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- 使用貸借契約
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1使用貸借契約
友人間や親族間など建物の貸借を行う場合は、使用貸借契約が締結されることがある。使用貸借とは、無償(タダ)で行う物の貸し借りである。使用貸借には借地借家法は適用されない。
■使用貸借契約
(1) 使用貸借契約の成立
使用貸借は、当事者の一方(貸主)がある物を引き渡すことを約し、相手方(借主)がその受け取った物について無償で使用および収益をして契約が終了したときに返還をすることを約することによって、その効力を生ずる(593条)。
Point1 使用貸借契約は、当事者の合意で成立する諾成契約である。
Point2 使用貸借契約の成立のために、使用貸借の目的物の引渡しは不要である。
Point3 使用貸借は無償契約であるため、借主は貸主に賃料を支払う必要がない。
(2) 借用物受取り前の貸主による使用貸借契約の解除
貸主は、借主が借用物を受け取るまで、契約の解除をすることができる(593条の2本文)。これは、軽率に使用貸借契約を締結してしまった貸主を保護するために、借用物を借主に引渡すまでであれば、貸主に契約の解除権を認めるものである。
これに対して、書面による使用貸借契約については、貸主の解除権は認められない(593条の2ただし書)。契約が書面による場合は、軽率に契約を締結してしまうということは考えられないからである。
■使用貸借契約の効力
(1) 借主による使用および収益
借主は、契約またはその目的物の性質によって定まった用法に従い、その物の使用および収益をしなければならない(594条1項)。
借主は、貸主の承諾を得なければ、第三者に借用物の使用または収益をさせることができない(594条2項)。
これらの規定に違反して使用または収益をしたときは、貸主は、契約の解除をすることができる(594条3項)。
(2) 借用物の費用の負担
借主は、借用物の通常の必要費(目的物の保存・保管に通常必要な費用)を負担しなければならない(595条1項)。
これに対して、特別の必要費(災害で破損した建物の修繕費など)は貸主に償還させることができる(595条2項)。また、有益費(借用物の改良のために支出した金額)についても、使用貸借の終了時にその価格の増加が現存する場合に限り、貸主の選択に従い、その支出した金額または増価額を償還させることができる(595条2項)。そして、有益費については、裁判所は、貸主の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる(595条2項)。
(3) 使用借権の対抗力
使用借権は、賃借権と異なり、第三者に対抗することができない。
たとえば、A所有の甲建物をBが無償で借りて使用していたところ、Aが甲建物をCに売却したような場合に、Bは買主Cに使用借権を対抗することができないので、BがCから甲建物の明渡しを求められたら、これに応じるしかない。
■使用貸借契約の終了
(1) 期間満了等による使用貸借契約の終了
① 期間の定めがある場合
当事者が使用貸借の期間を定めたときは、使用貸借は、その期間が満了することによって終了する(597条1項)。
② 期間の定めがない場合
当事者が使用貸借の期間を定めなかった場合において、使用および収益の目的を定めたときは、使用貸借は、借主がその目的に従い使用および収益を終えることによって終了する(597条2項)。
(2) 借主の死亡による使用貸借契約の終了
使用貸借は、借主の死亡によって終了する(597条3項)。
Point1 賃貸借契約は賃借人の死亡により終了せず、賃借権は相続の対象となったが、使用貸借契約は借主の死亡によって終了するので、使用借権は相続の対象とならない。
Point2 使用貸借は、貸主の死亡によっては終了しない。
(3) 解除による使用貸借契約の終了
① 貸主の解除権
当事者が使用貸借の期間を定めなかった場合において、使用および収益の目的を定めたときは、貸主は、その目的に従い借主が使用および収益をするのに足りる期間を経過したときに、契約の解除をすることができる(598条1項)。
当事者が使用貸借の期間ならびに使用および収益の目的を定めなかったときは、貸主は、いつでも契約の解除をすることができる(598条2項)。
② 借主の解除権
借主は、いつでも契約の解除をすることができる(598条3項)。