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1賃貸管理に関する新しい制度

堀川 寿和2021/12/21 10:26

住宅宿泊事業法

(1) 住宅宿泊事業法とは

 住宅宿泊事業法は、いわゆる民泊について、宿泊者の安全面・衛生面の確保、騒音やゴミ出しなどによる近隣トラブルの防止、観光旅客の宿泊ニーズへの対応を目的として、一定のルールを定め、健全な民泊サービスの普及を図るものとして、2018年6月に成立した。


(2) 住宅宿泊事業法の対象

 民泊の制度の一体的かつ円滑な遂行を確保するため、「住宅宿泊事業者」「住宅宿泊管理業者」「住宅宿泊仲介業者」という3種の業者が位置付けられており、それぞれに対して役割や義務等が決められている。


① 住宅宿泊事業者

 住宅宿泊事業法第3条第1項の届出をして、住宅宿泊事業を営む者

② 住宅宿泊管理業者

 住宅宿泊事業法第22条第1項の登録を受けて、住宅宿泊管理業を営む者

③ 住宅宿泊仲介業者

 住宅宿泊事業法第46条第1項の登録を受けて、住宅宿泊仲介業を営む者


(3) 住宅宿泊事業者の義務

 住宅宿泊事業者は、①宿泊者の衛生・安全の確保、②外国人宿泊者への外国語による案内、③宿泊者名簿の備付け・提出、④宿泊者に対するマナーの説明、⑤周辺住民からの苦情等への対応、⑥標識の掲示、⑦都道府県知事に対する定期報告の義務を負う。(民泊新法5条、6条、7条、8条、9条、10条、13条、14条)


(4) 住宅宿泊管理業務の委託義務

 住宅宿泊事業者は、次の①または②のいずれかに該当するときは、届出住宅の住宅宿泊管理業務を、住宅宿泊管理業者に委託しなければならない(住宅宿泊事業法11条1項本文)。

① 届出住宅の居室の数が、5を超えるとき。

② 届出住宅に人を宿泊させる間、不在(一時的なものを除く)となるとき。

ただし、次のいずれにも該当するときを除く。


a) 住宅宿泊事業者が自己の生活の本拠として使用する住宅と届出住宅が、同一の建築物内もしくは敷地内にあるときまたは隣接しているとき。

b) 届出住宅の居室であって、それに係る住宅宿泊管理業務を住宅宿泊事業者が自ら行うものの数の合計が5以下であるとき


Point 住宅宿泊事業のうち、居室数5を超える家主居住型および狭義の家主不在型では、住宅宿泊事業者は、住宅宿泊管理業務を委託することが義務付けられている


(5) 住宅宿泊管理業

 住宅宿泊管理業とは、住宅宿泊事業者から委託を受けて、報酬を得て、住宅宿泊管理業務を行う事業をいう。住宅宿泊管理業を行うには、国土交通大臣の登録を受けなければならない。この登録を受けて住宅宿泊管理業を営む者を、住宅宿泊管理業者という。


Point 国土交通大臣の登録を受けなければ、住宅宿泊管理業を行うことができない。


(6) 住宅宿泊管理業者の業務上の規制

① 管理受託契約の締結前の書面の交付

 住宅宿泊管理業者は、管理受託契約を締結しようとするときは、委託者に対し、当該管理受託契約を締結するまでに、管理受託契約の内容およびその履行に関する事項であって国土交通省令で定めるものについて、書面を交付して説明しなければならない。

 ただし、委託者が住宅宿泊管理業者である場合は、書面の交付および説明をする必要がない。

イ)管理受託契約を締結する住宅宿泊管理業者の商号、名称または氏名ならびに登録年月日および登録番号
ロ)住宅宿泊管理業務の対象となる届出住宅
ハ)住宅宿泊管理業務の内容および実施方法
ニ)報酬ならびにその支払の時期および方法
ホ)ニ)の報酬に含まれていない住宅宿泊管理業務に関する費用であって、住宅宿泊事業者が通常必要とするもの
へ)住宅宿泊管理業務の一部の再委託に関する事項
ト)責任および免責に関する事項
チ)契約期間に関する事項
リ)契約の更新および解除に関する事項


② 管理受託契約の締結時の書面の交付

 住宅宿泊管理業者は、管理受託契約を締結したときは、委託者に対し、遅滞なく、次の事項を記載した書面を交付しなければならない。

イ)住宅宿泊管理業務の対象となる届出住宅
ロ)住宅宿泊管理業務の実施方法
ハ)契約期間に関する事項
ニ)報酬に関する事項
ホ)契約の更新または解除に関する定めがあるときは、その内容
へ)住宅宿泊管理業者の商号、名称または氏名
ト)住宅宿泊管理業務の内容
チ)住宅宿泊管理業務の一部の再委託に関する定めがあるときは、その内容
リ)責任及び免責に関する定めがあるときは、その内容
ヌ)住宅宿泊事業者への報告に関する事項


