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1設備

堀川 寿和2021/12/21 16:18

給水設備

(1) 給水方式

 給水方式は、水道事業者が敷設した水道本管から、建物内へ水道水を引きこむのに受水槽を使用するかしないかにより、水道直結方式と受水槽方式の2つに分類することができる。どの方式を用いるかは、建物の大きさや用途、設置にかかる費用などを考慮して選択される。


① 水道直結方式

 水道直結方式とは、途中に貯水槽(受水槽や高置水槽など)を使用することなく、水道本管(配水管)から直接に給水を受ける方式である。そのため、新たに水が汚染されることはほとんどなく、他の方式に比べ安全・衛生的な給水方法であるといえる。貯水槽を必要としないため、これを設置する場所を確保する必要がなく、その清掃や点検など維持管理の必要もない。ただし、貯水機能がないため、水道事業者の水道供給が停止したときは、給水できなくなる。

 水道直結方式は、さらに増圧給水ポンプを使用するかによって、直結直圧方式と直結増圧方式に分類することができる。


(a) 直結直圧方式

 直結直圧方式とは、水道本管から分岐して引き込んだ上水を、各住戸に直接給水する方式である。増圧給水ポンプなどは使用しない。そのため、設備費用は安く、直圧(配水管の水圧のみ)で給水するので、電気代がかからず、また、停電時であっても給水することができる。しかし、配水管の水圧には限度があるので、この方式を採用できる建物の階高には制限があり、一般には3階建てまでとされる。したがって、この方式はおもに戸建住宅や小規模マンションで採用される。配水管の水圧が高い地域などでは、直圧直結方式で4階以上に給水することが可能なこともある。この方式は、配水管の圧力応じて給水圧力が変動するので、たとえば渇水時などに減圧給水されると、給水圧力も低下する。


(b) 直結増圧方式

 直結増圧方式とは、水道本管から分岐して引き込んだ上水増圧給水ポンプで各住戸へ直接給水する方式である。受水槽や高置水槽を必要としないので、スペースを有効利用でき、受水槽方式よりも設備費用を軽減することができる。配水管の圧力と同時に増圧給水ポンプを利用するために、一般に、直圧では給水不可能な高層階への給水が可能となり、おもに中規模以下のマンションやビルを対象とする方式である。新築だけでなく、既存マンションの改修工事の際に、高置水槽方式からこの方式への変更が多く見られる。

 給水時にポンプが稼働するため電気代はかかるが、水道本管の圧力を利用するので、エネルギー低減のメリットがある。しかし、停電時は直圧による給水が可能な低層階には給水できるが、それ以上の高層階には給水できなくなる。また、受水槽・高置水槽がないため、断水すると水の供給が得られなくなる。定期的なポンプの検査も必要となる。 


② 受水槽方式

 受水槽方式とは、水道本管から分岐して引き込んだ上水を、いったん受水槽にため、この水を給水する方式である。この方式をとると、水道直結方式では給水できない高層階への給水が可能となる。また、受水槽に貯水機能があるので、災害や事故で水道事業者からの水道供給が停止しても、受水槽の水がなくなるまでは、これを給水することが可能となる。

 水道直結方式と異なり、受水槽やポンプなどを使用するために、これらを設置するための場所を確保する必要があり、これらの維持管理に要する費用やポンプを稼働させるための電気代などがかかってくる。また、いったん受水槽に水をためるため、水道直結方式に比べると水質の劣化が生じる。

 受水槽方式は、受水槽以降の給水方式の違いから、高置水槽方式、圧力タンク方式、ポンプ直送方式などに分類することができる。


(a) 高置水槽方式

 高置水槽方式とは、受水槽に貯めた水を、揚水ポンプでマンションの屋上その他高い場所に設置された高置水槽に揚水し、この水を各階の住戸に重力による水圧によって給水する方式である。これまで、多くのマンションで採用されてきた。この方式の給水圧力は、変動が少なく安定している。しかし、高層階では水圧不足、下層階では過大水圧になりやすいという欠点がある。1つの高置水槽から適当な水圧で給水できる階高は、一般に、10階程度までとされる。

