• 民法ー12.区分所有法④(団地)
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  • Sec.1

1団地

堀川 寿和2021/12/13 11:16

団地

 団地とは、一団地内に数棟の建物があり、かつ、その団地内の土地(敷地・通路など)または附属施設(集会所など)がそれらの建物の所有者の共有になっている場合をいう。この建物の所有者(区分所有建物では区分所有者)のことを「団地建物所有者」という。


Point 団地内の建物は、区分所有建物以外の建物(一戸建ての建物や賃貸マンション)であってもよい。したがって、団地内の建物がすべて一戸建ての建物であっても、団地は成立する。また、区分所有建物と一戸建てなどの区分所有建物以外の建物が混在していてもよい。


以下のケースにおいて、団地関係が成立する。






(1)団地建物所有者の団体(団地管理組合)

 団地建物所有者は全員で、その団地内の土地、附属施設および専有部分のある建物の管理を行うための団体(団地管理組合)を構成する。そして、集会(団地集会)を開き、規約(団地規約)を定め、管理者を置くことができる。


Point 上記の団体は、区分所有法では「団地建物所有者の団体」と呼んでおり、一般には「団地管理組合」と呼ばれる。また、法人化されたものは「団地管理組合法人」と呼ぶ。なお、団地内に区分所有建物が存在する場合に、団地管理組合が成立しても、その区分所有建物の棟ごとの管理組合も存続する。



(2) 団地共用部分

 一団地内の附属施設たる建物(区分所有建物の専有部分とすることができる建物の部分を含む)は、団地規約によって「団地共用部分」とすることができる。そして、団地共用部分であることを第三者に対抗するためには、団地共用部分である旨の登記をしなければならない。


Point1 団地共用部分は、団地建物所有者全員の共有に属する。


Point2 団地共用部分についての団地建物所有者の持分は、その有する建物または専有部分の床面積の割合による。なお、団地規約で別段の定めをすることができる。


Point3 一団地内の土地は団地共用部分にはならない。


(3) 団地管理組合の管理の対象

 団地建物所有者全員の共有に属する土地または附属施設は、当然に団地管理組合の管理の対象になる。

 次のものについては、団地規約に定めることで、団地管理組合が管理をすることができる。

① 一団地内の土地または附属施設が当該団地内の一部の建物の所有者(専有部分のある建物にあっては、区分所有者)の共有に属する場合における当該土地または附属施設(ただし、専有部分のある建物以外の建物の所有者のみの共有に属するものを除く)
② 当該団地内の専有部分のある建物(各棟の共用部分など)


Point 団地管理組合の管理の対象とならないもの

①専有部分のある建物以外の建物の所有者(戸建て建物等の所有者)のみの共有に属するもの。

② 専有部分のある建物以外のもの(一戸建ての建物や賃貸マンションなど)


(4) 団地内の建物の建替え承認決議

 共有土地上の建物を建て替える場合、この建替えは共有物の変更にあたるので、本来であれば、土地の共有者全員の同意が必要になる。しかし、団地内の建物の建替えについて全員の同意を必要とすると、ほぼ建物の建替が不可能になってしまう。そこで、一定の場合に、特別決議(議決権の4分の3以上の賛成)があれば建替えを認めようというのが、この「団地内の建物の建替え承認決議」である。

 一団地内にある数棟の建物の全部または一部が専有部分のある建物であり、かつ、その団地内の建替える建物(特定建物)が所在する土地が団地建物所有者の共有に属す場合においては、団地建物所有者は、建替え承認決議に基づき、建替えをすることができる。




Point1 当該特定建物が専有部分のある建物である場合は、その建物について、建替え決議またはその区分所有者の全員の同意があることが必要である。これに加えて、団地内の建物の建替え承認決議が必要ということである。


Point2 建替え承認決議をするためには、団地建物所有者で構成される団地管理組合の集会において、議決権の4分の3以上の賛成が必要となる。頭数は不要。この場合の議決権は特定建物が所在する土地の持分の割合による。


Point3 建替え承認決議に係る建替えが当該特定建物以外の建物(当該他の建物)の建替えに特別の影響を及ぼすべきときは、当該他の建物の種類に応じて①または②の者が当該建替え承認決議に賛成しているときに限り、当該特定建物の建替えをすることができる。

① 当該他の建物が専有部分のある建物である場合
→ 当該他の建物の区分所有者全員の議決権の4分の3以上の議決権を有する区分所有者
② 当該他の建物が専有部分のある建物以外の建物である場合
→ 当該他の建物の所有者

 これは、建替え承認決議とは別に、あらためて決議や承諾を要求するものではない。



Point1 建替え承認決議を会議の目的とする集会を召集するときは、集会の召集通知は、集会の会日より少なくとも2月前に発しなければならない。この期間は団地規約で伸長することができる。


