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  • 4.特定賃貸借契約の適正化を図るための措置
  • 特定賃貸借契約の適正化を図るための措置
  • Sec.1

1特定賃貸借契約の適正化を図るための措置

堀川 寿和2021/12/21 11:36

用語の定義

 賃貸住宅管理業法における各用語の定義は次のとおりである。


(1) 特定賃貸借契約

 「特定賃貸借契約」とは、賃貸住宅の賃貸借契約(賃借人が人的関係、資本関係その他の関係において賃貸人と密接な関係を有する者として国土交通省令で定める者であるものを除く。)であって、賃借人が当該賃貸住宅を第三者に転貸する事業を営むことを目的として締結されるものをいう(法2条4項)。


(2) 特定転貸事業者

 「特定転貸事業者」とは、特定賃貸借契約に基づき賃借した賃貸住宅を第三者に転貸する事業を営む者をいう(法2条5項)。


特定賃貸借契約の勧誘時の規制

 特定賃貸借契約の勧誘時の規制の対象者は、「特定転貸事業者等」である。

 「特定転貸事業者等」とは、次の者をいう(法28条)。

① 特定転貸事業者
② 勧誘者(特定転貸事業者が特定賃貸借契約の締結についての勧誘を行わせる者をいう。)

 特定転貸事業者等には、勧誘時に、次のような規制が課される。


(1) 誇大広告等の禁止

 特定転貸事業者等は、特定賃貸借契約に基づき賃借した賃貸住宅を第三者に転貸する事業に係る特定賃貸借契約の条件について広告をするときは、特定賃貸借契約に基づき特定転貸事業者が支払うべき家賃、賃貸住宅の維持保全の実施方法、特定賃貸借契約の解除に関する事項その他の国土交通省令で定める事項について、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示をしてはならない(法28条)。

 誇大広告等をしてはならない事項は、次のとおりである(規則43条)。

① 特定賃貸借契約の相手方に支払う家賃の額、支払期日及び支払方法等の賃貸の条件並びにその変更に関する事項
② 賃貸住宅の維持保全の実施方法
③ 賃貸住宅の維持保全に要する費用の分担に関する事項
④ 特定賃貸借契約の解除に関する事項

 これに違反して、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示をしたときは、その違反行為をした者は、30万円以下の罰金に処される(法44条10号)。

(2) 不当な勧誘等の禁止

 特定転貸事業者等は、次の行為をしてはならない(法29条、規則44条)。

① 特定賃貸借契約の締結の勧誘をするに際し、又はその解除を妨げるため、特定賃貸借契約の相手方又は相手方となろうとする者に対し、当該特定賃貸借契約に関する事項であって特定賃貸借契約の相手方又は相手方となろうとする者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものにつき、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為
② ①のほか、特定賃貸借契約に関する行為であって、特定賃貸借契約の相手方又は相手方となろうとする者の保護に欠けるものとして国土交通省令で定めるもの
(a) 特定賃貸借契約を締結若しくは更新させ、又は特定賃貸借契約の申込みの撤回若しくは解除を妨げるため、特定賃貸借契約の相手方又は相手方となろうとする者(以下「相手方等」という。)を威迫する行為
(b) 特定賃貸借契約の締結又は更新について相手方等に迷惑を覚えさせるような時間に電話又は訪問により勧誘する行為
(c) 特定賃貸借契約の締結又は更新について深夜又は長時間の勧誘その他の私生活又は業務の平穏を害するような方法により相手方等を困惑させる行為
(d) 特定賃貸借契約の締結又は更新をしない旨の意思(当該契約の締結又は更新の勧誘を受けることを希望しない旨の意思を含む。)を表示した相手方等に対して執ように勧誘する行為

 この①に違反して、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げたときは、その違反行為をした者は、6月以下の懲役若しくは50万円以下の罰金に処され、又はこれを併科される(法42条2号)。


特定転貸事業者の業務上の規制

 特定転貸事業者に対しては、次のような業務上の規制が課される。


(1) 特定賃貸借契約の締結前の重要事項の説明(特定賃貸借契約重要事項説明)

① 書面の交付及び重要事項の説明

(a) 原則

 特定転貸事業者は、特定賃貸借契約を締結しようとするときは、特定賃貸借契約の相手方となろうとする者に対し、当該特定賃貸借契約を締結するまでに、特定賃貸借契約の内容及びその履行に関する事項であって国土交通省令で定めるものについて、書面を交付して説明しなければならない(法30条1項)。