 高置水槽方式の揚水ポンプは、通常2台設置して自動交互運転とする。これは、お互いに、一方のポンプが故障したときの予備も兼ねているからである。この方式では、受水槽と高置水槽の2か所で貯水しているため、水道事業者の水道供給が停止した場合であっても、これらの貯水槽の水がなくなるまでは、給水することができる。ただし、停電の場合は揚水ポンプが機能しないので、高置水槽に貯水された水のみが給水可能である。

 なお、近年では水道本管から直接引き込んだ水を、増圧給水ポンプで高置水槽まで揚水する方式もある。


(b) 圧力タンク方式

 圧力タンク方式とは、受水槽にためた水を加圧給水ポンプで密閉された圧力タンクに給水して圧力タンク内の空気を圧縮加圧することで、その空気圧によって各住戸に給水する方式である。低層の建物では高置水槽方式だと十分な給水圧力が得られないために用いられるものであり、おもに小規模なマンションで採用されている。圧力タンク内の水が減少することで空気圧が一定の水準まで低下したことを圧力スイッチが感知すると、加圧ポンプが稼働して圧力タンクに給水するしくみになっているので、ポンプを常に稼働させる必要がなく電気代を抑えることができるが、空気圧の変化に応じて給水圧力は変動するため安定しない。貯水機能があるので水道事業者の水道供給が停止しても、貯水槽の水がなくなるまでは給水が可能であり、停電時であっても、圧力タンクの空気圧がなくなるまでは、圧力タンク内に残っている水の給水が可能である。

(c) ポンプ直送方式

 ポンプ直送方式は、受水槽の水を給水ポンプにより建物内の必要な個所へ直送する方式である。この方式は、大規模な団地や中層から超高層マンションに採用されている。

 この方式では、ポンプは常に稼働しており、配管内の流量や圧力を感知することで、給水量がポンプにより制御されているため、給水圧力は一定である。なお、小流量時はポンプの起動・停止が頻繁になるので、一般に、小流量時の給水用として小型の圧力タンクを設け、この間はポンプを停止させる仕組みになっている。貯水機能があるので水道事業者の水道供給が停止しても、貯水槽の水がなくなるまでは給水が可能であるが、給水にポンプを使用するため、停電時には給水することができなくなる。

 給水量を制御するために、ポンプの稼働台数を制御する方式を定速ポンプ方式、ポンプの回転数を制御する方式を変速ポンプ方式という。たとえば、給水量が減少すると、低速ポンプ方式では、ポンプの回転数は一定のままポンプの稼働台数を減らし、変速ポンプ方式では、ポンプの稼働台数は一定のままポンプの回転数を減らす。変速ポンプ方式には、吐出圧力に応じて回転数を制御する吐出圧力一定制御と、使用水量の変化に応じて回転数を制御する推定末端圧力一定制御がある。

 ポンプ直送方式は、タンクレスブースター方式、タンクレス方式、加圧給水方式などとも呼ばれる。


【給水方式(まとめ)】

水道直結方式直結直圧方式直結直圧方式 水道本管 → 各住戸
直結増圧方式水道本管 → 増圧給水ポンプ → 各住戸
貯水槽方式高置水槽方式水道本管 → 受水槽 → 揚水ポンプ → 高置水槽 → 各住戸
圧力タンク方式水道本管 → 受水槽 → 加圧給水ポンプ → 圧力タンク → 各住戸
ポンプ直送方式水道本管 → 受水槽 → 給水ポンプ → 各住戸


