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  • マンション管理業者の業務に関する規制
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1マンション管理業者の業務に関する規制

堀川 寿和2021/12/13 15:04

重要事項の説明等

  マンション管理業者は管理受託契約を締結または更新しようとするときは、あらかじめ、マンションの管理組合に重要事項を説明しなければならない。これは、管理組合がマンション管理業者に管理事務を委託しようする際に、その契約の範囲や内容を十分理解したうえで契約を締結できるようにするためである。


Point 管理受託契約とは、管理業者が管理組合から管理の委託を受けることを内容とする契約のことをいう。


(1) 重要事項の説明義務(新規に契約する場合)

① 重要事項の説明義務

イ)原則

 マンション管理業者は、管理組合との間で管理受託契約を締結しようとするときは、あらかじめ、説明会を開催し、その管理組合を構成するマンションの区分所有者等および管理組合の管理者等に対し、管理業務主任者をして、重要事項(管理受託契約の内容およびその履行に関する事項であって国土交通省令で定めるもの)について説明をさせなければならない。


Point1 「あらかじめ」とは、管理組合において管理委託契約の締結の意思決定をするまで、つまり、管理組合の総会(集会)で、管理委託契約の締結に関する議案の採決を行う前までということである。議案の採決後に重要事項説明を行っても、法律上の義務を果たしたことにはならない。


Point2 管理受託契約を締結しようとするマンション管理業者が管理者等に選任されている場合であっても、説明会を開催し、区分所有者等に対して重要事項説明をしなければならない。


ロ)例外(重要事項説明が不要な場合)

 新たに建設されたマンションの分譲に通常要すると見込まれる期間その他の管理組合を構成するマンションの区分所有者等が変動することが見込まれる期間として国土交通省令で定める期間中に契約期間が満了する管理受託契約を締結しようとする場合は、重要事項について説明する必要はない。新規に分譲を開始した段階では、管理組合が実質的に機能していないからである。

 なお、この国土交通省令で定める期間は、次の期間である。



国土交通省令で定める期間
1新たに建設されたマンションを分譲した場合当該マンションの人の居住の用に供する独立部分の引渡しの日のうち最も早い日から1年
2既存のマンションの区分所有権の全部を1または複数の者が買い取り、当該マンションを分譲した場合当該買取り後における当該マンションの人の居住の用に供する独立部分の引渡しの日のうち最も早い日から1年

② 重要事項の説明方法

 重要事項の説明は、重要事項説明書を交付して、説明会を開催して行わなければならない。


イ)重要事項説明書(72条書面)の交付

 マンション管理業者は、説明会の日の1週間前までに、管理組合を構成するマンションの区分所有者等および管理組合の管理者等の全員に対し、重要事項ならびに説明会の日時および場所を記載した書面を交付しなければならない。


ロ)説明会の開催

 説明会は、できる限り説明会に参加する者の参集の便を考慮して開催の日時および場所を定め、管理事務の委託を受けた管理組合ごとに開催しなければならない。

 マンション管理業者は、説明会の開催日の1週間前までに説明会の開催の日時および場所について、マンションの区分所有者等および管理者等の見やすい場所に掲示しなければならない。


(2) 重要事項の説明義務(更新の場合)

① 従前の管理受託契約と同一の条件で更新する場合

イ)管理者等が置かれている場合

 マンション管理業者は、あらかじめ、その管理組合を構成するマンションの区分所有者等全員に対し、重要事項を記載した書面を交付しなければならない。そして、マンション管理業者は、その管理組合の管理者等に対し、管理業務主任者をして、重要事項について、これを記載した書面を交付して説明をさせなければならない。

 ただし、この説明は、認定管理者等から重要事項について説明を要しない旨の意思の表明があったときは、マンション管理業者による当該認定管理者等に対する重要事項を記載した書面の交付をもって、これに代えることができる。



ロ)管理者等が置かれていない場合

 管理者が置かれている場合と同様に、マンション管理業者は、あらかじめ、その管理組合を構成するマンションの区分所有者等全員に対し、重要事項を記載した書面を交付しなければならない。しかし、これについて、管理業務主任者をして、説明をさせる必要はない。