 特定賃貸借契約の締結前の説明事項は、次のとおりである(規則46条)。

イ) 特定賃貸借契約を締結する特定転貸事業者の商号、名称又は氏名及び住所
ロ) 特定賃貸借契約の対象となる賃貸住宅
ハ) 特定賃貸借契約の相手方に支払う家賃の額、支払期日及び支払方法等の賃貸の条件並びにその変更に関する事項
ニ) 特定転貸事業者が行う賃貸住宅の維持保全の実施方法
ホ) 特定転貸事業者が行う賃貸住宅の維持保全に要する費用の分担に関する事項
ヘ) 特定賃貸借契約の相手方に対する維持保全の実施状況の報告に関する事項
ト) 損害賠償額の予定又は違約金に関する事項
チ) 責任及び免責に関する事項
リ) 契約期間に関する事項
ヌ) 転借人の資格その他の転貸の条件に関する事項
ル) 転借人に対する賃貸住宅の維持保全の実施方法の周知に関する事項
ヲ) 特定賃貸借契約の更新及び解除に関する事項
ワ) 特定賃貸借契約が終了した場合における特定転貸事業者の権利義務の承継に関する事項
カ) 借地借家法その他特定賃貸借契約に係る法令に関する事項の概要

 これに違反して、書面を交付せず、若しくは所定の事項を記載しない書面若しくは虚偽の記載のある書面を交付したときは、その違反行為をした者は、50万円以下の罰金に処される(法43条)。


Point この重要事項の説明は、一定の実務経験を有する者や賃貸不動産経営管理士など、専門的な知識及び経験を有する者によって行われることが望ましい(考え方30条関係1)。


(b) 例外

 特定賃貸借契約の相手方となろうとする者が、特定転貸事業者である者その他の特定賃貸借契約に係る専門的知識及び経験を有すると認められる者として国土交通省令で定めるものである場合は、賃貸住宅管理業者は、書面の交付および説明を行わなくてもよい(法30条1項かっこ書)。

 特定賃貸借契約に係る専門的知識及び経験を有すると認められる者は、次の者である(規則45条)。

イ) 特定転貸事業者
ロ) 賃貸住宅管理業者
ハ) 宅地建物取引業者
ニ) 特定目的会社
ホ) 組合
ヘ) 賃貸住宅に係る信託の受託者(委託者等がイ)~ニ)のいずれかに該当する場合に限る。)
ト) 独立行政法人都市再生機構
チ) 地方住宅供給公社


② 電磁的方法による提供

 特定転貸事業者は、書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、当該特定賃貸借契約の相手方となろうとする者の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができ、この場合は、当該特定転貸事業者は、当該書面を交付したものとみなされる(法30条2項)。

 電磁的方法による提供の場合も、所定の事項を欠いた提供又は虚偽の事項の提供をしたときは、その違反行為をした者は、50万円以下の罰金に処される(法43条)。


(2) 特定賃貸借契約の締結時の書面の交付

① 書面の交付

 特定転貸事業者は、特定賃貸借契約を締結したときは、当該特定賃貸借契約の相手方に対し、遅滞なく、次の事項を記載した書面を交付しなければならない(法31条1項、規則48条)。

(a) 特定賃貸借契約の対象となる賃貸住宅
(b) 特定賃貸借契約の相手方に支払う家賃その他賃貸の条件に関する事項
(c) 特定転貸事業者が行う賃貸住宅の維持保全の実施方法
(d) 契約期間に関する事項
(e) 転借人の資格その他の転貸の条件に関する事項
(f) 契約の更新又は解除に関する定めがあるときは、その内容
(g) 特定賃貸借契約を締結する特定転貸事業者の商号、名称又は氏名及び住所
(h) 特定転貸事業者が行う賃貸住宅の維持保全に要する費用の分担に関する事項
(i) 特定賃貸借契約の相手方に対する維持保全の実施状況の報告に関する事項
(j) 損害賠償額の予定又は違約金に関する定めがあるときは、その内容
(k) 責任及び免責に関する定めがあるときは、その内容
(l) 転借人に対する賃貸住宅の維持保全の実施方法の周知に関する事項
(m) 特定賃貸借契約が終了した場合における特定転貸事業者の権利義務の承継に関する事項

 これに違反して、書面を交付せず、若しくは所定の事項を記載しない書面若しくは虚偽の記載のある書面を交付したときは、その違反行為をした者は、50万円以下の罰金に処される(法43条)。 


② 電磁的方法による提供

 特定賃貸借契約の締結時の書面についても、上記(1)②と同様に、電磁的方法による提供が認められている(法31条2項)。

 電磁的方法による提供の場合も、所定の事項を欠いた提供又は虚偽の事項の提供をしたときは、その違反行為をした者は、50万円以下の罰金に処される(法43条)。


(3) 書類の閲覧

 特定転貸事業者は、国土交通省令で定めるところにより、当該特定転貸事業者の業務及び財産の状況を記載した書類を、特定賃貸借契約に関する業務を行う営業所又は事務所に備え置き、特定賃貸借契約の相手方又は相手方となろうとする者の求めに応じ、閲覧させなければならない(法32条)。

 これに違反して書類を備え置かず、若しくは特定賃貸借契約の相手方若しくは相手方となろうとする者の求めに応じて閲覧させず、又は虚偽の記載のある書類を備え置き、若しくは特定賃貸借契約の相手方若しくは相手方となろうとする者に閲覧させたときは、その違反行為をした者は、30万円以下の罰金に処される(法44条11号)。