(2) 飲料用水槽

① 飲料用水槽(給水タンクおよび貯水タンク)の設置および構造の基準

 給水タンクおよび貯水タンクを建築物の内部、屋上または最下階の床下に設ける場合においては、次の基準によらなければならない。

(a) 外部から給水タンクまたは貯水タンク(以下「給水タンク等」という)の天井、底または周壁の保守点検を容易かつ安全に行うことができるように設けること。
水槽の形状が直方体である場合、6面全ての表面と建築物の他の部分との間に、上部を100㎝以上、その他は60㎝以上の空間を確保すること。
 (b) 給水タンク等の天井、底または周壁は、建築物の他の部分と兼用しないこと。
(c) 内部には、飲料水の配管設備以外の配管設備を設けないこと。
(d) 内部の保守点検を容易かつ安全に行うことができる位置に、次に定める構造としたマンホールを設けること。ただし、給水タンク等の天井がふたを兼ねる場合においては、この限りでない。
ⅰ)内部が常時加圧される構造の給水タンク等(以下「圧力タンク等」という)に設ける場合を除き、ほこりその他衛生上有害なものが入らないように有効に立ち上げること。
ⅱ)直径60㎝以上の円が内接することができるものとすること。ただし、外部から内部の保守点検を容易かつ安全に行うことができる小規模な給水タンク等にあっては、この限りでない。
(e) (d)のほか、水抜管を設ける等内部の保守点検を容易に行うことができる構造とすること。
水槽底部には100分の1程度の勾配を設け、最低部に設けたピットまたは溝に水抜管を設置すること。
水抜管は、排水口空間を設け間接排水とすること。
(f) 圧力タンク等を除き、ほこりその他衛生上有害なものが入らない構造のオーバーフロー管を有効に設けること。
オーバーフロー管は、排水口空間を設け間接排水とするとともに、その管端開口部には防虫網を設けること。
給水管の流入口には、吐水口空間を設けること。
 (g) 最下階の床下その他浸水によりオーバーフロー管から水が逆流するおそれのある場所に給水タンク等を設置する場合にあっては、浸水を容易に覚知することができるよう浸水を検知し警報する装置の設置その他の措置を講ずること。
(h) 圧力タンク等を除き、ほこりその他衛生上有害なものが入らない構造の通気のための装置を有効に設けること。ただし、有効容量が2㎥未満の給水タンク等については、この限りでない。
通気管の管端開口部には、防虫網を設けること。
(i) 給水タンク等の上にポンプ、ボイラー、空気調和機等の機器を設ける場合においては、飲料水を汚染することのないように衛生上必要な措置を講ずること。


【飲料用水槽の構造】 


② 受水槽の有効容量

断水などを考慮して、望ましいとされる受水槽の有効容量は次の通り。

(a) 受水槽 …… 1日予想給水量の2分の1
(b) 高置水槽 … 1日予想給水量の10分の1

 マンションでの1日の1人あたりの水の使用量は200から350ℓとされている。


③ 受水槽の水位制御方式

 受水槽の水位は、水道から受水槽への給水系統に主弁と副弁で構成される定水位弁を設けて制御する。主弁は受水槽の外部に、副弁は受水槽の内部に設置されており、これらは連動して開閉する。水位が下がると副弁が開き、これに連動して主弁が給水を開始する。水位が上がってくると副弁が閉じ、これに連動して主弁が給水を停止する。

④ 断水せずに清掃等をするための措置

 マンションの給水タンクは、清掃・保守・点検時にも断水が生じないようにするには、中間仕切り方式にすることが望ましい。給水タンクを中間で仕切ることで、清掃・保守・点検時にもその半分を使用することができ、断水を防ぐことができる。


(3) 給水ポンプ

① 材質

 給水ポンプ本体に使用される主な材質としては、鋳鉄製とステンレス鋼製のものがある。従来は鋳鉄製のものが主流であったが、最近ではステンレス鋼製のものが普及している。


② 給水ポンプの耐震対策

 給水ポンプから発生する振動が建物に伝わるのを防ぐために防振架台が用いられることがあるが、給水ポンプを防振架台上に設置する場合、耐震ストッパを設けなければならない。地震時にポンプが防振架台から脱落しないようにするためである。


(4) 給水管

 給水管とは、各住戸に水を供給するために、水道事業者が設置した水道本管(配水管)から分岐して設けられた配管である。


① 給水管の材料

 給水管の材料にはいくつかの種類があるが、それぞれの特徴を考慮して選択する必要がある。

 たとえば塩ビ管などの合成樹脂管は、強靭性、耐衝撃性、耐火性で鋼管より劣るが、軽量で耐食性に優れている。また、合成樹脂管を採用する場合には、温度変化に伴う伸縮に配慮する必要もある。


(a) 亜鉛めっき鋼管

 亜鉛めっき鋼管は、給水管として多用されてきたが、現在では給水用にはほとんど用いられていない。給水管に使用されている鋼管が、経年劣化で腐食すると、赤水が発生しやすくなるからである。赤水とは、鋼管の内部が酸化して赤錆が発生し、この赤錆が給水とともに流出するものである。


