- 2.賃貸住宅管理業法
- 3.賃貸住宅管理業の登録制度
- 賃貸住宅管理業の登録制度
- Sec.1
1賃貸住宅管理業の登録制度
賃貸住宅管理業法の登録制度に関する規定は、主として賃貸住宅の賃貸人と賃貸住宅管理業者の関係についてのルールを定めている。
■用語の定義
(1) 賃貸住宅
「賃貸住宅」とは、賃貸の用に供する住宅(人の居住の用に供する家屋又は家屋の部分をいう。)をいう(法2条1項本文)。
ただし、人の生活の本拠として使用する目的以外の目的に供されていると認められるものとして国土交通省令で定めるものを除く(法2条1項ただし書)。
(2) 賃貸住宅管理業・管理業務
① 賃貸住宅管理業
「賃貸住宅管理業」とは、賃貸住宅の賃貸人から委託を受けて、「管理業務」を行う事業をいう(法2条2項)。
Point 自ら所有する住宅を賃貸する業務のみを行う場合は、賃貸住宅管理業に該当しない。したがって、この場合は賃貸住宅管理業の登録を受けることはできない。
② 管理業務
「管理業務」とは、次の(a)又は(b)にあたる業務をいう(法2条2項各号)。
(a) 当該委託に係る賃貸住宅の維持保全(住宅の居室及びその他の部分について、点検、清掃その他の維持を行い、及び必要な修繕を行うことをいう。)を行う業務(賃貸住宅の賃貸人のために当該維持保全に係る契約の締結の媒介、取次ぎ又は代理を行う業務を含む。)
(b) 当該賃貸住宅に係る家賃、敷金、共益費その他の金銭の管理を行う業務((a)に掲げる業務と併せて行うものに限る。) |
なお、「賃貸住宅の維持保全」とは、居室及び居室の使用と密接な関係にある住宅のその他の部分である、玄関・通路・階段等の共用部分、居室内外の電気設備・水道設備、エレベーター等の設備等について、点検・清掃等の維持を行い、これら点検等の結果を踏まえた必要な修繕を一貫して行うことをいう。例えば、定期清掃業者、警備業者、リフォーム工事業者等が、維持又は修繕の「いずれか一方のみ」を行う場合や、エレベーターの保守点検・修繕を行う事業者等が、賃貸住宅の「部分のみ」について維持から修繕までを一貫して行う場合、入居者からの苦情対応のみを行い維持及び修繕(維持・修繕業者への発注等を含む。)を行っていない場合は、賃貸住宅の維持保全には該当しない(考え方2条2項関係2)。
また、金銭の管理を行う業務については、賃貸住宅の賃貸人から委託を受けて、当該委託に係る賃貸住宅の維持保全を行うことと併せて行うものに限り、賃貸住宅管理業に該当することとなり、金銭の管理のみを行う業務については、賃貸住宅管理業には該当しない(考え方2条2項関係4)。
(3) 賃貸住宅管理業者
「賃貸住宅管理業者」とは、賃貸住宅管理業の登録を受けて賃貸住宅管理業を営む者をいう(法2条3項)。
Point 特定転貸事業者(サブリース業者)については、一般に、特定賃貸借契約又は当該特定賃貸借契約に付随する契約により、本来賃貸人が行うべき賃貸住宅の維持保全を、賃貸人からの依頼により賃貸人に代わって行っており、この場合の特定転貸事業者は賃貸住宅管理業を営んでいるものと解されることから、原則として、当該特定転貸事業者は賃貸住宅管理業の登録を受けなければならない(考え方2条3項関係(2))。
■賃貸住宅管理業の登録
(1) 登録
① 原則
賃貸住宅管理業を営もうとする者は、国土交通大臣の登録〔=賃貸住宅管理業の登録〕を受けなければならない(法3条1項本文)。
これに違反して賃貸住宅管理業を営んだときは、その違反行為をした者は、1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処され、又はこれを併科される(法41条1号)。また、不正の手段により賃貸住宅管理業の登録を受けたときも同様に懲役や罰金刑が課される(法41条2号)。
② 例外
賃貸住宅管理業に係る賃貸住宅の戸数が200戸未満であるときは、賃貸住宅管理業の登録を受ける必要はない(法3条1項ただし書、規則3条)。
(2) 登録の更新
① 登録の更新
賃貸住宅管理業の登録の有効期間は5年である。5年ごとに登録の更新を受けなければ、その期間の経過によって、登録はその効力を失う(法3条2項)。登録の更新を受けようとする者は、その者が現に受けている登録の有効期間の満了の日の90日前から30日前までの間に登録申請書を国土交通大臣に提出しなければならない(規則4条)。
② 登録の有効期間の特則
