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  • 建築基準法の目的
  • Sec.1

1建築基準法の目的

堀川 寿和2021/12/14 15:41

 建築基準法は、建物の安全面、衛生面について規制することにより、人の生命・健康を守ろうという法律である。

建築基準法の目的

 建築基準法は、建築物の敷地、構造、設備および用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康および財産の保護を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的としている。

用語の定義

(1) 建築物

土地に定着する工作物のうち、次のものをいう。
① 屋根および柱もしくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む)
② ①に付属する門・塀など
③ 建築物に設ける建築設備


Point1 建築物に設ける建築設備も建築物に含まれる。


 「土地に定着する」とは、土地にしっかりとくっついて簡単には離れないことを意味する。また、「工作物」とは、人間が作ったものである。したがって、いくら居住性能がよくても自動車や船舶内の部屋などは土地に定着していないし、自然にできた洞窟は工作物ではないため、建築物ではないということになる。

 そして、建築物というためには、原則として風雨をしのぐための屋根、柱、壁があるものでなければならない。さらに、建築物に付属する門や塀などや、建築物に備え付けられた建築設備は建築物に含めて建築基準法の規制を受けるということである。


(2) 特殊建築物

学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、市場、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、旅館、共同住宅、寄宿舎、下宿、工場、倉庫、自動車車庫、危険物の貯蔵場、と畜場、火葬場、汚物処理場その他これらに類する用途に供する建築物をいう。

 建築物の中でも、不特定多数の人や自動車が出入りする建築物、危険性のあるものを貯蔵する建築物、公害発生の危険のある建築物等を「特殊建築物」といい、特別な規制がされている。


Point2 建築基準法の各条文の目的により、適用される特殊建築物の範囲は異なり、条文ごとに、その適用対象となる特殊建築物の用途や規模が規定されている。 


(3) 建築設備

建築物に設ける電気、ガス、給水、排水、換気、暖房、冷房、消火、排煙もしくは汚物処理の設備または煙突、昇降機もしくは避雷針をいう。


Point3 エレベーター(昇降機)も建築設備に含まれる。


 前の項で述べたように、基本的に屋根、柱、壁があって土地に定着していれば建築物だが、大昔と違って現在では、それだけでは利用するのに少々不便である。物を貯蔵しておくにしても、生活するにしても、風雨をしのげればそれだけで良しとすることはできない。やはり、物を貯蔵するなら空調設備くらいは必要であり、生活するには電気・ガス・水道などの設備がなければ困ることになる。

 そこで、建築物には建築設備があることが当然だということで、建築物には建築設備も含むものとして建築基準法の規制をかけようということになっているのである。

 「建築物に設ける」とあるように、これらの設備が単体で建築設備として扱われるわけではなく、建築物に固定されたもので、例えば、電気であれば電線、ガスや水道であればその配管などが建築設備であることに注意。


(4) 居室

居住、執務、作業、集会、娯楽その他これらに類する目的のために継続的に使用する室をいう。

 居室は、人が継続して利用するものだからこそ、その環境の保全・維持に注意を払わなければならない。

 住宅の中では、居間、寝室、台所などが、そして住宅以外では事務所の事務室、工場の作業場などが居室にあたる。「人が継続的に使用する」とは、特定の人が継続的に使用することだけでなく、不特定多数の人が入れ替わりで継続的に使用する場合も含まれる。

 これに対して便所や浴室などは、人が日々使用するものであっても、その使用の仕方が一時的なものに過ぎず、継続的ということはできないので居室には含まれないのである。


(5) 主要構造部

壁、柱、床、はり、屋根または階段をいう。
ただし、建築物の構造上重要でない間仕切壁、間柱、付け柱、揚げ床、最下階の床、回り舞台の床、小ばり、ひさし、局部的な小階段、屋外階段その他これらに類する建築物の部分を除く。

 「主要構造部」とは、防火上の観点に着目して建築物の構造を見た場合の用語である。

 「構造上重要でない」という表現がされているが、ここでいう「構造上」とは、防火上の観点から「重要」かどうかが判断されるのである。

 よって、室ごとの用途が異なる場合にその区画として用いる壁や、居室と避難廊下の間の間仕切壁など、構造耐力上は重要な部分ということはできない壁でも、防火上重要な構造部分であれば、それは主要構造部に含まれるのである。

(6) 構造耐力上主要な部分

基礎、基礎ぐい、壁、柱、小屋組、土台、斜材(筋かい、方づえ、火打材その他これらに類するものをいう)、床版、屋根版または横架材(はり、けたその他これらに類するものをいう)で、建築物の自重もしくは積載荷重、積雪荷重、風圧、土圧もしくは水圧または地震その他の震動もしくは衝撃を支えるものをいう。