(b) 硬質塩化ビニルライニング鋼管

 硬質塩化ビニルライニング鋼管は、錆の発生を防止するために、鋼管の内部に硬質塩化ビニル管が挿入されたもので、塩化ビニルの耐食性と鋼管の剛性との長所をあわせ持っており、給水用として現在最も用いられている。ただし、ライニング部分が熱に弱いという弱点がある。


(c) ステンレス鋼管

 ステンレス鋼管は、硬質塩化ビニルライニング鋼管よりも耐久性が高いため、マンションでも用いられている。耐食性に優れている。 


(d) 耐熱性硬質塩化ビニル管

 耐熱性硬質塩化ビニル管は、硬質塩化ビニル管を耐熱用に改良したもので、温度が90度まで使用することができ、耐食性にも優れ、接着接合で施工が容易であるが、直射日光(紫外線)、衝撃、凍結に弱いため、露出配管には向いていない。


(e) 水道用ポリブテン管・水道用架橋ポリエチレン管

 水道用ポリブテン管、水道用架橋ポリエチレン管は、いずれも樹脂管であるが、耐熱性に優れており、比較的高温にも耐えられるため、給湯用配管に用いられることが多い。


② 給水管の設置および構造の基準

 給水管の設置および構造は、次の基準によらなければならない。

(a) 構造耐力上主要な部分を貫通して配管する場合においては、建築物の構造耐力上支障を生じないようにすること。
(b) ウォーターハンマーが生ずるおそれがある場合においては、エアチャンバーを設ける等有効なウォーターハンマー防止のための措置を講ずること。
(c) 給水立て主管からの各階への分岐管等主要な分岐管には、分岐点に近接した部分で、かつ、操作を容易に行うことができる部分に止水弁を設けること。


③ 赤水発生防止対策

 給水管の経年劣化のほかに、赤水の発生原因としては、給水設備の管理不十分などがある。

 赤水が発生した場合は、水源や貯水槽の水質検査などを実施し、汚染原因を正しく把握した上で適切な対策を講じなければならない。赤水発生の原因が、給水設備の管理不十分である場合には給水設備の清掃などを行う必要があり、給水管の経年劣化の場合には給水管の劣化防止が必要となる。

 給水管の劣化防止策としては、新規配管工事、ライニング更生工事などがある。

 新規配管工事は、既設の配管はそのまま残し、別に新規配管を施工する工事をいう。新規配管に接続するまでに比較的短時間の断水で済むが、新規配管を設置する空間が必要となり、これが確保できない場合は露出配管となる。

 ライニング更生工事とは、建物内の給水管を更生する工事であり、給水管を設置したまま行う。給水管の種類に応じて様々な工法があるが、その1つにAS工法がある。AS工法とは、研磨剤を混入した高圧気流を吹き付けることで管内面の錆や付着物を除去(クリーニング)したあとに、防錆を兼ねてエポキシ樹脂塗料を管内面に塗布(ライニング)する手法である。


(5) 配管のトラブル防止等

① ウォーターハンマーの防止

(a) ウォーターハンマーとは

 ウォーターハンマーとは、水撃作用ともいい、管内水流を急に締め切ったときに、水流の慣性で管内に衝撃・振動水圧が発生する現象をいう。このとき発生する衝撃音がハンマーでたたいたような音であるため、ウォーターハンマーという。

 マンションなどの高層建築物は、配管内の圧力が高くなりやすいため、とくにウォーターハンマー現象が起こりやすい。ウォーターハンマー現象は騒音や振動を発生させるため隣人とのトラブルになりやすい。また、配管を破裂させたり、配管に接続されている器具や機器に損傷を与えたりもする。したがって、ウォーターハンマー現象が生じないよう措置を講じる必要がある。


(b) ウォーターハンマーの防止策

 ウォーターハンマーが生じる原因として、配管内の圧力が高いこと、配管内の流速が早いことなどがあげられる。そこで、対策としては、配管内の圧力を適正なものにすること、配管内の流速を標準的なものにすることなどがある。配管内圧力の適正化について、とくに高層建築物の場合は、ゾーニングを行ってゾーンごとに中間水槽や減圧弁を設けることで配管内の圧力を適正に保つことが必要となる。また、配管内の標準的な流速について、一般に、流速が1.5~2.0m/秒であればウォーターハンマーは生じないとされる。

