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1保証
不動産の賃貸借においては、賃料債務などの賃貸借契約から生じる賃借人の賃貸人に対する債務を担保するために、一般に、保証人による連帯保証が利用される。ここでは、その連帯保証に関するルールを学ぶ。
■保証債務
(1) 保証債務
保証債務とは、主たる債務者がその債務を履行しないときに、主たる債務者に代わってその債務を履行する債務である(446条1項)。この債務を負う者を、保証人という。保証人には、主たる債務者の委託を受けて保証をする者と、主たる債務者の委託を受けないで保証をする者がある。
事例 BがAから1,000万円の借金をし、Cがその保証人となった。この場合、主たる債務者Bが借金の1,000万円を返さないとき、保証人CがBの代わりに1,000万円を返す責任を負う。
(2) 連帯保証
連帯保証とは、保証人が主たる債務者と連帯して債務を負担する保証をいう。主たる債務者と連帯するとは、主たる債務について、保証人も主たる債務者と同様の責任を負うということである。上記の一般の保証と区別するために、連帯保証の場合の保証人を連帯保証人といい、連帯保証人の負う債務を連帯保証債務という。
不動産の賃貸借の場合は、賃料債務などの賃貸借契約から生じる賃借人の賃貸人に対する債務が主たる債務となる。
■保証債務の成立
(1) 保証契約
保証債務は、債権者と保証人となるべきものとの間の保証契約によって成立する。
(2) 保証契約の要式性
保証契約は要式契約とされており、保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない(446条2項)。保証人となるべき者が軽率に保証契約を締結してしまうことを防ぐためである。
Point 保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じないので、法人が保証人となる場合であっても、書面によらない保証契約は無効である。
(3) 連帯保証契約の成立
保証契約において、主たる債務者と連帯して債務を負担する旨の特約がされたときに連帯保証が成立する。このような特約が付された保証契約を、連帯保証契約という。
連帯保証契約も、書面によって締結しなければ、その効力を生じない。
Point 不動産の賃貸借において連帯保証を利用する場合も、保証契約は書面でする必要があるが、必ずしも不動産の賃貸借契約書とは別に連帯保証契約書を作成する必要はない。たとえば、不動産の賃貸借契約書中に「連帯保証に関する定め」があれば、その賃貸借契約書に「連帯保証人が署名押印」することにより「書面でする」という保証契約の要式性は満たされ、連帯保証契約は有効に成立する。しかし、賃貸借契約書中に「連帯保証に関する定め」および「連帯保証人の署名押印」がないのであれば、賃貸借契約書とは別に「連帯保証契約書」の作成が必要になる。
■保証債務の性質
(1) 付従性
① 成立における付従性・消滅における付従性
② 内容における付従性
保証人の負担が債務の目的または態様において主たる債務より重いときは、これを主たる債務の限度に減縮する(448条1項)。
主たる債務の目的または態様が保証契約の締結後に加重されたときであっても、保証人の負担は加重されない(448条2項)。
(2) 随伴性
随伴性は、被担保債権(主たる債務)が移転すると、保証人に対する債権(保証債務)も移転するという性質である。
Point 賃貸人が賃貸物件を第三者に譲渡してその譲受人が新賃貸人となった場合、保証契約は終了せず、随伴性によって、保証人は新賃貸人に対して保証債務を負うことになる。
(3) 補充性
① 一般の保証の場合
一般の保証には、補充性がある。補充性とは、主たる債務が履行されない場合にはじめて保証人は債務を履行すべき義務を負うという性質である。
この補充性により、一般の保証の保証人には以下の2つの抗弁権(拒否権)が認められている。
イ)催告の抗弁権
債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる(452条本文)。ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、またはその行方が知れないときは、請求できない(452条ただし書)。
ロ)検索の抗弁権
債権者が主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない(453条)。
② 連帯保証の場合
連帯保証には補充性がない。したがって、連帯保証人は、催告の抗弁権および検索の抗弁権を有しない(454条)。
Point 連帯保証人は賃貸人から保証債務の履行を求められたときに、まず賃借人に催告すべき旨を請求することができない。