登録の更新の申請をしたにもかかわらず、登録の有効期間の満了の日までにその申請に対する処分がされないときは、従前の登録は、登録の有効期間の満了後もその処分がされるまでの間は、なおその効力を有する(法3条3項)。この場合、登録の更新がされたときは、その登録の有効期間は、従前の登録の有効期間の満了の日の翌日から起算する(法3条4項)。
(3) 登録の申請
① 登録申請書の提出
賃貸住宅管理業の登録(登録の更新を含む。以下同じ。)を受けようとする者は、所定の事項を記載した登録申請書を国土交通大臣に提出しなければならない(法4条1項)。
Point 賃貸住宅管理業の登録の申請は、賃貸住宅管理業登録等電子申請システムを利用して行うことが原則とされている(考え方4条1項関係1)。
② 登録申請書の記載事項
登録申請書の記載事項は、次のとおりである(法4条1項各号)。
(a) 商号、名称又は氏名及び住所
(b) 法人である場合においては、その役員の氏名 (c) 未成年者である場合においては、その法定代理人の氏名及び住所(法定代理人が法人である場合にあっては、その商号又は名称及び住所並びにその役員の氏名) (d) 営業所又は事務所の名称及び所在地 |
③ 添付書類
登録申請書には、登録を受けようとする者が「登録拒否事由」のいずれにも該当しないことを誓約する書面その他の国土交通省令で定める書類を添付しなければならない(法4条2項)。
添付書類は、次のとおりである(規則7条1項)。
(a) 登録(登録の更新を含む。)を受けようとする者〔=登録申請者〕が法人である場合
(b) 登録(登録の更新を含む。)を受けようとする者〔=登録申請者〕が個人である場合
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(4) 登録の実施
① 賃貸住宅管理業者登録簿への登録
国土交通大臣は、登録の申請があったときは、「登録拒否事由」に該当する場合を除き、次の事項を賃貸住宅管理業者登録簿に登録しなければならない(法5条1項)。
(a) 商号、名称又は氏名及び住所
(b) 法人である場合においては、その役員の氏名 (c) 未成年者である場合においては、その法定代理人の氏名及び住所(法定代理人が法人である場合にあっては、その商号又は名称及び住所並びにその役員の氏名) (d) 営業所又は事務所の名称及び所在地 (e) 登録年月日及び登録番号 |
(a)~(d)は登録申請書の記載事項である。
② 登録の通知
国土交通大臣は、賃貸住宅管理業者登録簿に登録をしたときは、遅滞なく、その旨を申請者に通知しなければならない(法5条2項)。
(5) 登録の拒否
① 登録の拒否
国土交通大臣は、登録を受けようとする者が「登録拒否事由」のいずれかに該当するとき、又は登録の申請書若しくはその添付書類のうちに重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けているときは、その登録を拒否しなければならない(法6条1項)。
② 登録拒否事由
登録拒否事由は次のとおりである(法6条1項各号)。
(a) 心身の故障により賃貸住宅管理業を的確に遂行することができない者として国土交通省令で定めるもの
(b) 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者 (c) 「登録取消し処分」〔法23条1項・2項〕により登録を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者(当該登録を取り消された者が法人である場合にあっては、当該取消しの日前30日以内に当該法人の役員であった者で当該取消しの日から5年を経過しないものを含む。) (d) 禁錮以上の刑に処せられ、又は賃貸住宅管理業法の規定により罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない者 (e) 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律に規定する暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者((i)において「暴力団員等」という。) (f) 賃貸住宅管理業に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者として国土交通省令で定めるもの (g) 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人が上記(a)~(f)のいずれかに該当するもの (h) 法人であって、その役員のうちに上記(a)~(f)のいずれかに該当する者があるもの (i) 暴力団員等がその事業活動を支配する者 (j) 賃貸住宅管理業を遂行するために必要と認められる国土交通省令で定める基準に適合する財産的基礎を有しない者 (k) 営業所又は事務所ごとに業務管理者を確実に選任すると認められない者 |