 また、ウォーターハンマーを防止するためには、エアチャンバー(水撃防止器)を設けることも有効である。エアチャンバーとは、ウォーターハンマーの発生源となる弁や水栓付近の給水配管に取り付けることによって、ウォーターハンマーの圧力波を吸収するものである。


② クロスコネクションの禁止

 クロスコネクションとは、飲料水の配管設備(これと給水系統を同じくする配管設備を含む)とその他(井戸水・消防用水・工業用水・雨水など)の配管設備とを、直接連結させることである。必要に応じて、弁(バルブ)で給水系統をきりかえて使用できる状態であっても、クロスコネクションとなる。

 クロスコネクションは、水道水の安全・衛生を確保するために禁止されている。クロスコネクションの状態だと、水道水以外の水が水道事業者の水道本管(配水管)に逆流してしまうおそれがあるからである。たとえ弁が付いていたとしても、弁の誤操作や故障などによる逆流が生じるおそれがあるので、クロスコネクションとなる。


③ 逆サイホン作用

 給水主管の断水時や高置水槽の清掃などで給水が停止しているときに、下層階で大量の水が使用されると、上層階の飲料水配管内が負圧になって、逆サイホン作用により、一度吐水した水や飲料水以外の水が飲料水配管へ逆流することがある。



給湯設備

 給湯設備とは、風呂場や洗面所、台所などに加熱した水を供給するための設備である。水を加熱するための熱源としては、ガスや電気がある。


(1) 給湯方式

 給湯方式には局所方式と中央給湯方式(セントラル方式)に分類することができる。


① 局所給湯方式

 局所給湯方式は、湯を必要とする箇所ごとに小型の給湯器を設ける方式である。


② 中央給湯方式

 中央給湯方式は、セントラル方式ともいい、建物の屋上や地下の機械室に熱源機器と貯湯タンク(給湯器)を設け、建物各所へ配管して給湯する方式である。中央給湯方式は給湯器を住戸単位で設けるか住棟単位で設けるかによってさらに分けることができる。


(a) 住戸セントラル方式

 給湯器を住戸単位で設ける方法を住戸セントラル方式という。マンションでは一般的にこの方式が採用されている。


(b) 住棟セントラル方式

 給湯器を住棟単位で設ける方法を住棟セントラル方式という。共用の機械室などに大型のボイラーや貯湯槽、ポンプなどを設けて、各住戸の湯を必要とする箇所に配管で給湯する方式である。


(2) 加熱方法

 加熱方法は、貯湯式と瞬間式に分けることができる。


① 貯湯式

 貯湯式は、電気温水器によって水を加熱してから貯湯槽にためておき、この湯を配管によって必要箇所に給湯する方法である。貯湯式給湯器には、料金の安い深夜電力を利用し、夜間に一定量の水を加熱して貯湯する方式のものがある(深夜電力利用温水器)。

 貯湯式給湯器は、給湯器に入る水の圧力を下げるため、一般に水道減圧弁を介して給水管に直結される。この弁には逆止め機構が内蔵されており、湯が逆流しない構造となっている。また、貯湯式給湯器には、出口側に逃がし弁(機体内の圧力を減圧する弁)を設置しなければならない。これは、給湯器内の圧力をコントロールするためのもので、湯沸し時などに給湯器内の圧力が一定以上になると弁が作動して蒸気や湯などを放出する。

 東日本大震災で貯湯式の給湯設備に被害が多かったことから、告示(平成12年建設省告示第1388号)が改正され、人が危害を受けるおそれのない場合等を除き、設置場所、満水時の質量、アスペクト比ごとに、建築物の部分等に固定するアンカーボルトの種類・本数などが規定された。

