生じているが、そのことを当事者以外の第三者に対して主張するためには登記が必要である。

 なお、当事者間では、登記をしなくても物権変動を主張することができる。



(3) 対抗力の発生時期

 対抗力は登記記録に記録された時に発生する。記録のない限り対抗力は認められない。当事者が適法な申請をし、登記官がこれを受理しても、懈怠などで登記記録に記録がされなかったときは登記があるといえず、対抗力は認められない。

(4) 対抗力の存続

 いったん適法になされた登記がその後に当事者のあずかり知らぬ他人の行為によって消滅しても対抗力は存続するとするのが判例である。


判例(大T12.7.7)
抵当権の登記が登記官の過誤により不当に抹消されても、抵当権者はその後に新たに抵当権を取得して登記した第三者に対し、自己の抵当権を対抗することができる。


判例(最S34.7.24)
甲→乙への所有権移転登記を経由した以上、登記簿が戦災により滅失し、登記簿滅失による回復登記申請期間を経過したとしても、甲から所有権を譲り受けた丙に対して自己の所有権取得を対抗することができる。


判例(最S42.9.1)
登記名義人より委任を受けた司法書士の過誤による申請によって登記が抹消されたときは対抗力が消滅する。


(5) 登記しなければ第三者に対抗できない物権

 登記できる権利については、原則として登記をしておかないと第三者に対抗できない。逆に登記できない権利については、登記なくして第三者に対抗できることになる。


登記できる権利民法上の物権不動産所有権、地上権、永小作権、地役権、
先取特権、不動産質権、抵当権(根抵当権)
物権以外の権利不動産賃借権、不動産買戻権
登記できない権利民法上の物権占有権、留置権、入会権
物権以外の権利水利権



取消しと登記

(1) 取消し前の第三者

 取消し前の第三者に対しては登記なくして対抗しうる。




(例外)

 ただし③の取消原因が錯誤または詐欺の場合、第三者Cが善意無過失のときは、民法96条3項の規定によってAは取消しの効果をCに対抗できない。



(2) 取消し後の第三者

 取消しの第三者に対しては登記がなければ対抗できない。BからA・Cに対する二重譲渡とみてAとCの対抗問題で処理するのが判例(最S32.6.7)である。




解除と登記

(1) 解除前の第三者

 解除の第三者に対しては、解除をもって対抗できない。民法545条1項ただし書に「解除によって第三者の権利を害することはできない。」と規定しているからである。ただし、判例(大T10.5.17)は第三者が保護されるためには、登記が必要であるとしている。



(2) 解除後の第三者

 解除の第三者の場合は、取消後の第三者の場合と同しく二重譲渡の問題として処理する(最S35.11.29)。