Point1 従前と同一の条件で更新をする場合、管理者等が置かれているときは、区分所有者等全員に重要事項説明書を交付したうえで、管理者等に対して、重要事項説明書を交付して重要事項説明をしなければならないが、管理者等が置かれていないときは、区分所有者等全員に重要事項説明書を交付するだけでよい。なお、管理者等が置かれていてもいなくても、説明会の開催は不要である。


Point2 この場合の「同一の条件」には、管理組合に不利益をもたらさない契約内容の変更(軽微な変更)を含む。したがって、契約内容の軽微な変更の場合も説明会の開催は不要となる。契約内容の軽微な変更の具体例は次の通り。

① マンション管理業者の商号または名称、登録年月日および登録番号の変更
② 従前の管理受託契約と管理事務の内容および実施方法を同一とし、管理事務に要する費用の額を減額しようとする場合
③ 従前の管理受託契約に比して管理事務の内容および実施方法の範囲を拡大し、管理事務に要する費用の額を同一としまたは減額しようとする場合
④ 従前の管理受託契約に比して管理事務に要する費用の支払いの時期を後に変更しようとする場合(前払いを当月払いもしくは後払い、または当月払いを後払い)
⑤ 従前の管理受託契約に比して更新後の契約期間を短縮しようとする場合
⑥ 管理事務の対象となるマンションの所在地の名称が変更される場合


② 従前の管理受託契約と契約条件を変更して更新する場合

新規に契約する場合と同様である。つまり、説明会を開催して行わなければならない。

(3) 重要事項

次の事項を重要事項として説明しなければならない。

① マンション管理業者の商号または名称、住所、登録番号および登録年月日
② 管理事務の対象となるマンションの所在地に関する事項
③ 管理事務の対象となるマンションの部分に関する事項
④ 管理事務の内容および実施方法(財産の分別管理の方法を含む)
⑤ 管理事務に要する費用ならびにその支払いの時期および方法
⑥ 管理事務の一部の再委託に関する事項
⑦ 保証契約に関する事項
⑧ 免責に関する事項
⑨ 契約期間に関する事項
⑩ 契約の更新に関する事項
⑪ 契約の解除に関する事項


(4) 管理業務主任者証の提示

 管理業務主任者は、重要事項の説明をするときは、説明の相手方に対し、管理業務主任者証を提示しなければならない。


Point 重要事項の説明をする際は、相手方から請求されなくても、管理業務主任者証を提示しなければならない


(5) 重要事項説明書への記名

 マンション管理業者は、重要事項説明書を作成するときは、管理業務主任者をして、当該書面に記名させなければならない。


Point1 重要事項の説明や重要事項説明書への記名は、専任の管理業務主任者でなくてもすることができる。


Point2 重要事項説明書に「記名」されるべき管理業務主任者は、原則として、重要事項について十分に調査検討し、それらの事項が真実に合致し誤りおよび記載漏れがないかどうか等を確認した者であって、実際に当該重要事項説明書をもって重要事項説明を行う者である。


Point3 重要事項説明書の作成は、管理業務主任者でない者であっても、することができる。


(6) 情報通信の技術を利用する方法による重要事項の提供

 マンション管理業者は、重要事項を記載した書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、当該管理組合を構成するマンションの区分所有者等または当該管理組合の管理者等の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって管理業務主任者の記名に代わる措置を講ずるものとして国土交通省令で定めるものにより提供することができる。


契約の成立時の書面の交付

(1) 書面の交付

 マンション管理業者は、管理組合から管理事務の委託を受けることを内容とする契約を締結したときは、当該管理組合の管理者等に対し、遅滞なく、所定の事項を記載した「契約の成立時の書面」を交付しなければならない。


Point1 マンション管理業者がその管理組合の管理者等である場合またはその管理組合に管理者等が置かれていない場合は、その管理組合を構成するマンションの区分所有者等全員に対して、「契約の成立時の書面」を交付しなければならない。


管理者等が置かれている場合管理者が置かれていない場合
交付の相手方①管理者等
②管理業者が管理者等である場合は、区分所有者等全員
区分所有者全員

Point2 新築マンションの人の居住の用に供する独立部分の引渡しの日のうち最も早い日から1年以内に契約期間が満了する管理受託契約を締結する場合、重要事項の説明義務はないが、契約の成立時の書面は交付しなければならない