② 瞬間式

 瞬間式は、ガス瞬間式給湯器によって、必要時に水を加熱して湯を給湯する方法である。ガス瞬間式給湯器は、ガスで水を直接加熱する給湯器である。

 ガス瞬間式給湯器には、常に最良の空気・ガスの比率で燃焼させる空燃比制御方式や、種火のないダイレクト着火方式のものがある。

ガス給湯器の給排気方式には、密閉式で送風機を用いない自然給排気式(BF式)や、密閉式で送風機を用いる強制給排気式(FF式)がある。密閉式とは、給湯器は屋内に設置するが、給排気は屋外に向けて開口した専用給排気筒を使用して行うものである。これに対して、屋内の空気を給気して排気は屋外にするものを半密閉式、屋内で給排気とも行うものを開放式という。給湯器自体を屋外に設置する屋外設置式もある。

 自動湯温安定式のガス瞬間式給湯器には、60℃以上の固定された出湯温が得られる固定湯温式と、出湯温度の設定が可変の可変湯温式がある。

ガス瞬間式給湯器の能力表示に用いられる単位の1号は、毎分流量1ℓの水の温度を25℃上昇させる能力をいい、1.74kWに相当する。

 ガス瞬間式給湯器には元止め式と先止め式とがあり、住戸セントラル方式に用いられるのは先止め式である。元止め式とは、給湯器本体にある栓を操作することにより給湯する方式であり、先止め式とは、給湯器本体から給湯配管をし、その末端の蛇口などの水栓を操作することにより給湯する方式である。


(3) 省エネタイプの給湯機

① 潜熱回収型ガス給湯器(エコジョーズ)

 省エネタイプのガス給湯器として、潜熱回収型ガス給湯器(エコジョーズ)がある。

 潜熱回収型ガス給湯器とは、従来のガス給湯器の燃焼ガス排気部に給水管を導き、燃焼時に熱交換して昇温してから、これまでと同様に燃焼部へ水を送り再加熱するものである。


② 自然冷媒ヒートポンプ給湯器(エコキュート)

 省エネタイプの電気給湯器として、自然冷媒ヒートポンプ給湯器(エコキュート)がある。

 ヒートポンプ給湯器とは、エアコンの暖房と同じ原理で大気熱を利用して水を加熱する給湯器であるが、自然冷媒ヒートポンプ給湯器とは、冷媒にフロンなどを使用せずに、二酸化炭素を利用したヒートポンプ給湯器である。

 自然冷媒ヒートポンプ給湯器の加熱効率(COP)(加熱量[kWh]/ヒートポンプ入力電力量[kWh])は、年間平均でほぼ3である。つまり、電力のみで水を加熱する場合に比べて電力消費量が約3分の1で済むということである。

(4) 配管方式・水栓

① さや管ヘッダー方式

 さや管ヘッダー方式とは、マンションなど共同住宅で採用される給湯・給水配管方式のひとつである。各種の給湯・給水器具への配管を途中で分岐させることなく、給湯器付近に設けたヘッダーとよばれる部分で給湯・給水管を分岐させ器具まで直接配管する。また、さや管とよばれるパイプの中に樹脂管を通管する構造となっている。樹脂管のため腐食や赤水の発生がない。補修等で配管の更新が必要になったときも、ヘッダー部分でその配管部分のみ給湯・給水を止めるだけでよく、樹脂管の取り換えも容易に行うことができる。また、配管口径が適切であれば、水栓同時使用時の流量変動は小さく、湯待ち時間も短縮できる。


② サーモスタット式混合栓

 サーモスタット式混合栓とは、湯と水を混合して1つの蛇口から流し出す構造の水栓のうち、サーモスタットにより温度調節ができるものである。浴室や洗面台などで使用される。サーモスタット式混合栓を用いると、混合栓での設定温度と混合栓に供給される湯温の差にかかわらず、安定した出湯温度が得られる。


排水設備

 建物内の排水設備は、洗面所や台所からの排水を流す雑排水管と、便器からの排水を流す汚水管、それらを一時的に貯留する雑排水槽や汚水槽および排水ポンプ、および通気管で構成されている。


(1) 排水の種類

 排水は、汚水、雑排水、雨水に大別される。


① 汚水

 汚水とは、し尿を含む排水のことで、おもにトイレからの排水である。


② 雑排水

 雑排水とは、排水のうち汚水および雨水を除くものであり、台所・浴室・洗面所などからの排水はすべて雑排水である。


③ 雨水

 雨水とは、降雨や雪解けなど自然現象に起因する水のことである。


(2) 排水の方式と分類

 排水の方式にはいくつかの分類方法がある。


① 排水系統による分類

 排水の方式は、異なる種類の排水を同一の系統で排水するか別々の系統により排水するかにより、合流式と分流式に分類することができる。ただし、それが、敷地内の排水方式か公共下水道の排水方式かで内容がやや異なる。