Point1 破産手続開始の決定を受けた者は、復権を得れば、直ちに賃貸住宅管理業の登録を受けることができる。復権を得た日から5年を経過している必要はない。
Point2 賃貸住宅管理業法以外の法律の規定により罰金の刑に処せられた場合は、罰金を納めた日から5年を経過していなくても、賃貸住宅管理業の登録を受けることができる。
③ 登録の拒否の通知
国土交通大臣は、登録を拒否したときは、遅滞なく、その理由を示して、その旨を申請者に通知しなければならない(法6条2項)。
(6) 変更の届出
① 変更の届出
賃貸住宅管理業者は、賃貸住宅管理業者登録簿に登録されている事項のうち(a)~(d)〔=登録の申請書の記載事項〕に変更があったときは、その日から30日以内に、その旨を国土交通大臣に届け出なければならない(法7条1項)。
なお、変更の届出には、変更された事項の登録を受けようとする者が「登録拒否事由」のいずれにも該当しないことを誓約する書面その他の国土交通省令で定める書類を添付しなければならない(法7条3項→4条2項)
変更の届出をせず、又は虚偽の届出をしたときは、その違反行為をした者は、30万円以下の罰金に処される(法44条1号)。
② 変更された事項の登録簿への登録
国土交通大臣は、変更の届出を受理したときは、当該届出に係る事項が「登録拒否事由」に該当する場合を除き、当該事項を賃貸住宅管理業者登録簿に登録しなければならない(法7条2項)。
(7) 賃貸住宅管理業者登録簿の閲覧
国土交通大臣は、賃貸住宅管理業者登録簿を一般の閲覧に供しなければならない(法8条)。
(8) 廃業等の届出
① 廃業等の届出
賃貸住宅管理業者が次の(a)~(e)のいずれかに該当することとなったときは、それぞれの届出義務者は、国土交通省令で定めるところにより、その日((a)の場合は、その事実を知った日)から30日以内に、その旨を国土交通大臣に届け出なければならない(法9条1項)。
届出事由 | 届出義務者 | 届出期間 | |
(a) | 賃貸住宅管理業者である個人が死亡したとき | その相続人 | 死亡の事実を知った日から30日以内 |
(b) | 賃貸住宅管理業者である法人が合併により消滅したとき | その法人を代表する役員であった者 | その日から30日以内 |
(c) | 賃貸住宅管理業者である法人が破産手続開始の決定により解散したとき | その破産管財人 | |
(d) | 賃貸住宅管理業者である法人が合併及び破産手続開始の決定以外の理由により解散したとき | その清算人 | |
(e) | 賃貸住宅管理業を廃止したとき | 賃貸住宅管理業者であった個人又は賃貸住宅管理業者であった法人を代表する役員 |
廃業等の届出をせず、又は虚偽の届出をしたときは、その違反行為をした者は、20万円以下の過料に処される(法46条)。
② 登録の失効時期
賃貸住宅管理業の登録は、賃貸住宅管理業者が「廃業等の届出が必要な場合」のいずれかに該当することとなったときに、その効力を失う(法9条2項)。
■業務上の規制
(1) 業務処理の原則
賃貸住宅管理業者は、信義を旨とし、誠実にその業務を行わなければならない(法10条)。
(2) 名義貸しの禁止
賃貸住宅管理業者は、自己の名義をもって、他人に賃貸住宅管理業を営ませてはならない(法11条)。
これに違反して他人に賃貸住宅管理業を営ませたときは、その違反行為をした者は、1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処され、又はこれを併科される(法41条3号)。
(3) 業務管理者の選任
① 業務管理者の選任義務