(2) 書面の記載事項

① 管理事務の対象となるマンションの部分
② 管理事務の内容および実施方法(財産の分別管理の方法を含む)
③ 管理事務に要する費用ならびにその支払の時期および方法
④ 管理事務の一部の再委託に関する定めがあるときは、その内容
⑤ 契約期間に関する事項
⑥ 契約の更新に関する定めがあるときは、その内容
⑦ 契約の解除に関する定めがあるときは、その内容
⑧ その他国土交通省令で定める事項

Point 「その他国土交通省令で定める事項」としては、「免責に関する事項」などがある。


(3) 書面への記名

 マンション管理業者は、契約の成立時に交付すべき書面を作成するときは、管理業務主任者をして、その書面に記名させなければならない。


(4) 情報通信の技術を利用する方法による契約成立時の書面に記載すべき事項の提供

 マンション管理業者は、契約成立時の書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、当該管理組合の管理者等または当該管理組合を構成するマンションの区分所有者等の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって管理業務主任者の記名に代わる措置を講ずるものとして国土交通省令で定めるものにより提供することができる。


管理事務の報告

(1) 管理者等が置かれている場合

 マンション管理業者は、定期に、管理者等に対し、管理業務主任者をして、管理事務に関する報告をさせなければならない。


① 管理事務の報告

 マンション管理業者は、この管理事務に関する報告を行うときは、管理事務を委託した管理組合の事業年度の終了後、遅滞なく、当該期間における管理受託契約に係るマンションの管理の状況について、所定の事項を記載した管理事務報告書を作成し、管理業務主任者をして、これを管理者等に交付して説明をさせなければならない。


② 管理事務報告書の記載事項

 管理事務報告書には、次の事項を記載しなければならない。

① 報告の対象となる期間
② 管理組合の会計の収入および支出の状況
③ その他管理受託契約の内容に関する事項


Point1 毎月、「会計の収入および支出の状況に関する書面」を作成し、管理者等に交付していたとしても、「会計の収入および支出の状況」(記載事項②)について管理事務の報告を省略することはできない。


Point2 管理事務の報告は、専任の管理業務主任者でなくてもすることができる(管理者等が置かれていない場合も同様)。


Point3 管理事務報告書には、管理業務主任者をして記名させる必要はない(管理者等が置かれていない場合も同様)。


(2) 管理者等が置かれていない場合

 マンション管理業者は、定期に、説明会を開催し、その管理組合を構成するマンションの区分所有者等に対し、管理業務主任者をして、管理事務に関する報告をさせなければならない。


① 管理事務の報告

 マンション管理業者は、この管理事務に関する報告を行うときは、管理事務を委託した管理組合の事業年度の終了後、遅滞なく、当該期間における管理受託契約に係るマンションの管理の状況について、所定の事項を記載した管理事務報告書を作成し、説明会を開催し、管理業務主任者をして、これをその管理組合を構成するマンションの区分所有者等に交付して説明をさせなければならない。


② 説明会の開催

 説明会は、できる限り説明会に参加する者の参集の便を考慮して開催の日時および場所を定め、管理事務の委託を受けた管理組合ごとに開催するものとする。

 マンション管理業者は、説明会の開催日の1週間前までに説明会の開催の日時および場所について、その管理組合を構成するマンションの区分所有者等の見やすい場所に掲示しなければならない。 


Point 管理者等が置かれていない場合には、必ず説明会を開催しなければならない。「管理事務報告書」を作成して区分所有者等に閲覧させたとしても、説明会の開催に代えることはできない。それに対して、管理者等が置かれている場合は、説明会を開催する必要はない。




管理者等が置かれている場合管理者が置かれていない場合
管理事務の報告の方法および相手方管理者等に対し、管理事務報告書を交付して、管理業務主任者が(対面で)説明する。この場合、説明会は不要となる。
※区分所有者等には不要
区分所有者等に対し、説明会を開催し、管理事務報告書を交付して、管理業務主任者が報告する。



(3) 管理業務主任者証の提示

 管理業務主任者は、管理事務を報告するときは、管理業務主任者証を説明の相手方に対し、提示しなければならない。


Point 管理事務を報告する際は、相手方から請求されなくても、管理業務主任者証を提示しなければならない。


(4) 電磁的方法による管理事務報告書に記載すべき事項の提供

 マンション管理業者は、管理事務報告書の交付に代えて、当該管理事務報告書を交付すべき管理者等または管理組合を構成するマンションの区分所有者等の承諾を得て、当該管理事務報告書に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。