(a) 敷地内の排水方式

 敷地内では、雨水はかならず汚水や雑排水とは別の排水系統で排水する。

合流式汚水と雑排水を同一の系統で排水する。
分流式汚水と雑排水とを別々の系統で排水する。


(b) 公共下水道の排水方式

合流式汚水、雑排水および雨水を同一の系統で排水する。
分流式汚水と雑排水を同一の系統で、雨水をこれとは別の系統で排水する。


② 敷地内から公共下水道への排水方式による分類

 排水の方式は、敷地内から公共下水道への排水の放流方法により、重力式排水方式と機械式排水方式に分類することができる。


(a) 重力式排水方式

 重力式排水方式は、建物の排水横主管が公共下水道より高所にある場合に採用される。液体は高いところから低いところへ流れるという性質を利用し、勾配をつけた排水横主管で下水を自然流下させて公共下水道に放流する方式である。


(b) 機械式排水方式

 機械式排水方式は、地下階など建物の排水設備などが公共下水道よりも低い位置にあって重力式排水方式を採用することが困難な場合に採用される。地下階に排水槽などを設けていったん下水を貯留し、これをポンプでくみ上げて公共下水道に放流する方式である。


(3) 排水管

 排水管には、排水横管と排水立て管がある。

 排水管の材料としては、硬質ポリ塩化ビニル管、耐火二層管、配管用炭素鋼管、ノンタールエポキシ塗装鋼管、硬質塩化ビニルライニング鋼管などがある。

(4) 排水トラップ

 排水トラップとは、衛生器具または排水系統中の装置として、その内部に封水部を有し、排水の流れに支障を与えることなく排水管中の空気が室内に侵入してくることを阻止することができるものをいう。直接排水をする場合に、排水管を通じて虫や臭気、ガスなどが器具や屋内に侵入することを防ぐために設置される。


① 排水トラップの構造

 排水トラップはその機能が有効となるよう、一定の構造が要求されている(昭50建設省告示1597号第2)。

 排水トラップは、排水管内の臭気、衛生害虫等の移動を有効に防止することができる構造でなければならない。排水トラップ内のたまり水のことを封水という。この封水によって、排水管内の虫や臭気、ガスなどの侵入を防いでいる。

 排水トラップのウェア(あふれ面下端)とディップ(浸水部上端)との間の垂直距離を封水深という。


 排水トラップの封水深は、5㎝以上10㎝以下(阻集器を兼ねる排水トラップについては5㎝以上)としなければならない。なお、阻集器とは、汚水中にガソリンや土砂など配管を損傷するおそれのある物質を含むときに、これらの物質を除去する装置のことである。

排水トラップは、阻集器を兼ねるものを除き、汚水に含まれる汚物等が付着し、または沈澱しない構造としなければならない。また、容易に掃除ができる構造としなければならない。


Point 排水トラップの封水深は、浅い破封しやすく深い自浄作用がなくなる


② 二重トラップの禁止

 二重トラップとは、1つの排水系統に排水トラップを直列に2個以上設けることをいう。排水トラップは、二重トラップとならないように設けなければならない(昭50建設省告示1597号第2)。二重トラップにすると、トラップ間が閉塞状態となり、汚水を円滑に流下することができなくなってしまうからである。とくに、トラップ間に空気が閉じ込められて汚水の流下を妨げる現象を、エアーロック現象という。

③ 排水トラップの種類

(a) 管トラップ

 管トラップとは排水管の途中を曲げることにより水をためるようにしたものである。管トラップは、サイフォン式ともよばれ、満水状態で排水を流下させると、サイフォン作用により排水と一緒に汚物も押し流すため、封水部分に汚物が付着するのを防ぐことができる(トラップの自然浄化作用)。ただし、封水が破られやすいという欠点もある。