賃貸住宅管理業者は、その営業所又は事務所ごとに、1人以上の「業務管理者」を選任して、当該営業所又は事務所における業務に関し、管理受託契約(管理業務の委託を受けることを内容とする契約をいう。)の内容の明確性、管理業務として行う賃貸住宅の維持保全の実施方法の妥当性その他の賃貸住宅の入居者の居住の安定及び賃貸住宅の賃貸に係る事業の円滑な実施を確保するため必要な国土交通省令で定める事項についての管理及び監督に関する事務を行わせなければならない(法12条1項)。
これに違反して業務管理者を選任しなかったときは、その違反行為をした者は、30万円以下の罰金に処される(法44条2号)。
② 業務管理者の職務
業務管理者が管理及び監督すべき事項は、次のとおりである(規則13条)。
(a) 管理受託契約の締結前の書面の交付及び説明に関する事項
(b) 管理受託契約の締結時の書面の交付に関する事項 (c) 管理業務として行う賃貸住宅の維持保全の実施に関する事項及び賃貸住宅に係る家賃、敷金、共益費その他の金銭の管理に関する事項 (d) 帳簿の備付け等に関する事項 (e) 委託者への定期報告に関する事項 (f) 秘密の保持に関する事項 (g) 賃貸住宅の入居者からの苦情の処理に関する事項 (h) (a)~(g)のほか、賃貸住宅の入居者の居住の安定及び賃貸住宅の賃貸に係る事業の円滑な実施を確保するため必要な事項として国土交通大臣が定める事項 |
③ 業務管理者の資格
業務管理者は、「業務管理者の欠格事由」のいずれにも該当しない者で、賃貸住宅管理業者の営業所又は事務所における業務に関し管理及び監督に関する事務を行うのに必要な知識及び能力を有する者として賃貸住宅管理業に関する一定の実務の経験その他の国土交通省令で定める要件を備えるものでなければならない(法12条4項)。
(a) 業務管理者の要件
業務管理者の要件は、管理業務に関し2年以上の実務の経験を有する者又は国土交通大臣がその実務の経験を有する者と同等以上の能力を有すると認めた者で、次のいずれかに該当するものである(規則14条)。
イ) 国土交通大臣の登録を受けた「登録証明事業」による証明を受けている者
ロ) 宅地建物取引士で、国土交通大臣が指定する管理業務に関する実務についての講習を修了した者 |
(b) 業務管理者の欠格事由
業務管理者の欠格事由は、次のとおりである(法12条4項)。
イ) 心身の故障により賃貸住宅管理業を的確に遂行することができない者として国土交通省令で定めるもの
ロ) 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者 ハ) 「登録取消し処分」〔法23条1項・2項〕により登録を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者(当該登録を取り消された者が法人である場合にあっては、当該取消しの日前30日以内に当該法人の役員であった者で当該取消しの日から5年を経過しないものを含む。) ニ) 禁錮以上の刑に処せられ、又は賃貸住宅管理業法の規定により罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない者 ホ) 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律に規定する暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者 ヘ) 賃貸住宅管理業に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者として国土交通省令で定めるもの ト) 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人が上記 イ)~ヘ)のいずれかに該当するもの |
④ 業務管理者がいない営業所等における管理受託契約の締結の禁止
賃貸住宅管理業者は、その営業所若しくは事務所の業務管理者として選任した者の全てが「業務管理者の欠格事由」のいずれかに該当し、又は選任した者の全てが欠けるに至ったときは、新たに業務管理者を選任するまでの間は、その営業所又は事務所において管理受託契約を締結してはならない(法12条2項)。
これに違反して管理受託契約を締結したときは、その違反行為をした者は、30万円以下の罰金に処される(法44条3号)。
⑤ 業務管理者の兼任の禁止
業務管理者は、他の営業所又は事務所の業務管理者となることができない(法12条3項)。