 わが国は地震が多い上、地域によっては積雪や台風などの影響で建築物が倒壊することもあり得るため、建築物はそれらに耐えられるほど強くなければならない。また、建築物自体の重さ(自重)や、内部に持ち込まれる物品や人の重さ(積載荷重)にも耐えられる強度が要求される。建築基準法20条は、「建築物は、自重、積載荷重、積雪、風圧、土圧および水圧ならびに地震その他の震動および衝撃に対して」安全な構造でなければならないと定めている。これを受けて、構造耐力上主要な部分については、建築基準法施行令1条3項に定めがある。

 前述した「主要構造部」とは異なり、防火上の観点ではなく、さまざまな圧力や震動、衝撃を支えることに着目したものが「構造耐力上主要な部分」である。


Point4 「主要構造部」と「構造耐力上主要な部分」の範囲は異なる。


(7) 延焼のおそれのある部分

隣地境界線、道路中心線または同一敷地内の2以上の建築物(延べ面積の合計が500㎡以内の建築物は、1の建築物とみなす)相互の外壁間の中心線から、1階にあっては3m以下、2階以上にあっては5m以下の距離にある建築物の部分をいう。
ただし、次の①または②のいずれかに該当する部分を除く。
① 防火上有効な公園、広場、川その他の空地または水面、耐火構造の壁その他これらに類するものに面する部分
② 建築物の外壁面と隣地境界線等との角度に応じて、当該建築物の周囲において発生する通常の火災時における火熱により燃焼するおそれのないものとして国土交通大臣が定める部分




(8) 耐火構造

壁、柱、床その他の建築物の部分の構造のうち、耐火性能に関して政令で定める技術的基準に適合する鉄筋コンクリート造、れんが造その他の構造で、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものまたは国土交通大臣の認定を受けたものをいう。


Point5 耐火性能とは、通常の火災が終了するまでの間当該火災による建築物の倒壊および延焼を防止するために当該建築物の部分に必要とされる性能をいう。


【耐火性能に関する技術的基準】

① 次の表に掲げる建築物の部分にあっては、当該部分に通常の火災による火熱がそれぞれ次の表に掲げる時間(要求耐火時間)加えられた場合に、構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊その他の損傷を生じないものであること。


② 壁および床にあっては、これらに通常の火災による火熱が1時間加えられた場合に、当該加熱面以外の面(屋内に面するものに限る)の温度が当該面に接する可燃物が燃焼するおそれのある温度として国土交通大臣が定める温度(可燃物燃焼温度)以上に上昇しないものであること。

③ 外壁および屋根にあっては、これらに屋内において発生する通常の火災による火熱が1時間加えられた場合に、屋外に火炎を出す原因となるき裂その他の損傷を生じないものであること。

  

Point6 要求耐火時間は、30分間、1時間、2時間、3時間の4つである。


Point7 高層建築物の柱、はりの要求耐火時間は、低層階ほど長いものになっている。


(9) 準耐火構造

壁、柱、床その他の建築物の部分の構造のうち、準耐火性能に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものまたは国土交通大臣の認定を受けたものをいう。


Point8 準耐火性能とは、通常の火災による延焼を抑制するために当該建築物の部分に必要とされる性能をいう。

(10) 防火構造

建築物の外壁または軒裏の構造のうち、防火性能に関して政令で定める技術的基準に適合する鉄網モルタル塗、しっくい塗その他の構造で、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものまたは国土交通大臣の認定を受けたものをいう。


Point9 防火性能とは、建築物の周囲において発生する通常の火災による延焼を抑制するために当該外壁または軒裏に必要とされる性能をいう。


(11) 不燃材料

建築材料のうち、不燃性能に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めたものまたは国土交通大臣の認定を受けたものをいう。

 不燃性能とは、通常の火災時における火熱により燃焼しないことその他の政令で定める性能をいう。


(12) 耐火建築物

 次の基準に適合する建築物をいう。

① その主要構造部が耐火構造であること。
② その外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に、防火戸その他の政令で定める防火設備(その構造が遮炎性能に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものまたは国土交通大臣の認定を受けたものに限る)を有すること。


Point10 遮炎性能とは、通常の火災時における火炎を有効に遮るために防火設備に必要とされる性能をいう。


(13) 準耐火建築物

 耐火建築物以外の建築物で、次の基準に適合するものをいう。

① その主要構造部が準耐火構造であること。
② その外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に、耐火建築物と同様の防火設備を有すること。


(14) 設計図書

建築物、その敷地または一定の工作物に関する工事用の図面(現寸図その他これに類するものを除く)および仕様書をいう。


(15) 建築

建築物を新築し、増築し、改築し、または移転することをいう。


① 新築

 新築とは、何も建築されていない土地(更地)に、新しく建築物を作ること、つまり、建てることをいう。そのため、ある土地にあった建築物を取り壊して、その材料を使って別な土地(更地)に建築物を建てることも新築にあたる。④の移転との違いに注意が必要。


