- 民法ー10.区分所有法②(管理組合の運営)
- 1.管理組合
- 管理組合
- Sec.1
1管理組合
■管理組合
(1) 区分所有者の団体(管理組合)
区分所有者は、全員で、建物ならびにその敷地および附属施設の管理を行うための団体を構成する。そして、この団体では、区分所有法に定めるところにより、集会を開き、規約を定め、および管理者を置くことができる。この団体のことを区分所有法では「区分所有者の団体」(第3条に規定する団体)と呼んでいるが、一般に「管理組合」と呼ばれる
一部共用部分を、一部区分所有者が管理するときも、上記と同様の取扱いとなる(一部区分所者全員で、団体を構成する)。なお、この団体は、上記の団体と併存する。したがって、たとえば一棟の区分所有建物が下層階と上層階で用途が分かれているような場合に、棟の管理組合が成立し、加えて下層階の管理組合と上層階の管理組合とが成立する場合がある。
Point1 区分所有者の団体(管理組合)は、区分所有建物が存在すれば、法律上当然に構成されるものであり、区分所有者の合意によって設立されるものではない。
Point2 区分所有者は、加入の意思の有無を問わず、法律上当然に管理組合の構成員となる(任意に脱退することもできない)。
Point3 専有部分の賃借人などの占有者は、管理組合の構成員とはならない。
Point4 管理組合の管理の対象とされる附属施設とは、建物の附属物および附属の建物のことである。
(2) 管理者
① 管理者
管理組合には、区分所有法の定めるところにより、管理者を置くことができる。管理者には、区分所有者を代理して、共用部分等の保存など一定の行為をする権限があり、一般的には「理事」や「理事長」とよばれている者が管理者であることが多い(「理事」や「理事長」以外の者を管理者とすることもできる)。
Point1 管理組合に管理者を置くかどうかは、区分所有者の任意であって、義務ではない。
Point2 管理者の資格については特に規定はない。したがって、区分所有者以外の第三者を管理者とすることもできる。また、個人(自然人)・法人を問わないため、株式会社のマンション管理業者などを管理者に選任することもできる。さらに、員数(人数)および任期についても制限がない。
② 管理者の選任・解任
区分所有者は、規約に別段の定めがない限り集会の決議(区分所有者および議決権の各過半数)によって、管理者を選任し、または解任することができる。この決議に対して選任された者が管理者の就任を承諾することによって管理者となる。
管理者が選任されたた場合の区分所有者と管理者との関係は、委任契約における委任者と受任者の関係と同様に扱われる。したがって、管理者の権利義務は、区分所有法および規約に定めるもののほか、委任に関する規定に従うことになる。
Point1 管理者の選任および解任の決し方については、規約で別段の定めをすることができる。
規約による管理者の選任方法
① 規約で特定の者を管理者に選任する。 ② 規約で管理者の選任方法を指定する。 (例: 各区分所有者が持ち回りで管理者となる等) |
Point2 規約に「○○を管理者とする」と定めた場合には、集会の普通決議(区分所有者および議決権の各過半数)で解任することはできない。この場合は、規約の変更にあたるので区分所有者および議決権の各4分の3以上の多数決による必要がある。
Point3 管理者の解任には、集会の特別決議(区分所有者および議決権の各4分の3以上など)を要する旨の規約の定めも有効である。
Point4 管理者に不正な行為その他その職務を行うに適しない事情があるときは、各区分所有者はその解任を裁判所に請求することができる。この解任請求権については、規約で別段の定めをすることはできないので、規約によって、区分所有者から解任請求権を奪ったり、解任請求できる場合を制限したりすることはできない。
③ 管理者の権限
イ)管理者の職務
管理者は、次の行為をする権利を有し、義務を負う。
ⅰ)共用部分等(共用部分ならびに建物の敷地および附属施設)を保存すること
ⅱ)集会の決議を実行すること ⅲ)規約で定めた行為をすること |
Point 管理者が共用部分等の保存行為を行うのに、集会の決議は不要である。
ロ)管理者の代理権
管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。
損害保険契約に基づく保険金額ならびに共用部分等について生じた損害賠償金および不当利得による返還金の請求および受領についても、区分所有者を代理する。