Point 業務管理者の兼任の禁止に例外はないので、たとえ一時的であっても他の営業所又は事務所の業務管理者を兼任することはできない。
(4) 管理受託契約の締結前の重要事項の説明(管理受託契約重要事項説明)
① 書面の交付及び重要事項の説明
(a) 原則
賃貸住宅管理業者は、管理受託契約を締結しようとするときは、管理業務を委託しようとする賃貸住宅の賃貸人に対し、当該管理受託契約を締結するまでに、管理受託契約の内容及びその履行に関する事項であって国土交通省令で定めるものについて、書面を交付して説明しなければならない(法13条1項)。
管理受託契約の締結前の説明事項は、次のとおりである。
イ) 管理受託契約を締結する賃貸住宅管理業者の商号、名称又は氏名並びに登録年月日及び登録番号
ロ) 管理業務の対象となる賃貸住宅 ハ) 管理業務の内容及び実施方法 ニ) 報酬の額並びにその支払の時期及び方法 ホ) 報酬に含まれていない管理業務に関する費用であって、賃貸住宅管理業者が通常必要とするもの ヘ) 管理業務の一部の再委託に関する事項 ト) 責任及び免責に関する事項 チ) 委託者への定期報告に関する事項 リ) 契約期間に関する事項 ヌ) 賃貸住宅の入居者に対する管理業務の内容及び実施方法の周知に関する事項 ル) 管理受託契約の更新及び解除に関する事項 |
なお、この重要事項の説明は、業務管理者によって行われることは必ずしも必要ないが、業務管理者の管理及び監督の下に行われる必要があり、また、業務管理者又は一定の実務経験を有する者など専門的な知識及び経験を有する者によって行われることが望ましい(考え方13条関係1)。
Point1 重要事項の説明は、賃貸人から委託を受けようとする賃貸住宅管理業者自らが行う必要がある(考え方13条関係1)。
Point2 重要事項の説明は、いかなる理由があっても管理受託契約の成立後に行うことはできない。なお、賃貸人が契約内容を十分に理解した上で契約を締結できるよう、説明から契約締結までに1週間程度の期間をおくことが望ましい(考え方13条関係1)。
Point3 重要事項の説明を行う際に、従業者証明証の提示は義務付けられていない。
(b) 例外
当該賃貸人が、賃貸住宅管理業者である者その他の管理業務に係る専門的知識及び経験を有すると認められる者として国土交通省令で定めるものである場合は、賃貸住宅管理業者は、書面の交付および説明を行わなくてもよい(法13条1項かっこ書)。
管理業務に係る専門的知識及び経験を有すると認められる者は、次の者である(規則30条)。
イ) 賃貸住宅管理業者
ロ) 特定転貸事業者 ハ) 宅地建物取引業者 ニ) 特定目的会社 ホ) 組合 ヘ) 賃貸住宅に係る信託の受託者(委託者等がイ)~ニ)のいずれかに該当する場合に限る。) ト) 独立行政法人都市再生機構 チ) 地方住宅供給公社 |
② 電磁的方法による提供
賃貸住宅管理業者は、書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、管理業務を委託しようとする賃貸住宅の賃貸人の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって国土交通省令で定めるものをいう。)により提供することができ、この場合は、賃貸住宅管理業者は、当該書面を交付したものとみなされる(法13条2項)。
Point 電磁的方法による提供を行う場合は、管理業務を委託しようとする賃貸住宅の賃貸人の承諾が必要である。
③ 管理受託契約重要事項説明におけるITの活用
管理受託契約重要事項説明にテレビ会議等のITを活用することができる。この場合は、次のすべての事項を満たしている場合に限り、対面による説明と同様に取扱われる(考え方13条関係4(2))。
(a) 説明者及び重要事項の説明を受けようとする者が、図面等の書類及び説明の内容について十分に理解できる程度に映像が視認でき、かつ、双方が発する音声を十分に聞き取ることができるとともに、双方向でやりとりできる環境において実施していること
(b) 管理受託契約重要事項説明を受けようとする者が承諾した場合を除き、管理受託契約重要事項説明書及び添付書類をあらかじめ送付していること (c) 重要事項の説明を受けようとする者が、管理受託契約重要事項説明書及び添付書類を確認しながら説明を受けることができる状態にあること並びに映像及び音声の状況について、賃貸住宅管理業者が重要事項の説明を開始する前に確認していること |