Point2 上記の集会の通知は、議案の要領のほか、新たに建築する建物の設計の概要も示して発しなければならない。

(5) 団地内の建物の一括建替え決議

 複数の区分所有建物を建て替える場合、本来であれば、各棟の集会において建替え決議(区分所有者および議決権の各5分の4以上の賛成)が必要になる。団地内の建物を一括して建替えをしようとしても、一棟でも建替え決議が成立しないと、一括建替えは不可能になる。そこで、一定の場合に、団地内にある複数の区分所有建物を一括して建替えるときは、各棟の集会でそれぞれ建替え決議をせずに、団地集会で特別決議(区分所有者および議決権の各5分の4以上の賛成)が成立すれば、建替えを認めようというのが、「団地内の建物の一括建替え決議」である。

 一団地内の数棟の建物の全部が専有部分のある建物であり、かつ、その敷地が団地建物所有者の共有に属する場合において、団地内建物について、これを管理するための団地全体の規約(団地規約)が定められている(つまり、団地内建物を団地管理組合が管理している)ときは、建替え決議の規定にかかわらず、団地内建物の区分所有者で構成される団地管理組合の集会において、一括建替え決議をすることができる。

 団地内建物の全部または一部が区分所有建物以外の建物である場合には、一括建替え決議に基づく、一括建替えは、認められない。



Point1 団地内建物の全部が区分所有建物であること、戸建の建物を含む団地関係が成立しているときは、一括建替え決議はできない。


Point2 敷地が団地内建物の区分所有者の共有に属している必要がある。


Point3 各棟の管理を団地管理組合で行う旨の団地管理規約が定められている必要がある。


Point4 一括建替え決議は、団地管理組合の集会において、当該団地内建物の区分所有者および議決権の各5分の4以上の多数ですることができる。なお、当該各団地内建物ごとに、それぞれその区分所有者の3分の2以上の者であって議決権の合計の3分の2以上の議決権を有するものがその一括建替え決議に賛成した場合でなければならない。これは、各棟ごとに、あらためて決議が必要ということではなく、一括建替え決議において各棟ごとに一定の賛成者が必要ということである。 




Point5 大規模滅失の場合だけでなく、小規模滅失の場合も一括建替え決議をすることができる


Point6 一括建替え決議はあるが、一括復旧決議という制度はない


Point7 一括建替え決議の場合も、建替え決議の場合と同様に、区分所有権の売渡請求の制度がある


Point8 一括建替え決議においては、次の事項を定めなければならない。

① 再建団地内敷地の一体的な利用についての計画の概要
② 新たに建築する建物(再建団地内建物)の設計の概要
③ 団地内建物の全部の取壊しおよび再建団地内建物の建築に要する費用の概算額
④ ③の費用の分担に関する事項
⑤ 再建団地内建物の区分所有権の帰属に関する事項

Point9 招集の通知をするときは、議案の要領のほか、次の事項をも通知しなければならない。

① 建替えを必要とする理由
② 建物の建替えをしないとした場合における当該建物の効用の維持または回復(建物が通常有すべき効用の確保を含む)をするのに要する費用の額およびその内訳
③ 建物の修繕に関する計画が定められているときは、当該計画の内容
④ 建物につき修繕積立金として積み立てられている金額

(原則として建替え決議の場合と同じ)




罰則

 区分所有法には、20万円以下の過料と10万円以下の過料の2種類が定められている。


(1) 20万円以下の過料

 管理者、理事、規約を保管する者、議長または清算人が以下の行為をおこなったとき。


① 規約・集会の議事録・書面決議の書面(電磁的記録)の保管をしなかったとき
② 規約・集会の議事録・書面決議の書面(電磁的記録)の閲覧を拒んだとき
③ 集会の議事録を作成せず、または議事録に記載・記録すべき事項を記載・記録せず、もしくは虚偽の記載・記録をしたとき
④ 管理者が集会において事務に関する報告をせず、または虚偽の報告をしたとき
⑤ 管理組合法人が法人登記を怠ったとき
⑥ 管理組合法人の財産目録を作成しなかった、または財産目録に不正の記載・記録をしたとき
⑦ 管理組合法人の理事・監事が欠けた場合、または規約で定めたその員数が欠けた場合に、その選任手続を怠ったとき
⑧ 清算中の管理組合法人について、債権の申出または破産手続き開始の申立ての公告を怠り、または不正の公告をしたとき
⑨ 清算中の管理組合法人の清算人が破産手続開始の申立てを怠ったとき
⑩ 裁判所による管理組合法人の解散・清算の監督に必要な検査を妨害したとき


Point1 規約の保管場所を掲示すべき義務に違反しても罰則規定はない。


Point2 法人ではない管理組合の清算人が破産手続開始の申立てを怠っても、過料は課されない。


(2) 10万円以下の過料

 管理組合法人でないものが、その名称中に管理組合法人という文字を用いたとき。