- 適正化法ー8.建築基準法
- 3.建蔽率・容積率
- 建蔽率
- Sec.1
1建蔽率
■建蔽率
(1) 建蔽率
建蔽(ぺい)率とは、建築物の建築面積(同一敷地内に2以上の建築物がある場合においては、その建築面積の合計)の敷地面積に対する割合をいう。 |
「建蔽率」とは、敷地のどの範囲まで建築物を建築できるかを数値で表したものである。例えば、100㎡の敷地に50㎡の建物を建てた場合、建蔽率は100分の50であるから、50%という具合に計算する。
自分が権利を持っている土地だからといって、その周辺環境に無関係に、敷地いっぱいの建築物を建ててもよいということになると、威圧感のある街並みになるばかりでなく、日照や通風、そして「火災の延焼の危険」について大きな問題を生じることになる。そこで、建築物の集中する都市計画区域や準都市計画区域においては、建蔽率に限度が設けられる。
(2) 建蔽率の制限
建蔽率の限度は、用途地域等の区分に応じて、次の数値となる。
用途地域等 | 建蔽率の限度 |
第1種低層住居専用地域
第2種低層住居専用地域 田園住居地域 第1種中高層住居専用地域 第2種中高層住居専用地域 工業専用地域 | 3/10、4/10、5/10、6/10のうち、
その地域に関する都市計画で定められた割合 |
第1種住居地域
第2種住居地域 準住居地域 準工業地域 | 5/10、6/10、8/10のうち、
その地域に関する都市計画で定められた割合 |
近隣商業地域 | 6/10、8/10のうち、その地域に関する都市計画で定められた割合 |
商業地域 | 8/10 |
工業地域 | 5/10、6/10のうち、その地域に関する都市計画で定められた割合 |
用途地域の指定のない区域 | 3/10、4/10、5/10、6/10、7/10のうち、
特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て定めた割合 |
(3) 建蔽率の緩和
次に該当する建築物は、建蔽率の限度が、上記の数値に10%を加えたものに緩和される。たとえば、建蔽率の限度が60%とされている地域内であれば、建蔽率の限度が70%に緩和される。
① 防火地域内(建蔽率の限度が80%とされている地域を除く)にある➊に該当する建築物または準防火地域内にある➊もしくは➋のいずれかに該当する建築物
➊ 耐火建築物またはこれと同等以上の延焼防止性能を有するものとして政令で定める建築物(「耐火建築物等」) ➋ 準耐火建築物またはこれと同等以上の延焼防止性能を有するものとして政令で定める建築物(「準耐火建築物等」) ② 街区の角にある敷地またはこれに準ずる敷地で特定行政庁が指定するものの内にある建築物 |
上記の①②の両方に該当する建築物については、建蔽率の限度が、上記の数値に20%を加えたものに緩和される。
(4) 建蔽率の制限の適用除外
次に該当する建築物には、建蔽率の制限が適用されない。つまり、建蔽率の限度が100%になるということである。
① 防火地域(建蔽率の限度が80%とされている地域に限る)内にある「耐火建築物等」
② 巡査派出所、公衆便所、公共用歩廊その他これらに類するもの ③ 公園、広場、道路、川その他これらに類するものの内にある建築物で特定行政庁が安全上、防火上および衛生上支障がないと認めて許可したもの |
(5) 敷地が建蔽率の異なる地域にわたる場合
建築物の敷地が建蔽率に関する制限を受ける地域の2以上にわたる場合、その建築物の建蔽率の限度は、各地域の建蔽率の限度にその敷地の当該地域内にある各部分の面積の敷地面積に対する割合を乗じて得たものを合計した数値となる。
■容積率
(1) 容積率
容積率とは、建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合をいう。 |
『容積率』とは、敷地においてどの程度の規模の建築物を建築できるかを数値で表したものである。例えば、100㎡の敷地に、延べ面積250㎡の建物が建っていると容積率は100分の250で、250%という具合に計算する。
容積率も、建蔽率同様、都市計画区域や準都市計画区域においては限度が設けられることになる。それは、規模の大きな建築物があると、その建築物に出入りする人や物の多さに十分対応できるだけの道路や公園その他の都市施設が必要となるが、それに対応できない場所もあるからである。そのため、容積率は、様々な都市施設との対応などを考慮して都市計画の中で定められる。
(2) 容積率の制限
容積率の限度は、用途地域等の区分に応じて、次の数値となる。
用途地域等 | 容積率の限度 |
第1種低層住居専用地域
第2種低層住居専用地域 田園住居地域 | 5/10、6/10、8/10、10/10、15/10、20/10のうち、
その地域に関する都市計画で定められた割合 |
第1種中高層住居専用地域
第2種中高層住居専用地域 第1種住居地域 第2種住居地域 準住居地域 近隣商業地域 準工業地域 | 10/10、15/10、20/10、30/10、40/10、50/10のうち、
その地域に関する都市計画で定められた割合 |