Point 重要事項の説明は、必ずしも対面で行う必要はない。
④ 管理受託契約の更新等に際しての重要事項説明
賃貸住宅管理業者が管理受託契約を当初契約と異なる内容で更新する場合〔少なくとも、管理受託契約重要事項説明の内容が当初契約と異なる場合〕、改めて管理受託契約重要事項説明書の交付及び管理受託契約重要事項説明を行わなければならない(考え方13条関係3)。
(5) 管理受託契約の締結時の書面の交付
① 書面の交付
賃貸住宅管理業者は、管理受託契約を締結したときは、管理業務を委託する賃貸住宅の賃貸人(以下「委託者」という。)に対し、遅滞なく、次の事項を記載した書面を交付しなければならない(法14条1項)。
(a) 管理業務の対象となる賃貸住宅
(b) 管理業務の実施方法 (c) 契約期間に関する事項 (d) 報酬に関する事項(報酬の額並びにその支払の時期及び方法を含む。) (e) 契約の更新又は解除に関する定めがあるときは、その内容 (f) 管理受託契約を締結する賃貸住宅管理業者の商号、名称又は氏名並びに登録年月日及び登録番号 (g) 管理業務の内容 (h) 管理業務の一部の再委託に関する定めがあるときは、その内容 (i) 責任及び免責に関する定めがあるときは、その内容 (j) 委託者への定期報告に関する事項 (k) 賃貸住宅の入居者に対する管理業務の内容及び実施方法の周知に関する事項 |
これに違反して、書面を交付せず、若しくは所定の事項を記載しない書面若しくは虚偽の記載のある書面を交付したときは、その違反行為をした者は、30万円以下の罰金に処される(法44条4号)。
Point1 契約締結時の書面は、賃貸人に対する管理受託契約に関する重要事項の説明の書面とは別途の書面として作成しなければならない。交付時期が異なるため、両書面を一体で交付することはできない。
Point2 契約締結時の書面は、様式は問われないため、賃貸住宅管理業法に定められた事項が記載された契約書であれば、当該契約書をもってこの書面とすることができる(考え方14条関係1)。
② 電磁的方法による提供
管理受託契約の締結時の書面についても、上記(4)②と同様に、書面の交付に代えて、電磁的方法による提供をすることができる(法14条2項)。
電磁的方法による提供の場合も、所定の事項を欠いた提供又は虚偽の事項の提供をしたときは、その違反行為をした者は、30万円以下の罰金に処される(法44条4号)。
③ 管理受託契約の更新等に際しての書面の交付
賃貸住宅管理業者が管理受託契約を当初契約と異なる内容で更新する場合〔少なくとも、管理受託契約重要事項説明の内容が当初契約と異なる場合〕、管理受託契約の締結時の書面を交付しなければならない。
(6) 管理業務の再委託の禁止
賃貸住宅管理業者は、委託者から委託を受けた管理業務の全部を他の者に対し、再委託してはならない(法15条)。
Point1 再委託の禁止に例外はないため、管理物件が遠隔地に所在する場合であっても、管理業務の全部を他の者に再委託することはできない。
Point2 管理受託契約に管理業務の一部の委託に関する定めがあるときは、管理業務の一部について再委託を行うことができる。
(7) 財産の分別管理
① 財産の分別管理
賃貸住宅管理業者は、管理受託契約に基づく管理業務(上記■1(2)②(b))において受領する家賃、敷金、共益費その他の金銭を、整然と管理する方法として国土交通省令で定める方法により、自己の固有財産及び他の管理受託契約に基づく管理業務において受領する家賃、敷金、共益費その他の金銭と分別して管理しなければならない(法16条)。
② 分別管理の方法
財産の分別管理の方法は、管理受託契約に基づく管理業務において受領する家賃、敷金、共益費その他の金銭を管理するための口座を自己の固有財産を管理するための口座と明確に区分し、かつ、当該金銭がいずれの管理受託契約に基づく管理業務に係るものであるかが自己の帳簿(その作成に代えて電磁的記録の作成がされている場合における当該電磁的記録を含む。)により直ちに判別できる状態で管理する方法としなければならない(規則36条)。
(8) 従業者証明書の携帯等
① 証明書の携帯
