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1防水・断熱・防音等

堀川 寿和2021/12/17 10:22

防水

(1) 防水の種類

 防水工法は、メンブレン防水とシーリング防水の2つに大きく分類することができる。


① メンブレン防水

 メンブレン防水は、屋根やバルコニーなどの平面に、被膜を形成して防水層を作る工法の総称である。


イ) 仕上げ方法による分類

 メンブレン防水は、仕上げ方法により、露出工法と押さえ工法に分けることができる。

(a) 露出工法

 露出工法とは、人の出入りがまったくないか少ない場所で非歩行用または軽歩行用とするための工法であり、防水層が露出したままの露出仕上げになっている。


(b) 押さえ工法

 押さえ工法とは、人が日常使用する場所で歩行用とするための工法であり、防水層を保護するために、防水層の上にコンクリートを打込む。これを、押さえコンクリート仕上げという。押さえコンクリートは、夏期の直射日光などで温度が上昇すると膨張するため、縦・横数m間隔で幅2㎝程度の伸縮目地を設け、目地には合成樹脂製目地材などが充填される。


ロ) 防水層の使用材料による分類

 メンブレン防水の工法は、防水層の使用材料によって、アスファルト防水熱工法、改質アスファルトシート防水工法(トーチ工法)、シート防水工法、ウレタン系塗膜防水工法などに細分できる。


(a) アスファルト防水熱工法

 アスファルト防水熱工法とは、アスファルト溶融釜で溶融して液状にした溶融アスファルトを用いて、これとシート状のアスファルトルーフィングとが交互になるように層状に接着固定して防水層を形成する工法である。これは、最も歴史がある防水工法で、信頼性の高い工法とされるが、施工時に臭気や煙が発生するので、施工現場周辺の環境に及ぼす影響が大きい。仕上げは、露出工法か押さえ工法となる。

(b) 改質アスファルトシート防水工法(トーチ工法)

 改質アスファルトシート防水工法(トーチ工法)とは、薄いシート状の改質アスファルトシートの裏面および下地をトーチバーナーであぶりながら改質アスファルトを溶融させ、これによりシートを下地に固定して防水層を形成する工法である。これは比較的新しい工法であり、アスファルト防水熱工法のように、アスファルト溶融釜のような大がかりな設備を必要とせず、また、施工時に臭気や煙がほとんどでないので、施工現場周辺の環境におよぼす影響が少ない。また、アスファルトに改質材としてポリマーが添加されているため、アスファルト防水熱工法に比べ、防水層の性能が施工時の気温に左右されにくい。仕上げは、露出防水工法か押さえ防水工法となる。


(c) シート防水工法

 シート防水とは、薄い伸縮性のあるシートを接着剤または固定金具で下地に固定して防水層を形成する工法である。シートの材質により、塩化ビニル系樹脂シート防水工法、合成ゴム系シート防水工法などがある。仕上げは露出防水工法となる。


ⅰ) 塩化ビニル系樹脂シート防水工法

 塩化ビニル系樹脂シート防水工法は、塩化ビニル系樹脂シートを用いる。この工法では保護材不要で、軽歩行ができる施工も一般化している。


ⅱ) 合成ゴム系シート防水工法

 合成ゴム系シート防水工法は、合成ゴム系シートを用いる。この工法では厚塗り塗装材を保護層とすることにより、軽歩行も可能となる。保護層はトップコートともよばれる。


(d) ウレタン系塗膜防水工法

 ウレタン系塗膜防水工法は、塗料状のウレタン樹脂を、刷毛、ゴムベラ、吹付機械などを用いて下地に塗布することにより、防水層を形成する工法である。必要に応じて塗装材を保護層とすることもある。この工法は、下地の形状になじみやすく、突出物の多い屋上の改修工事の際に、施工が容易なため採用されることが多い。仕上げは露出防水工法となる。


② シーリング防水

 シーリング防水は、コンクリートの打継ぎ部や目地部、各種部材の接合部の隙間に防水性のシーリング材を充填して防水する工法である。

 シーリング防水に用いるシーリング材には、成分の違いにより、ウレタン系シーリング材、シリコーン系シーリング材、変成シリコーン系シーリング材などがある。


イ) ウレタン系シーリング材

 ウレタン系シーリング材は、比較的安価であるので最も多用されている。コンクリートやALCパネルの目地などに用いられるが、紫外線に弱いため、表面を塗装しなければならない。

ロ) シリコーン系シーリング材

 シリコーン系シーリング材は、変成シリコーン系シーリング材よりも紫外線に強く(耐候性)、耐熱性、耐水性にも優れている。ガラス類によく接着するので、主にガラス周りや水回りに使用される。表面に塗装は付着しない。