商業地域 | 20/10、30/10、40/10、50/10、60/10、70/10、80/10、90/10、100/10、110/10、120/10、130/10のうち、その地域に関する都市計画で定められた割合 |
工業地域 | 10/10、15/10、20/10、30/10、40/10のうち、
その地域に関する都市計画で定められた割合 |
工業専用地域 | |
用途地域の指定のない区域 | 5/10、8/10、10/10、20/10、30/10、40/10のうち、
特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て定めた割合 |
(3) 前面道路の幅員による容積率の制限
容積率の上限値には、前面道路の幅員による制限が加わる場合がある。容積率は前面道路(敷地が接続している道路)の渋滞防止も目的としているので、前面道路の幅員が狭い場合は規制がさらに厳しくなるのである。具体的には、前面道路の幅員が12m未満の場合は、下記のルールに従って容積率制限の計算をしなければならない。
前面道路(前面道路が2以上あるときは、その幅員の最大のもの)の幅員が12m未満である建築物の容積率は、その前面道路の幅員のメートルの数値に、法定乗数を乗じたもの以下でなければならない。 |
法定乗数は、原則として①住居系の用途地域は10分の4、②その他の用途地域は10分の6である。
(4) 容積率算定の特例
① 地階
建築物の地階でその天井が地盤面からの高さ1m以下にあるものの住宅または老人ホーム等の用途に供する部分の床面積は、その建築物の住宅および老人ホーム等の用途に供する部分の床面積の合計の3分の1を限度として、延べ面積には算入されない。
地階部分の容積率を緩和しても、周囲の環境を悪化させることが少ないことから定められたものである。
② 昇降機の昇降路・共同住宅の共用の廊下など
昇降機の昇降路の部分または共同住宅の共用の廊下もしくは階段の用に供する部分の床面積は、延べ面積には算入されない。
昇降機の昇降路の部分の容積率の不算入措置は、建築物の用途を問わず適用される。共同住宅は、マンションなどの分譲共同住宅だけでなく、賃貸の共同上宅も含む。共用の廊下の用に供する部分には、いわゆるエントランスホールおよびエレベーターホールで共用のものを含み、共用の階段の用に供する部分には、階段に代わる共用の傾斜路の部分を含む。
③ 自動車車庫など
自動車車庫その他の専ら自動車または自転車の停留または駐車のための施設(誘導車路、操車場所及び乗降場を含む)の用途に供する部分の床面積は、その建築物の各階の床面積の合計の5分の1を限度として、延べ面積には算入されない。
④ 備蓄倉庫など
次の建築物の部分の床面積は、その建築物の各階の床面積の合計の一定割合を限度として、延べ面積には算入されない。
容積率の不算入措置の対象となる部分 | 限度となる割合 |
専ら防災のために設ける備蓄倉庫の用途に供する部分 | 50分の1 |
蓄電池(床に据え付けるもの)を設ける部分 | 50分の1 |
自家発電設備を設ける部分 | 100分の1 |
貯水槽を設ける部分 | 100分の1 |
(5) 敷地が容積率の異なる地域にわたる場合
建築物の敷地が容積率に関する制限を受ける地域の2以上にわたる場合、その建築物の容積率の限度は、各地域の容積率の限度にその敷地の当該地域内にある各部分の面積の敷地面積に対する割合を乗じて得たものを合計した数値となる。
■チェック問 建築基準法 問題
管理業務主任者試験【チェック問 建築基準法 問題】
1. 地階とは、床が地盤面下にある階で、床面から地盤面までの高さがその階の天井の高さの2分の1以上のものをいう。
2. 住宅における居住のための居室の天井の高さは、一室で天井の高さの異なる部分がない場合においては、2.4m以上でなければならない。
3. その階の住戸面積の合計が100㎡を超える場合のマンションの廊下の幅は、廊下の両側に居室がある場合にはl.5m以上、その他の場合にはl.0m以上としなければならない。
4. 容積率の限度が前面道路の幅員によって定まる場合において、当該前面道路が2以上あるときは、それらの幅員のうち最小のものが、容積率の算定の基礎となる数値として採用される。
5. エレベーターの昇降路の部分の床面積は、容積率の算定の基礎となる延べ面積に算入される。
マンション管理士試験【チェック問 建築基準法 問題】
1. 共同住宅の地上階における居室には、採光のための窓その他の開口部を設け、その採光に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して1/7以上としなければならない。
2. 共同住宅の居室の天井の高さは、2.1m以上でなければならず、その高さは、室の床面から測り、一室で天井の高さの異なる部分がある場合においては、その一番低い部分の高さによるものとする。
3. 共同住宅の2階以上にあるバルコニーの周囲には、安全上必要な高さが1.1m以上の手すり壁、さく又は金網を設けなければならない。
4. 共同住宅の敷地内には、屋外への出口から道又は公園、広場その他の空地に通ずる幅員が1.5m以上の通路を設けなければならない。
5. 高さ15mの共同住宅には、避雷設備を設けなければならない。