Point1 管理者が行った職務の範囲内の行為の効力は、本人である区分所有者に対して生じる。
Point2 管理者の代理権に制限を加えることはできる。ただし、管理者の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
Point3 共用部分ならびに建物の敷地および附属施設につき損害保険契約を締結することは、共用部分の管理に関する事項とみなされるため、規約に別段の定めがある場合を除き、集会の決議が必要となる。したがって、管理者が自己の判断ですることはできない。それに対して、その損害保険契約に基づく保険金額の請求および受領については、集会の決議を要しない。
ハ)管理者の訴訟追行権
管理者は、規約または集会の決議により、その職務に関し、区分所有者のために、原告または被告となることができる。
管理者は、規約により原告または被告となったときは、遅滞なく、区分所有者に、その旨を通知しなければならない。
Point1 訴訟追行権は管理者に選任されることによって当然に生じるものではなく、必ず規約の定めまたは集会の決議が必要となる。
Point2 管理者による訴訟追行の結果、その判決の効力は区分所有者全員に及ぶ。管理者の訴訟追行は、区分所有者の代理人として行うものではなく、区分所有者のために管理者自身の名において行うことになる。
ニ)管理者による管理所有
管理者は、規約に特別の定めがあるときは、共用部分を所有することができる。
Point 管理者が共用部分を所有するには、規約に特別の定めをする必要がある。
(3) 先取特権
① 先取特権
区分所有者は、次のイ)またはロ)の債権について、債務者の区分所有権(共用部分に関する権利および敷地利用権を含む)および建物に備え付けた動産の上に先取特権を有する。
イ)共用部分、建物の敷地または共用部分以外の建物の附属施設につき他の区分所有者に対して有する債権
ロ)規約または集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権 |
管理者または管理組合法人も、その職務または業務を行うにつき区分所有者に対して有する債権について、債務者の区分所有権(共用部分に関する権利および敷地利用権を含む)および建物に備え付けた動産の上に先取特権を有する。
Point1 先取特権は、「優先権の順位」および「効力」については、共益費用の先取特権(一般の先取特権)とみなされる。
Point2 先取特権者は、まず不動産以外の財産から弁済を受け、なお不足があるのでなければ、不動産から弁済を受けることができない。
Point3 先取特権は、不動産について登記をしなくても、特別担保を有しない債権者に対抗することができる。したがって、登記のない先取特権者は、登記を備えた抵当権者に対しては、先取特権を対抗することができない。
Point4 先取特権には、即時取得の規定が準用される。したがって、たとえば、債務者Yが第三者Zから借りている動産を、債権者XがYの所有物と誤信し、かつ、誤信したことに過失がなかったときは、Xはその動産の上に区分所有法に規定される先取特権を取得する。
② 特定承継人の責任
上記の先取特権によって担保される債権は、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行使することができる。
Point1 特定承継人とは、売買契約の買主などである。したがって、専有部分の前の所有者が管理費等を滞納していれば、その買主にも、前の所有者の滞納管理費の支払債務が発生するということである。
Point2 特定承継人に対して「も」行使することができるということなので、債務者たる前の区分所有者の債務も存続する。
Point3 特定承継人は、債務の存在につき善意無過失であっても、債務を負うことになる。
Point4 先取特権の効力も、当然に特定承継人に及ぶ。
Point5 転売目的で区分所有権を取得した者も特定承継人に該当する。
Point6 特定承継人に承継されるのは、区分所有者・管理者・管理組合法人が有する債権である。
(4) 建物の設置または保存の瑕疵に関する推定
建物の設置または保存に瑕疵があることにより他人に損害を生じたときは、その瑕疵は、共用部分の設置または保存にあるものと推定される。
Point 建物の設置または保存に瑕疵があることにより他人に損害を生じたときは、原則として区分所有者全員(管理組合)が損害賠償責任を負うことになる。
しかし、専有部分の設置または保存の瑕疵であることが証明されたときは、管理組合は責任を負わず、当該専有部分の区分所有者が損害賠償責任を負う。