賃貸住宅管理業者は、国土交通省令で定めるところにより、その業務に従事する使用人その他の従業者に、その従業者であることを証する証明書〔=従業者証明書〕を携帯させなければ、その者をその業務に従事させてはならない(法17条1項)。
これに違反したときは、その違反行為をした者は、30万円以下の罰金に処される(法44条5号)。
Point 従業者証明書を携帯させるべき者の範囲は、賃貸住宅管理業者の責任の下に、当該賃貸住宅管理業者が営む賃貸住宅管理業に従事する者である。賃貸住宅管理業者と直接の雇用関係にある者であっても、内部管理事務に限って従事する者は、従業者証明書の携帯の義務はない(考え方17条関係)。
② 証明書の提示
賃貸住宅管理業者の使用人その他の従業者は、その業務を行うに際し、委託者その他の関係者から請求があったときは、従業者証明書を提示しなければならない(法17条2項)。
これに違反したときは、その違反行為をした者は、30万円以下の罰金に処される(法44条5号)。
(9) 帳簿の備付け等
賃貸住宅管理業者は、国土交通省令で定めるところにより、その営業所又は事務所ごとに、その業務に関する帳簿を備え付け、委託者ごとに管理受託契約について契約年月日その他の国土交通省令で定める事項を記載し、これを保存しなければならない(法18条1項)。
これに違反して、帳簿を備え付けず、帳簿に記載せず、若しくは帳簿に虚偽の記載をし、又は帳簿を保存しなかったときは、その違反行為をした者は、30万円以下の罰金に処される(法44条6号)。
(10) 標識の掲示
賃貸住宅管理業者は、その営業所又は事務所ごとに、公衆の見やすい場所に、国土交通省令で定める様式の標識を掲げなければならない(法19条)。
これに違反したときは、その違反行為をした者は、30万円以下の罰金に処される(法44条5号)。
(11) 委託者への定期報告
① 委託者への定期報告義務
賃貸住宅管理業者は、管理業務の実施状況その他の国土交通省令で定める事項について、国土交通省令で定めるところにより、定期的に、委託者に報告しなければならない(法20条)。
② 定期報告の内容及び方法
賃貸住宅管理業者は、委託者への報告を行うときは、管理受託契約を締結した日から1年を超えない期間ごとに、及び管理受託契約の期間の満了後遅滞なく、当該期間における管理受託契約に係る管理業務の状況について次の事項を記載した管理業務報告書を作成し、これを委託者に交付して説明しなければならない(規則40条1項)。
(a) 報告の対象となる期間
(b) 管理業務の実施状況 (c) 管理業務の対象となる賃貸住宅の入居者からの苦情の発生状況及び対応状況 |
なお、賃貸住宅管理業者は、管理業務報告書の交付に代えて、当該管理業務報告書を交付すべき委託者の承諾を得て、記載事項を電磁的方法により提供することができ、この場合は、当該賃貸住宅管理業者は、当該管理業務報告書を交付したものとみなされる(規則40条2項)。
Point1 委託者への報告は、「1年を超えない期間ごと」の他に、「管理受託契約の期間の満了後」にも遅滞なく行う必要がある。なお、管理受託契約の期間が満了して管理事務が終了したときであっても、賃貸住宅管理業者は、当該賃貸建物の賃借人に対し、その旨を通知することは義務付けられない。
Point2 (b)では、賃貸人と賃貸住宅管理業者が締結する管理受託契約における委託業務の全てについて報告することが望ましい(考え方20条関係1(1))。
Point3 (c)では、単純な問い合わせについて、記録及び報告の義務はないが、苦情を伴う問合せについては、記録し、対処状況も含めて報告する必要がある(考え方20条関係1(2))。
Point4 委託者の承諾があれば、委託者への報告を、書面によらず、電子メールなどの電磁的方法により行うことができる。
(12) 秘密を守る義務
賃貸住宅管理業者は、正当な理由がある場合でなければ、その業務上取り扱ったことについて知り得た秘密を他に漏らしてはならない。賃貸住宅管理業を営まなくなった後においても、同様である(法21条1項)。
賃貸住宅管理業者の代理人、使用人その他の従業者は、正当な理由がある場合でなければ、賃貸住宅管理業の業務を補助したことについて知り得た秘密を他に漏らしてはならない。賃貸住宅管理業者の代理人、使用人その他の従業者でなくなった後においても、同様である(法21条2項)。
これに違反して秘密を漏らしたときは、その違反行為をした者は、30万円以下の罰金に処される(法44条7号)。