② 増築

 すでに建築物が存在している土地上で、その建築物を取り壊すことなく手を加えて、床面積を増加させる行為をいう。


③ 改築

 すでに建築物が存在している土地上で、その土地上の建築物の全部または一部を取り壊し、取り壊した建築物と規模、構造、用途がほぼ同様の建築物を建てることをいう。


④ 移転

 すでに建築物が存在している土地上で、すでに建っている建築物の所在場所・位置を変更することをいう。①の解説で述べたように、移転はあくまで「同一敷地内で」行うことが前提。すでにある建築物を別の土地に移設することは「新築」にあたるので、注意が必要である。


(16) 大規模の修繕

建築物の主要構造部の1種以上について行う過半の修繕をいう。

 修繕とは、経年劣化した建築物の部分について、既存のものとおおむね同じ位置に、おおむね同じ材料、形状、寸法のものを用いて原状回復することをいう。


(17) 大規模の模様替

建築物の主要構造部の1種以上について行う過半の模様替をいう。

 模様替えとは、建築物の構造、規模、機能の同一性を損なわない範囲で改造することをいう。模様替は、一般的に原状回復は目的とせず、性能の向上を図ることを目的とする。


(18) 敷地

1の建築物または用途上不可分の関係にある2以上の建築物のある一団の土地をいう。


(19) 地階

床が地盤面下にある階で、床面から地盤面までの高さがその階の天井の高さの3分の1以上のものをいう。



(20) 耐水材料

れんが、石、人造石、コンクリート、アスファルト、陶磁器、ガラスその他これらに類する耐水性の建築材料をいう。


(21) 特定行政庁

建築主事を置く市町村の区域については当該市町村の長をいい、その他の市町村の区域については都道府県知事をいう。



面積・高さ・階数の算定方法

 面積、高さおよび階数は、それぞれ次のように算定する。


(1) 敷地面積

 敷地の水平投影面積による。

 ただし、次の部分は、敷地面積に算入されない。

① 特定行政庁が指定する幅員4m未満の道路の中心線から水平距離で2m後退した線までの部分の敷地
② 水平距離2m未満でがけ地、川、線路敷地等に沿う道路のうち特定行政庁が指定する幅員4m未満の道路において、当該がけ地等の境界線から道の側に4mまでの部分の敷地


(2) 建築面積

 建築物の外壁またはこれに代わる柱の中心線で囲まれた部分の水平投影面積による。

 ただし、次の部分は、建築物の建築面積に算入されない。

① 地階で地盤面上1m以下にある部分
② 建築物の外壁またはこれに代わる柱の中心線から水平距離1m以上突き出た軒、ひさしなどの部分は、その先端から水平距離1m後退した線までの部分



(3) 床面積

 建築物の各階またはその一部で壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積による。


Point1 壁その他の区画の内側線ではない。


(4) 延べ面積

 建築物の各階の床面積の合計による。


(5) 建築物の高さ

 地盤面からの高さによる。

 ただし、次の部分は高さに算入されない。

① 階段室、昇降機塔、装飾塔、物見塔、屋窓その他これらに類する建築物の屋上部分の水平投影面積の合計が当該建築物の建築面積の8分の1以内の場合においては、その部分の高さのうち12mまでの部分
② 棟飾、防火壁の屋上突出部などの屋上突出物


Point2 上記①の階段室等の建築物の屋上部分の高さは、その部分の水平投影面積の合計が当該建築物の建築面積の8分の1以内の場合は、原則として、12mを限度として建築物の高さに算入しないが、避雷設備の設置基準である高さ(20m超)を算定するときは、建築物の高さに算入しなければならない


(6) 軒の高さ

 地盤面から建築物の小屋組またはこれに代わる横架材を支持する壁、敷桁(しきげた)または柱の上端までの高さによる。


(7) 階数

 昇降機塔、装飾塔、物見塔その他これらに類する建築物の屋上部分または地階の倉庫、機械室その他これらに類する建築物の部分で、水平投影面積の合計がそれぞれ当該建築物の建築面積の8分の1以下のものは、当該建築物の階数に算入しない。

 また、建築物の一部が吹抜きとなっている場合、建築物の敷地が斜面または段地である場合その他建築物の部分によって階数を異にする場合においては、これらの階数のうち最大なものによる。


(8) 地盤面

建築面積、建築物の高さまたは軒の高さを算定する際の「地盤面」とは、建築物が周囲の地面と接する位置の平均の高さにおける水平面をいい、その接する位置の高低差が3mを超える場合においては、その高低差3m以内ごとの平均の高さにおける水平面をいう。