ハ) 変成シリコーン系シーリング材

 変成シリコーン系シーリング材は、耐候性に優れるので、主に外壁材の目地などに使用される。表面に塗装することもできる。


(2) 防水の劣化診断

 メンブレン防水の防水層やシーリング防水のシーリング材は、その素材に応じて、熱や温度・紫外線・水・塵埃などの影響を受けて経年劣化する。そこで、漏水を未然に防ぐために、定期的な劣化診断を行い、必要に応じて補修・改修を行う必要がある。


① メンブレン防水の劣化症状

 メンブレン防水の劣化診断にあたっては、まず、目視によって漏水およびその痕跡の有無を調査する。漏水がある場合は、漏水箇所を確認する。漏水が降雨に関わらず発生している場合は、漏水の原因がメンブレン防水の劣化ではなく、結露や配管からの漏水の可能性もあるので注意が必要となる。

 次に、漏水を未然に防ぐため、防水層などの劣化状況について、目視により調査する。劣化現象として、露出防水工法の場合は、防水層の破断・損傷・剥離・ふくれ、変色や減耗など表面の劣化などがあり、押さえ防水工法の場合は、押さえコンクリートのひび割れ・浮き・欠落などの損傷、伸縮目地部の異常、植物の繁殖などがある。これらの劣化現象がみられる場合は、その個数、幅、面積など劣化の程度を確認する。

 これらの調査の結果、漏水があったり、劣化の程度が大きい場合には、補修用調査を行い、必要に応じて部分補修・大規模補修などを行わなければならない。


② シーリング防水の劣化症状

 シーリング防水の劣化診断にあたっても、まず、目視によって、外壁部位からの漏水およびその痕跡の有無を調査する。また、漏水の原因となるシーリング材の被着面からの剥離、シーリング材の破断、被着体の破壊、シーリング材の変形や軟化の有無を調査する。このほか、漏水を未然に防ぐため、シーリング材のしわ・汚れ・ひび割れ・白亜化(シーリング材表面が粉状になる現象でチョーキングともいう)・変退色、シーリング材の上に塗装された仕上塗材などの浮き・剥離・変色などの有無についても調査する。これらの劣化がみられる場合は、その程度を確認する。その結果、漏水があったり、劣化の程度が大きい場合には、必要な補修・改修を行わなければならない。

 また、シーリング防水は雨水の侵入を防ぐだけでなく、外観の意匠の一部ともなっているので、美観を保つことも必要となる。そこで、意匠や美観上問題となる場合は、必要に応じて補修を行う。

(3) メンブレン防水の改修方法

 メンブレン防水の改修方法には、全面撤去方式とかぶせ方式とがある。


① 全面撤去方式

 全面撤去方式とは、既存の防水層を撤去して、新規に下地を作りなおして防水をやり直す方式をいう。この方式によると防水工法の選択を比較的自由に行え、改修後は新築時とほぼ同様の状態になる。ただし、撤去時に騒音や振動が発生すること、廃材が発生すること、工事が長期にわたること、改修中に雨が降ると養生が必要になることなどの欠点がある。また、かぶせ方式に比べて、工程が多いため費用は高くなる。


② かぶせ方式

 かぶせ方式とは、劣化部を除去・修繕したうえで、既存の防水層の平坦部を残し、その上から新しく防水をやり直す方式をいう。全面撤去方式に比べて工期も短く、費用も安いため、かぶせ方式のほうが主流とされる。ただし、既存の防水層との相性を考慮して、新規の防水工法を選択しなければならない。


Point かぶせ方式は、既存の防水層の上に、新しい防水層を作る方式である。したがって、防水層を改修する際に、既存の防水層は、すべて撤去しなければならないわけではない。


(4) 防水施工技能士

 防水施工に関わる者には、国による技能検定制度があり、技能検定に合格した者は、防水施工技能士と称することができる。


断熱

(1) 熱環境等

① 温熱要素

 温熱要素とは、人体の体感に影響を及ぼす気温・湿度・気流・放射の総称である。


イ) 気温

 室内の温度は一般に17度から28度が快適といわれる。


ロ) 湿度

 湿度は、人が感じる体感温度に影響を与える。同じ室温であっても、湿度が高いと暑く感じ、逆に湿度が低いと涼しく感じる。


ハ) 気流

 気流は、人が感じる体感温度に影響を与える。人は、気流があると、実際の温度よりも涼しく感じる。気流をうまく使うと、人は快適と感じる。

 人の足もとに不快な冷感を与える気流に、コールドドラフトがある。コールドドラフトとは、冬季に室内に低温の空気が流れ込むか、またはガラスなどの冷壁面で冷やされた冷風が下降する現象である。