(5) 管理組合法人の成立等
法人とは、自然人以外の者で権利能力を有するものである。したがって、法人は法人名義で権利を有し、義務を負うことができる(不動産登記をすることもできる)。
法人は、民法その他の法律の規定によらなければ、成立しないが、管理組合法人は区分所有法の規定により成立する。
① 管理組合法人の成立
区分所有者の団体(一部管理組合を含む)は、次のイ)およびロ)の手続をとることによって法人となる。
イ)区分所有者および議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議で法人となる旨ならびにその名称および事務所を定めること
ロ)その主たる事務所の所在地において登記をすること |
Point1 管理組合法人の成立に、定款の作成・規約の作成などは不要。これに対して、一般社団法人は、その主たる事務所の所在地において設立の登記をすることによって成立するが、定款の作成が必要になる。
Point2 法人となるのに、区分所有者の数に関する要件はない。
Point3 管理組合法人は社団法人(人の集団)である。財団法人(財産の集合体)ではない。
② 設立の登記
管理組合法人に関しては、次の事項を登記しなければならない。
イ)目的および業務
ロ)名称 ハ)事務所の所在場所 ニ)代表権を有する者(理事)の氏名、住所および資格 ホ)存続期間または解散の事由を定めたときは、その期間または事由 ヘ)共同代表の定めがあるときは、その定め |
Point1 代表権のない理事や監事は登記事項ではない。
Point2 管理組合法人に関して登記すべき事項は、登記した後でなければ、第三者に対抗することができない。
Point3 管理組合法人の住所は、その主たる事務所の所在地にあるものとされる。
③ 名称の使用制限
管理組合法人は、その名称中に「管理組合法人」という文字を用いなればならない。
管理組合法人でないものは、その名称中に「管理組合法人」という文字を用いてはならない。
④ 財産目録・区分所有者名簿
管理組合法人は、設立の時および毎年1月から3月までの間に財産目録を作成し、常にこれをその主たる事務所に備え置かなければならない。ただし、特に事業年度を設けるものは、設立の時および毎事業年度の終了の時に財産目録を作成しなければならない。
管理組合法人は、区分所有者名簿を備え置き、区分所有者の変更があるごとに必要な変更を加えなければならない。
⑤ 管理組合法人の成立前の集会の決議等の効力
管理組合法人の成立前の集会の決議、規約および管理者の職務の範囲内の行為は、管理組合法人につき効力を生ずる(管理組合法人が承継する)。
⑥管理組合法人の職務権限
イ)管理組合法人の代理権
管理組合法人は、その事務の範囲内の行為について、区分所有者を代理する。
損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金および不当利得による返還金の請求および受領についても区分所有者を代理する。
Point1 管理組合法人(代理人)の行った行為の効力は、区分所有者(本人)に対して生じる。
Point2 規約で別段の定めをしても、管理組合法人以外の者(管理組合法人の理事など)を区分所有者の代理人とすることはできない。
Point3 管理組合法人の代理権に制限を加えることができる。ただし、管理組合法人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない
ロ)管理組合法人の訴訟追行権
管理組合法人は、規約または集会の決議により、その職務に関し、区分所有者のために、原告または被告となることができる。
規約により原告・被告となったときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。
Point 区分所有者のために原告または被告になるのは管理組合法人である。管理組合法人の理事ではない。
⑦理事
イ)理事の設置義務
管理組合法人には、必ず理事を置かなければならない。理事の人数に制限はない。区分所有者以外の者を理事に選任することもできるが、管理者と違い、法人を理事とすることはできない。
Point1 理事は自然人でなければならないが、区分所有者以外の第三者を選任することができる。
Point2 管理者の規定は管理組合法人には適用されない。したがって、管理組合法人に管理者を置くことはできない。管理組合が法人化される前に、管理者がいた場合は、法人化によって管理者は自動的に退任したことになる。
ロ)事務の決定方法
