- 適正化法ー4.滞納管理費等の回収
- 1.滞納の督促と消滅時効
- 滞納の督促と消滅時効
- Sec.1
1滞納の督促と消滅時効
区分所有法では、共用部分の管理費等は規約に別段の定めがない限り、各共有者のその持分に応じて負担することになっている。管理費等はマンションを維持・保全するための費用である。もし区分所有者が管理費等を滞納するような場合、どのような措置を講じなければならないのか等をここでは学習する。この分野からは、毎年2問程度出題されている。
■滞納の督促
管理費等の滞納があった場合、一般に、以下の手順で、区分所有者等に対して滞納管理費等の督促を行うことになる。
Point1 初めての滞納であっても、放置しておくと滞納が続くこともあるので、速やかに督促を行うべきである。
Point2 氏名の公表は、慎重に行うべきであるが、相当の期間を定めて履行の催告をした上で、制裁措置として管理費の滞納者の氏名を公表することは、滞納管理費を回収する上で有効な対策であるといえる。
Point3 玄関の鍵は専有部分であり、たとえ管理費の滞納者といえども、玄関の鍵を交換し、居室内に立ち入ることができないようにすることは、制裁措置としては不適切である。
■管理費等の支払義務者
(1) 管理費等の支払義務者
管理費等の支払義務者は区分所有者である。区分所有者に相続・合併などの包括承継が生じた場合は、包括承継人に管理費等の支払義務は承継される。
専有部分が賃貸された場合であっても、賃借人に管理費等の支払義務はない。
Point1 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。したがって、相続人は、当該マンションに居住しているか否かにかかわらず、管理費等の債務を承継する。
Point2 相続人は滞納管理費等の債務だけでなく、その遅延損害金債務も承継する。
Point3 債務者が死亡し、相続人が数人ある場合に、被相続人の金銭債務その他の可分債務は、法律上当然分割され、各共同相続人がその相続分に応じてこれを承継する。したがって、管理組合は、すべての相続人に対し、その法定相続分に応じて滞納管理費を請求することができる。
Point4 相続人が相続を放棄した場合は、相続人は滞納管理費等の債務を承継しない。
Point5 専有部分が賃貸された場合であっても、区分所有法上管理費等の支払義務があるのは区分所有者であって、賃借人ではない。賃貸借契約の際に「管理費等の支払は賃借人が行う」旨の特約があっても、この特約は当事者しか拘束せず、管理組合は拘束されないため、賃借人による管理費等の滞納があった場合、管理組合は区分所有者である賃貸人に対して滞納管理費等の支払いを求める訴えを提起しなければならず、賃借人に対して訴えを提起することはできない。
(2) 特定承継人の支払義務
マンションの専有部分の売却・贈与・競売等が行われた場合、滞納管理費等の債権は、特定承継人(買主・受贈者・競売によって区分所有権を買い受けた者等)にも行使することができる。つまり、特定承継人も滞納管理費等の支払債務を承継する。
なお、この場合も、前区分所有者(売主・贈与者等)が滞納管理費等の支払債務を免れるわけではない。
Point1 マンションが競売された場合、競売によって区分所有権を買い受けた者は特定承継人にあたるため、管理組合は買受人に対して、滞納管理費を請求することができる。
Point2 滞納管理費等の債権は、「特定承継人にも」行使することが「できる」ということなので、管理組合は、前区分所有者にも滞納管理費の請求をすることができる。売買契約の際に「買主が滞納管理費等を負担する」旨の特約があっても、この特約は当事者しか拘束せず、管理組合は拘束されないため、管理組合は売主に対しても滞納管理費等を請求することができる。
Point3 特定承継人は、前区分所有者による滞納の事実を知らず、知らなかったことについて過失がないとき(善意無過失)であっても、滞納管理費等の支払義務を免れることはできない。