- 設備・会計ー5.管理組合の税務
- 1.法人税
- 法人税
- Sec.1
1法人税
管理組合の税務については、管理業務主任者試験では、例年1問出題されており、「消費税」が最も重要であり、「法人税」もよく出題される。マンション管理士試験では、3年に1度くらいの頻度で出題されており、「法人税」が最も重要である。
■法人税
(1) 法人税の納税義務者
法人税は、国内に本店または主たる事務所を有する法人に課税される国税である。人格のない社団〔法人でない社団で代表者または管理人の定めがあるもの〕については、法人とみなして、法人税が課税される。
ただし、公益法人等または人格のない社団は、収益事業を行う場合に限り、法人税を納める義務がある。なお、区分所有法により、管理組合法人および団地管理組合法人は、法人税法その他法人税に関する法令の規定の適用については、公益法人等とみなされる。したがって、管理組合は、法人化の有無にかかわらず、収益事業を行う場合に限り、法人税を納める義務がある。
Point1 管理組合は、法人化の有無にかかわらず、公益法人と同様の取扱いがなされており、非収益事業からの所得に対しては課税されない。
Point2 収益事業を行う管理組合は、収益事業から生ずる所得に関する経理と収益事業以外の事業から生ずる所得に関する経理とを区分して行わなければならない。
Point3 管理組合が収益事業と収益事業以外の事業とを行っている場合に、収益事業と収益事業以外の事業とに共通する費用または損失の額は、継続的に、資産の使用割合、従業員の従事割合、資産の帳簿価額の比、収入金額の比その他当該費用または損失の性質に応ずる合理的な基準により収益事業と収益事業以外の事業とに配賦し、これに基づいて経理しなければならない(基本通達・法人税法 15-2-5(2))。
(2) 収益事業
「収益事業」とは、販売業、製造業その他の政令で定める事業で、継続して事業場を設けて行われるものをいう。具体的に、不動産貸付業、駐車場業など34種類の事業が政令で指定されている。
Point1 移動体通信業者との間で携帯電話基地局設置のため、屋上の使用を目的とした建物賃貸借契約を結び設置料収入を得ている管理組合の行為は、マンション(建物)の一部を他の者に使用させ、その対価を得ていることになるので、収益事業の不動産貸付業に該当する。
Point2 管理組合の組合員である区分所有者を対象とする駐車場の貸出しは、管理業務の一環として行われるもの〔区分所有者を対象とした共済的事業で、駐車料金は管理費の割増金〕であるので、収益事業たる駐車場業には該当しない。なお、駐車料金に限らず、組合員から専用庭等の専用使用料を徴収することも、同様の理由で、収益事業には該当しない。
Point3 区分所有者以外の者を対象とする駐車場の貸出しは、駐車場業として収益事業に該当する。
【発展】
管理組合の組合員である区分所有者を対象とする駐車場の貸出しであっても、収益事業に該当すると判断される事例 |
恒常的に空き駐車場が生じているため、区分所有者および区分所有者以外の者に対し、募集方法は両者を分けずに広く行い、使用方法は区分所有者の優先性を設けずに同一条件で駐車場を使用させている場合は、管理業務の一環としての「共済的事業」とは認められず、市中の有料駐車場と同様の駐車場業を行っているものと考えられることから、区分所有者に対する使用と区分所有者以外の者に対する使用を区分することなく、その全体が収益事業たる駐車場業に該当する(平成24年2月3日 国住マ第43号)。 |
区分所有者以外の者を対象とする駐車場の貸出しであっても、収益事業には該当しないと判断される事例 |
区分所有者の駐車場使用希望者がいないため、マンション内の駐車場の一部を空き駐車場の状態にしておく予定でいた管理組合において、近隣で道路工事を行っている土木業者からの申し出に応じ、工事期間(2週間)に限定して駐車場を賃貸した場合は、管理業務の一環として行われている区分所有者に対する駐車場使用に付随して行われる行為であることから、この外部使用を含めた当該管理組合が行う駐車場使用の全体が収益事業には該当しない(平成24年2月3日 国住マ第43号)。 |
(3) 法人税の申告および納付
法人は、各事業年度終了の日の翌日から2か月以内に、税務署長に対し、法人税の確定申告および納付をしなければならない。管理組合も、収益事業により所得を得た場合は、法人税の申告義務がある。 管理組合は、法人化の有無を問わず、収益事業を行わない場合は法人税を納付する義務がないので、この場合、法人税の申告義務もない。なお、管理組合が収益事業を行っている場合に、事業から得た所得が少額であるからといって、法人税の申告義務が免除されることはない。
■所得税
所得税は、原則として、所得を有する個人に対して課税されるものであるが、例外的に、法人も納税義務者となる場合がある。たとえば、国内に本店または主たる事務所を有する法人が、国内において「預貯金の利子等」「株式の配当等」の支払を受けるときは、所得税を納める義務がある。なお、この場合に、人格のない社団〔法人でない社団で代表者または管理人の定めのあるもの〕は、法人とみなされ、納税義務者となる。
Point 管理組合が受け取る管理費および修繕積立金の運用から生じる預貯金の利子や配当による所得には、所得税が課税される。
■法人住民税(都道府県民税および市町村民税)
法人住民税には、都道府県民税と市町村民税とがある。都道府県民税は都道府県が課税する地方税であり、市町村民税は市町村が課税する地方税である。
(1) 法人住民税(都道府県民税および市町村民税)の納税義務者等
① 法人
法人住民税(都道府県民税および市町村民税)は、都道府県および市町村内に事務所または事業所を有する法人に対しては、均等割額および法人税割額の合計額が課税される。なお、公益法人等(管理組合法人および団地管理組合法人を含む)については、収益事業を行う場合にのみ、法人税割が課税される。したがって、公益法人等が収益事業を行わない場合は、均等割のみが課税される。なお、収益事業の範囲は、法人税と同じである。
Point 管理組合法人は、収益事業を行う場合は、均等割・法人税割ともに法人住民税の納税義務があるが、収益事業を行わない場合は、均等割のみ法人住民税の納税義務がある。
② 人格のない社団
法人でない社団については、代表者または管理人の定めがあり、かつ、収益事業を行うもの(「人格のない社団」と呼ばれる。)は、法人とみなして、法人住民税(都道府県民税および市町村民税)が課税される。したがって、収益事業を行わない場合は法人とみなされないため、法人住民税(都道府県民税および市町村民税)は均等割・法人税割ともに課税されない。なお、収益事業の範囲は、法人税と同じである。
Point 法人化されていない管理組合は、収益事業を行う場合は、均等割・法人税割ともに法人住民税の納税義務があるが、収益事業を行わない場合は、均等割・法人税割ともに法人住民税の納税義務がない。
【納税義務の範囲】
均等割 | 法人税割 | ||
法人化されていない管理組合 | 収益事業なし | × | × |
収益事業あり | ○ | ○ | |
管理組合法人 | 収益事業なし | ○ | × |
収益事業あり | ○ | ○ |
(2) 法人住民税の減免
管理組合については、都道府県や市町村により異なるが、条例等で、法人住民税(都道府県民税および市町村民税)が減免される場合がある。