理事が数人ある場合、管理組合法人の事務は、理事の過半数で決する。これについては、規約で別段の定めをすることができる(理事会で意思決定を行うなど)。
ハ)理事の代表権
理事は、管理組合法人を代表するとともに、その業務を執行する権限と責任を負う。
Point1 理事は、管理組合法人を代表する。「代表する」とは、理事がその職務の権限内でした行為がそのまま管理組合法人の行為として扱われるということである。
Point2 理事が数人あるときは、各自管理組合法人を代表する。
Point3 理事が数人あるときは、「規約」または「集会の決議」によって、管理組合法人を代表する理事(代表理事)を定めることができる。この場合は、代表権のない理事も置かれることになる。なお、代表理事は区分所有者である必要はなく、1名である必要もない。
Point4 理事が数人あるときは、「規約」または「集会の決議」によって、数人の理事が共同して管理組合法人を代表すること(共同代表)を定めることができる。
Point5 理事が数人あるときは、「規約」に基づき、理事の互選によって管理組合法人を代表する理事を定めることができる。
Point6 理事の代表権に制限を加えることはできるが、理事の代表権に加えた制限は、善意の第三者には対抗することができない。「理事の代表権に加えた制限とは」、例えば100万円以上の取引行為については、集会の決議がなければ理事は取引をすることができないというようなものである。
Point8 理事は、規約または集会の決議によって禁止されていないときに限り、「特定の行為」の代理を他人に委任することができる。代理を委任できる他人の範囲に限定はない。
Point9 委任できるのは「特定の行為」なので、理事の有する代表権を包括的に他人に委任(まる投げ)することはできない。これに関して、最高裁の判例では、「理事に事故があり理事会に出席できないときは、その配偶者または一親等の親族に限り、これを代理出席させることができる」旨の規約改正を行った集会の決議を有効なものと認めたものがある。
ニ)代表者の行為についての管理組合法人の責任
管理組合法人は、理事がその職務を行うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。この場合は、理事自身も損害賠償責任を負う。
⑧監事
イ)監事の設置義務
管理組合法人には、監事を必ず置かなければならない。
ロ)監事の兼職の禁止
監事は、理事または管理組合法人の使用人と兼ねることができない。
ハ)監事の職務
監事は以下の事務をおこなう。
① 管理組合法人の財産の状況を監査すること
② 理事の業務の執行の状況を監査すること ③ 財産の状況または業務の執行について、法令もしくは規約に違反し、または著しく不当な事項があると認めるときは、集会に報告をすること ④ ③の報告をするため必要があるときは、集会を招集すること |
ニ)監事の代表権
管理組合法人と理事との利益が相反する事項については、監事が管理組合法人を代表する。なお、これについて例外はない。
⑨理事および監事の共通事項
イ)選任・解任
理事・監事は、集会の決議によって選任・解任することができる。これについては、規約に別段の定めをすることができる。
なお、理事・監事は自然人(個人)でなければならない。員数(人数)については、とくに制限はない。
ロ)任期
理事・監事の任期は、原則2年とする。規約で3年以内において別段の定めをすることができる。
ハ)職務の継続
理事・監事が欠けた場合または規約で定めた理事・監事の員数が欠けた場合には、任期の満了または辞任により退任した理事・監事は、新たに選任された理事・監事が就任するまで、なおその職務を行う。
Point 「解任」を理由に退任した理事・監事については、その職務を続行する権限はない。
⑩ 事務の執行
管理組合法人の事務は、この法律に定めるもののほか、すべて集会の決議によって行う。ただし、区分所有法で特別多数決が必要とされる事項など一定の事項を除いて、規約で、理事その他の役員が決するものとすることができる。
なお、保存行為は、理事が単独で決することができる。
⑪ 区分所有者の責任
管理組合法人の財産をもってその債務を完済することができないときは、区分所有者は、共用部分の持分の割合で、その債務の弁済の責めに任ずる。ただし、規約で別段の負担の割合が定められているときは、その割合による。
区分所有者の特定承継人は、その承継前に生じた管理組合法人の債務についても、その区分所有者が上記のルールにより負う責任と同一の責任を負う。
⑫ 管理組合法人の解散
管理組合法人は、次の事由によって解散する