Point 住宅宿泊管理業者は、上記①および②の書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、委託者の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができ、これにより、当該住宅宿泊管理業者は、当該書面を交付したものとみなされる。したがって、住宅宿泊管理業者が所定の事項を電磁的方法により提供した場合は、改めて書面を交付する必要はない。


③ 住宅宿泊管理業務の再委託の禁止

 住宅宿泊管理業者は、住宅宿泊事業者から委託された住宅宿泊管理業務の全部を他の者に対し、再委託してはならない。


Point 住宅宿泊管理業務の全部を再委託することが禁止されている。つまり、一部を再委託することはできる。


(7) 住宅宿泊仲介業

 住宅宿泊仲介業とは、旅館業法に基づく登録を受けた旅行業者以外の者が、報酬を得て、住宅宿泊仲介業務を行う事業である。その事業を行うためには、観光庁長官の登録を受けなければならない。

 また、住宅宿泊事業者は、宿泊サービス提供契約(宿泊者に対する届出住宅における宿泊のサービスの提供に係る契約)の締結の代理又は媒介を他人に委託するときは、住宅宿泊仲介業者又は旅行業者に委託しなければならない。


(8) 分譲マンション内の住宅宿泊事業

 マンションの規約において、住居専用の定めのほか、住宅宿泊事業法に基づく住宅宿泊事業を禁止する定めがあれば、区分所有者・賃借人はマンション内で住宅宿泊事業を行うことはできない。


住宅セーフティネット法

(1) 住宅セーフティネット法とは

 低額所得者、被災者、高齢者、障害者、子育て世帯(以上、住宅確保要配慮者という)が、住宅を確保しやすくするために作られた制度。

 住宅確保要配慮者は今後増加する見込みであるが、公営住宅については大幅な増加が見込めない一方で、民間の空き家は増加しており、それらを活用した新たな 住宅セーフティネット制度として2017年10月からスタートした。


(2) 住宅セーフティネット法の主な内容

① 賃貸人は、空き家等を住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅として都道府県等による登録を受けることができる。

② 登録を受ける空き家等は、構造・設備、床面積、家賃等が、国土交通省令で定める登録基準に適合していなければならない。

③ 登録を受けた賃貸人は、入居を希望する住宅確保要配慮者に対し、住宅確保要配慮者であることを理由に入居を拒否してはならない。

④ 都道府県等は登録住宅の情報開示を行うとともに、住宅確保要配慮者の入居に関し賃貸人を指導監督する。

⑤ 登録住宅の改修費については、住宅金融支援機構の融資を受けることができる。


家賃債務保証業者登録制度

(1) 家賃債務保証

 家賃債務保証は入居希望者が賃貸住宅を借りやすくするための制度。

入居希望者が賃貸住宅の契約を締結する場合に、保証会社(信販会社等)が借主の連帯保証人に近い役割を果たす制度であり、借主が賃貸借契約の期間中に家賃等を滞納した場合に、保証会社が一定範囲内で立て替える。

① 入居希望者のメリット

・ 連帯保証人がいなくても希望の物件が借りやすくなる。

・ 家賃債務保証の利用により、貸主との信頼関係が向上する。

② 貸主のメリット

・ 物件を希望者に貸しやすくなる。

・ 賃貸経営がより安定的になる。


(2) 家賃債務保証業者

① 家賃債務保証業の定義

 家賃債務保証業とは、賃貸住宅の賃借人の委託を受けて賃借人の家賃の支払に係る債務(家賃債務)を保証することを業として行うことである。(家賃債務保託業者の登録規程2条1項)

② 家賃債務保証業者の登録

 家賃債務保証業を営む者は、国土交通大臣の登録を受けることができる。(家賃債務保証業者の登録規程3条1項)

 この登録制度の利用は任意であり、登録を受けなければ家賃債務保証業を営むことができないものではない。また、登録を受けていることによって何らかの特別の保証が与えられるものでもない。


(3) 家賃債務保証業者登録制度

 家賃債務保証業者に対して明確なルールを設けることで信頼性を高めようという目的で、2017年10月にスタートした制度。

 これまでは家賃債務保証業者に対する明確なルールが設けられていなかったので、消費者からの苦情が相次いでいた。苦情内容としては、身に覚えのない請求や、法定利率を超える過剰な手数料の請求、また説明不足などが主となっている。

 入居者が家賃を滞納し、その家賃を保証会社が立て替えた後、家賃債務保証業者からの執拗な取立てなども問題視されており、家賃債務保証業者登録制度を設けることで、こうしたトラブルを減少させることを目的としている。

 国土交通省に家賃債務保証業者として登録するには、保証会社が一定の基準を満たすことが前提となっている。その基準は、

・ 暴力団員等の関与がない

・ 安定的に業務を運営するための財産的基礎がある

・ 法令等遵守のための研修の実施

・ 相談又は苦情に応ずるための体制整備 等がある。

さらに、登録後は以下のルールを守ることが義務付けられる。

・ 登録業者の従業者であることを証する証明書の携帯

・ 暴力団員等の排除

・ 虚偽告知及び誇大広告の禁止

・ 契約締結までに重要な事項に関する説明・書面交付 等