ニ) 放射

 放射とは熱が空間を伝わることである。壁、窓、床、天井などからの放射熱は、人が感じる体感温度に影響を与る。同じ室温でも周囲の壁などの温度が高いと温かく感じ、逆に周囲の温度が低いと寒く感じる。


② 熱貫流

 熱貫流とは、熱が、壁や窓などを通して高温の空間から低温の空間に伝わる現象である。熱貫流には、熱伝達と熱伝導の2つの要素があり、熱伝達とは、周囲流体から固体表面、または固体表面から周囲流体に熱が移動する現象であり、熱伝導とは、熱が物体の高温部から低温部に移る現象である。


③ 露点温度と結露

 露点温度とは、空気の温度が下がっていくとき空気中の水蒸気の圧力が飽和水蒸気圧に達する温度をいい、それ以下になったとき壁などの表面で結露する。

 冬季に住戸の玄関の鋼製ドアの室内側表面に水滴がついたり、北側の押入れ内部でカビが発生したり、湿気の多い日の朝方に屋内のモルタル塗りの通路が濡れたりするのは、結露が発生原因である可能性が高い。

(2) 断熱改修

 断熱改修は、夏の暑さや冬の寒さに対して快適性を向上させる効果を期待できる。十分な断熱効果を得るためには、壁体の断熱改修だけでなく、窓の断熱改修も必要である。

 断熱改修の断熱工法には、内断熱工法と外断熱工法とがある。


① 内断熱工法

 内断熱工法とは、断熱材をコンクリート躯体の内側に設ける工法であり、従来から用いられてきた工法である。この工法によって断熱改修工事を行うと、居室の面積は減少する。

 内断熱工法による改修費用は、外断熱工法に比べて割安となる。しかし、躯体自体を断熱しないため、外気の寒暖の変化が躯体に与える影響は大きい。そのため、躯体の劣化は進行しやすく、躯体温度は外気温度に近くなるため、外気と室内温度に差があるときは結露が生じ、断熱性が低下するおそれがある。


② 外断熱工法

 外断熱工法とは、断熱材をコンクリート躯体の外側に設ける工法であり、比較的 新しい工法である。

 外断熱工法は、断熱材で建物全体を覆うため、外気の寒暖の変化が躯体に与える影響が小さい。そのため、躯体の劣化が進行しにくく、躯体温度は室内温度に近くなるため結露の防止に対して効果が期待できる。また、内断熱工法に比べて気密性が高く冷暖房の効果も上がる。しかし、外断熱工法による改修費用は、内断熱工法に比べて割高となる。また、気密性が高いため、十分な換気が必要になる。


防音

 マンションの床や界壁を改修する際には、遮音性能についても考慮しなければならない。


(1) 音

① 音の種類

 音の伝わり方には、固体伝播音と空気伝播音がある。


イ) 固体伝播音

 固体伝播音とは、建物の躯体構造を伝わる振動によって居室内の壁面や天井面などから発生する音のことである。


ロ) 空気伝播音

 空気伝播音とは、空気の振動によって伝わる音のことである。例えば、話し声や自動車騒音などである。空気伝播音は、壁などによってある程度は弱めることができる。


② その他

 人間が聴き取ることのできる周波数帯は、約20ヘルツから20,000ヘルツである。加齢により音が聴き取りにくくなることを加齢性難聴というが、加齢性難聴は高い周波数から始まり、次第に低い周波数でもみられるようになる。

 人間が聴き取ることのできる最小の音圧は、周波数によってかなり変化する。


(2) 床衝撃音の遮音性能

 上の階で床に物を落としたり、人が歩いたりすることによって下の階に伝わる音のことを床衝撃音という。マンションの床を改修する際には、床衝撃音の遮音性能について考慮する必要がある。

 床衝撃音の遮音性能を評価する衝撃源として重量衝撃源と軽量衝撃源がある。例えば、子供の椅子からの飛び降りは、重量衝撃源に分類され、スプーンの落下は、軽量衝撃源に分類される。

 床衝撃音の遮音性能を評価する単位として、L値が用いられる。床衝撃音の遮音等級L値は、その値が大きいほど遮音性能が低いことを示している。

 マンションでは、床を、畳などからフローリングに改修する場合も多い。フローリングは工法により遮音性能は異なり、普通のフローリングよりも遮音フローリングのほうが遮音性能は高い。また、遮音フローリングよりも、一般に、カーペットや畳仕上げのほうが遮音性能は高い。したがって、畳などからフローリングに改修すると、反対に遮音性能が低下するおそれがある。


(3) 界壁の遮音性能

 界壁を防音改修することにより、界壁の遮音性能を向上させることができる。界壁の遮音性能を評価する単位として、D値が用いられる。界壁の遮音等級D値は、その値が大きいほど遮音性能が高いことを示している。