イ)建物の全部の滅失(一部共用部分を共用すべき区分所有者で構成する管理組合法人にあっては、その共用部分の全部の滅失)
ロ)建物に専有部分がなくなったこと ハ)集会の決議(この決議は、区分所有者および議決権の各4分の3以上の多数でする) |
Point1 上記以外に解散原因はない(専有部分のすべてが1人の区分所有者に帰属する・・など)
Point2 集会の決議で管理組合法人が解散した場合は、法人格のない管理組合はなお存続する。
■規約
(1)規約
① 規約で定めることができる事項
規約とは、区分所有者間で構成する団体の根本規則という。規約には区分所有法で定めるほか以下の内容を定めることができる。
イ)建物またはその敷地もしくは附属施設の管理または使用に関する区分所有者相互間の事項
ロ)一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものは、一部区分所有者の規約で定めることができる
Point1 「建物」は共用部分に限定されない。したがって、専有部分に関する事項であっても、それが他の区分所有者に影響を及ぼすのであれば、規約で定めることができる。
Point2 規約には「管理または使用」に関する事項について規約を定めることができる。したがって、「処分」に関する事項については規約を定めることができない。
② 規約の作成方法
規約は、書面または電磁的記録により作成しなければならない。
規約は、法律に違反しない限り自由に定めることができる。
「こういう規約が良い。」ということで、国土交通省から規約の手本が公表されている。その規約を「マンション標準管理規約」という。
Point1 規約および集会の決議は、区分所有者の特定承継人に対してもその効力が及ぶ。
Point2 占有者は、建物またはその敷地若しくは附属施設の使用方法につき、区分所有者が規約または集会の決議に基づいて負う義務と同一の義務を負う。
(2)規約の設定・変更・廃止
規約の設定、変更または廃止は、集会の特別決議(区分所有者および議決権の各4分の3以上の多数の賛成)によって行う。
規約の設定、変更または廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。
Point1 「一部の区分所有者」に影響が及ぶときに、その承諾が必要になる。したがって、「べての区分所有者」一律に影響が及ぶときは、その承諾は不要である。
Point2 一部の区分所有者の権利に「特別の影響を及ぼすべきとき」とは、規約の設定、変更等の必要性及び合理性とこれによって一部の区分所有者が受ける不利益とを比較衡量し、当該区分所有関係の実態に照らして、その不利益が区分所有者の受忍すべき限度を超えると認められる場合をいうものと解される(判例)。
Point3 「特別の影響」を受ける区分所有者の承諾が必要な場合の具体例は、次の通りである。
① 共用部分の共有持分に応じて算出されていた管理費について、利用状況にかかわらず、法人である区分所有者を個人である区分所有者の1.7倍とする規約に変更する場合は、法人である区分所有者の承諾が必要である。
② 駐車場の専用使用権を消滅させる規約の変更は、分譲業者から有償で当該専用使用権を購入していた区分所有者がいるときは、その承諾が必要である。
③ 専有部分の用途の制限について規約に定めがない場合に、用途を住居専用にする旨の規約を定める場合は、すでに専有部分を住居以外の用途(事務所など)として使用している区分所有者の承諾を得なければならない
④ 1住戸1議決権の定めを1区分所有者1議決権とする規約に変更する場合に、2住戸以上を所有する区分所有者がいるときは、その区分所有者の承諾が必要である。
Point4 「特別の影響」を受けるとは認められず、区分所有者の承諾が不要な場合の具体例は、次の通りである。
①ペット(敷地内の野良猫も含む)の飼育の制限について規約に定めがない場合に、ペットの飼育を制限する旨の規約を定めるときは、すでにペットを飼育している区分所有者の承諾は不要である。
②夜間の楽器(ピアノなど)の演奏の制限について規約に定めがない場合に、夜間の楽器演奏を制限する旨の規約を定めるときは、楽器を日常的に演奏する区分所有者の承諾は不要である。
③従来無償であった駐車場の専用使用権を有償化する規約の変更は、その金額が社会通念上相当な額であると認められる場合は、区分所有者の承諾は不要である。
④共用部分の重大変更に関する決議要件のうち、区分所有者の定数を4分の3以上から過半数とする規約に変更する場合に、2住戸以上を所有する区分所有者がいるときでも、その区分所有者の承諾を得る必要はない。