 管トラップは、その形状により、さらに分類することが可能である。おもなものに、Sトラップ、Pトラップ、Uトラップがある。一般に、洗面所には、SトラップまたはPトラップが使用される。



(b) ドラムトラップ

 ドラムトラップは、封水部分が筒状(ドラム状)をしている。封水部分に多量の水をためるために封水は破られにくい。しかし、自己洗浄作用がないため沈殿物がたまりやすい。そのため、上部にふたが付いており、これを取り外してトラップ内を容易に清掃・点検できる構造になっている。


Point ドラムトラップは、封水の安定度が高く台所の流し等に使用される。


(c) ベルトラップ

 ベルトラップは、わんトラップともよばれ、封水部分がベル状(椀をふせた形状)をしているので、この名がある。ワントラップは封水深が規定より浅いものも多く、一般に封水の量も少ないので、封水が破られやすい。封水部分に汚物がたまりやすいので、ベル状の部分を取り外して、定期的に清掃を行う必要がある。このベル状部分を取り外すと、トラップとしての機能は失われる。台所の流しや、浴室の洗い場・洗濯機置き場などの床の排水口に用いられる。




④ 破封の原因

 破封とは、排水トラッブ内の封水が破れる(封水が失われる)現象をいう。封水が破れると、封水部分に空気が通り、排水トラップは、その機能を果たすことができない。排水管の管径を適正なものにし、通気管を設けたり、定期的に管内の清掃をしたりすることでこれを防ぐことができる。

 破封は、排水立て管の通気性不足に起因する吸い出し・はね出し現象や、自己サイフォン・毛管現象(毛細管現象)・蒸発などにより発生する。


(a) 吸出し現象

 排水立て管の上部から満水状態の排水があると、排水立て管内の圧力が負圧(大気圧よりも低い圧力)となって、封水が排水立て管側に引っ張られて吸引されることで封水が破られる。これを誘導サイフォン現象ともいう。


(b) はね出し現象

 排水立て管の下部が瞬間的に満水状態のときに、排水立て管の上部から満水状態の排水があると、その中間階の排水立て管内の圧力が正圧(大気圧よりも高い圧力)となって、空気とともに中間階の封水が室内側に飛び出すことで封水が破られる。

 排水管内に正圧または負圧が生じたときの排水トラップの封水保持能力を封水強度という。封水強度が弱いと、封水が破られやすい。


(c) 自己サイフォン作用

 洗面器のように水をためて使用する器具から大量の排水が行われると、配管内が満水となって、器具・トラップ・排水管の配管全体がサイフォン管となり、封水も一緒に排出されてしまうことで封水が破られる。


(d) 毛細管現象

 排水トラップのあふれ部に毛髪や糸くず、布くずなどが垂れ下がったままになっていると、毛細管現象により、これらが徐々に封水を吸出してしまうことで封水が破られる。


(e) 蒸発

 長期間水を流さない場合や、高温の排水を流した場合は、封水が蒸発してなくなってしまうことで封水が破られる。

(5) 通気管(ベントパイプ)

 通気管はベントパイプともよばれ、これを排水トラップや排水管に設けることで排水管内に自由に外気が出入りするようにして、排水によって管内に圧力差が生じないようにするためのものである。これにより、封水が破られるのを防ぐことができる。この他に、通気管があることで、排水管内の流水が円滑となり、また、排水系統内の換気を行うことができる。

 通気管にはいくつかの種類があるが、主なものとして伸頂通気方式がある。また、伸頂通気方式の一種として特殊継手排水システムがある。


① 伸頂通気方式

 伸頂通気方式は、排水立て管の先端を延長した通気管(伸長通気管)を、屋上等で大気に向けて開口する方式である。伸頂通気管の管径は、排水立て管の管径より小さくしてはならない。5階建てくらいまでの中層建築物で採用される。


② 特殊継手排水システム

 特殊継手排水システムは、伸長通気方式の一種であり、一般に伸頂通気管のみを有する。排水横枝管と排水立て管の接合部に排水用特殊継手を用いる。この継手は、排水横枝管から排水立て管へ合流した排水が、立て管の外側を回転しながら流下するように作られているため、立て管内の排水の流下速度は減少する。また立て管の中心部には通気が確保されるので、管内の圧力変動も減少されることになる。