Point5 一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものについての区分所有者全員の規約の設定・変更・廃止は、当該一部共用部分を共用すべき区分所有者の4分の1を超える者またはその議決権の4分の1を超える議決権を有する者が反対したときは、することができない。
Point6 管理規約原本の扱いについて、区分所有法にとくに規定はない。
(3)公正証書による規約の設定
最初に建物の専有部分の全部を所有する者(分譲業者など)は、公正証書により、下記の4つの事項について、規約を設定することができる。
① 規約共用部分
② 専有部分と敷地利用権の分離処分を可能にする定め
③ 敷地利用権の共有持分の割合
④ 規約敷地
(4)規約等の保管・閲覧
① 規約の保管
規約は、管理者が保管しなければならない。
ただし、管理者がないときは、建物を使用している区分所有者またはその代理人で規約または集会の決議で定めるものが保管しなければならない。
② 規約の閲覧
規約を保管する者は、利害関係人の請求があったときは、正当な理由がある場合を除いて、規約の閲覧を拒んではならない。
Point 「利害関係人」は区分所有者、専有部分の賃借人等の占有者、専有部分の抵当権者、管理組合(または管理組合法人)に対して債権を有する者や、これから専有部分を購入しようとする購入予定者等を含む。
③ 規約の保管場所の掲示
規約の保管場所は、建物内の見やすい場所に掲示しなければならない。
④ 規約の保管・閲覧・保管場所の掲示の規定の準用
上記の規約の保管・閲覧・保管場所の掲示の規定は、集会の議事録および集会決議に代わる区分所有者全員の合意書面について準用される。
■集会
集会は原則として、管理者が招集する(管理組合法人の場合は、理事が招集する)。管理者が数人あるときは、各管理者が招集権を有します。なお、規約で特定の管理者を招集権者とすることもできる。
(1) 招集権者
管理者(理事)がある場合
①集会は管理者(理事)が招集する。
②管理者(理事)は少なくとも年1回は集会を招集しなければならない。
③区分所有者の5分の1以上で議決権の5分の1以上を有するものは、管理者(理事)に対し、会議の目的たる事項を提示して集会の召集を請求することができる。この定数は規約で減ずることができる。
④請求がされた場合、2週間以内にその請求の日から4週間以内の日を会日とする通知が発せられなかったときは、その請求をした者は、自ら会議を招集することができる。
Point1 区分所有者から集会の招集を請求された管理者(理事)は、自らの名で集会の招集通知を発する。
Point2 区分所有者が集会の招集を請求したにもかかわらず管理者(理事)が集会を招集しない場合に区分所有者が自ら行う集会の招集は、その区分所有者の連名で招集通知を発する。
Point3 管理者(理事)がない場合は区分所有者の5分の1以上で議決権の5分の1以上を有する者は、集会を招集することができる。この定数は規約で減ずることができる。
(2) 招集通知
Point1 「少なくとも1週間前」とは、通知を発した日と会日との間に少なくとも7日が必要ということである。
Point2 専有部分が数人の共有に属するときは、集会の招集の通知は、議決権を行使すべき者(その者がないときは、共有者の1人)にすれば足りる。
Point3 召集通知の宛先は、区分所有者が管理者に対して通知を受けるべき場所を通知したときはその場所、通知しなかったときは区分所有者の所有する専有部分が所在する場所にあてて行えばよい。
Point4 次の①または②に対する集会の招集の通知は、規約に特別の定めがあるときは、建物内の見やすい場所に掲示してすることができる。
① 建物内に住所を有する区分所有者
② 通知を受けるべき場所を通知しない区分所有者 |
したがって、建物内に住所を有しておらず、かつ、通知を受ける場所を通知している区分所有者に対しては、規約に別段の定めがあっても、掲示による通知は認められない。
Point5 集会は、区分所有者全員の同意があるときは、上記の召集手続きを経ないで開くことができる。
Point6 集会の招集の通知をする場合において、会議の目的たる事項が次の①~⑥のいずれかに該当する決議事項であるときは、その議案の要領をも通知しなければならない
① 共用部分の重大変更
② 規約の設定・変更・廃止 ③ 建物の大規模滅失の場合の復旧 ④ 建替え ⑤ 団地規約の設定・変更・廃止 ⑥ 団地内建物について一括建替え承認決議に付す旨 |