- 民法ー9.区分所有法①(建物とその敷地)
- 1.建物の区分所有
- 建物の区分所有
- Sec.1
1建物の区分所有
区分所有法は、正式名称を「建物の区分所有等に関する法律」といい、分譲マンションなどの所有関係等のルールを規律するために昭和37年に制定された法律である。
なお、区分所有法には「マンション」という用語は一切出てこない。区分所有法の対象となる建物は、一般に「区分所有建物」と呼ばれる。 |
区分所有法で定めているもの
①建物および敷地に関する規定 | ・専有部分
・共用部分 ・敷地 |
②管理組合の運営に関する規定 | ・管理組合
・管理組合法人 ・規約 ・集会 ・義務違反者に対する措置 |
③復旧および建替えに関する規定 | ・復旧
・建替え |
④ 罰則・その他 | ・団地
・罰則 |
■建物の区分所有
一棟の建物に「構造上区分された数個の部分」(構造上の独立性)で「独立して住居、店舗、事務所または倉庫その他建物としての用途に供することができるもの」(利用上の独立性)があるときは、その各部分は、区分所有法の定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることができる。
この建物の各部分(規約により共用部分とされたものを除く)を目的とする所有権のことを区分所有権という。そして、区分所有権を有する者を、区分所有者という。
Point 建物の一部分を区分所有権の目的とするためには、その部分に①構造上の独立性、および②利用上の独立性、が必要である。
① 構造上の独立性 | 建物の構成部分である隔壁等(壁・扉・床・天井など)により、他の部分と構造上区分されていること。障子などで仕切られている程度では構造上の独立性は認められない。ただし、その範囲が明確であれば、周囲すべてが完全に遮蔽されている必要はない。 |
② 利用上の独立性 | 独立して住居、店舗、事務所その他の用途に利用できること。そのため、その建物の部分が独立の出入口を有して直接に外部に通じていることが必要である。隣室を通行しなければ外部に出入りできないのでは、利用上の独立性は認められない。 |
■専有部分
専有部分とは、区分所有権の目的たる建物の部分をいう。
区分所有権も所有権である。したがって、登記をすることによって、第三者に対抗することができる。また、専有部分は、複数の者で共有することができる(例、一戸の専有部分を夫婦で共有する)。
専有部分の登記簿上の床面積は、壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積(内法面積)が用いられる。
Point1 専有部分は、「区分所有権の目的たる」建物の部分なので、「構造上の独立性」と「利用上の独立性」を備えている必要がある。
Point2 利用上の独立性は、「独立して住居、店舗、事務所または倉庫その他建物としての用途に供することができる」ということなので、専有部分の用途は、住居に限られない。
(1)専有部分の範囲(専有部分と共用部分の境界)
専有部分と共用部分の境界については、区分所有法では厳密には規定を設けていない。以下の考え方がある。
① 内法説 | 柱・壁・床・天井等の境界部分はすべて共用部分である。専有部分は境界部分の内側のみになり、区分所有者が内装工事ができなくなる。 |
② 壁心説 | 境界部分は共用部分ではなく、その柱等の中心までが専有部分の範囲に含まれるとする。壁の中心部分までが区分所有者が自由に工事できることになる。 |
③ 上塗り説 | 境界部分の骨格をなす中央の部分(躯体部分)は共用部分であるが、その上塗りの部分は専有部分に含まれるとする。床面積の計算が困難となる。 |
(2)専有部分の判断基準(共用設備がある場合)
構造上の独立性および利用上の独立性を有する建物の部分ではあるが、その部分に他の区分所有者のための共用設備が設置されている場合に、その部分を専有部分とすることができるかどうかが問題となる。
判例では、倉庫部分や車庫部分などの内部にマンホール・配管・スイッチなどの共用設備が設置されていた場合について、次の3つの要件をすべて満たすときは、専有部分として区分所有権の目的とすることができるとしている。
① 共用設備が当該建物部分の小部分を占めるにとどまり、その余の部分をもって独立の建物の場合と実質的に異なるところのない態様の排他的使用に供することができること
② 他の区分所有者らによるその共用設備の利用、管理によって、当該建物部分の権利者の排他的使用に格別の制限ないし障害を生ずることがないこと ③ 当該建物部分の権利者の排他的使用によって共用設備の保存および他の区分所有者らによる利用に影響を及ぼすこともないこと |
■共用部分
共用部分とは、「専有部分以外の建物の部分」、「専有部分に属しない建物の附属物」および「規約により共用部分とされた附属の建物」をいう。
Point1 「専有部分以外の」建物の部分は共用部分になるので、区分所有建物には、専有部分でも共用部分でもない部分というものは存在しない。
Point2 建物の附属物とは、建物に附属し、効用上その建物と不可分の関係にあるものをいい、たとえば、電気の配線、ガス・水道等の配管、エレベーターなどがある。専有部分に属しない建物の附属物が共用部分であるので、たとえば専有部分内に存在する配線や配管のように、専有部分に属する建物の附属物もある。
Point3 専有部分内に存在する配線や配管がすべて専有部分に属する建物の附属物となるわけではない。これらが専有部分に属する建物の附属物であるかどうかは、「その構造および設置場所に照らし」判断される(判例)。たとえば、専有部分の床下や天井裏に存する配管であっても、各戸共通に利用する配管であれば、共用部分であって、専有部分とはならない。また、特定の専有部分の汚水を排水本管に流す排水管であっても、その構造および設置場所によっては、共用部分とされることもある。
Point4 附属の建物とは、区分所有建物とは別個の独立した建物であり、規約によって共用部分とすることができる(マンションの居住棟とは独立した管理棟など)。
(1) 法定共用部分と規約共用部分
共用部分には、「法定共用部分」と「規約共用部分」の2種類ある。
法定共用部分 | ・数個の専有部分に通ずる廊下または階段室その他構造上区分所有者の全員またはその一部の共用に供されるべき建物の部分
(例:階段・玄関ロビー・廊下・屋上・基礎・土台部分) ・ 法定共用部分は、区分所有権の目的とならない |
規約共用部分 | ・ 「構造上の独立性および利用上の独立性を備えた建物の部分」および「附属の建物」で、規約により、共用部分と定めたもの(例:集会室・管理室)
・ 規約共用部分は、登記をしなければ共用部分であることを第三者に対抗することができない |
Point1 一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分は、一部共用部分と呼ばれる。
Point2 規約共用部分である旨の登記は、第三者への対抗要件であり、登記をしないと規約共用部分とすることができないわけではない。
(2) 共用部分の共有関係(共有持分)
① 共有関係
共用部分は皆が共同で使う部分なので、誰かが単独で所有するのは適当ではない。そこで、共用部分は区分所有者全員が共有することになっている。
・共用部分は、区分所有者全員の共有に属する。規約で別段の定めをすることができる。
・一部共用部分は、これを共用すべき区分所有者(一部区分所有者)の共有に属する。規約で別段の定めをすることができる。 |
Point1 規約で別段の定めをすることにより、管理者または特定の区分所有者を共用部分の所有者と定めることができる。これは管理のための便宜上の所有で、管理所有といい、共用部分の管理者とされた管理者または特定の区分所有者を、管理所有者という。
Point2 規約で別段の定めをすることにより、一部共用部分を、区分所有者全員の共有とすることもできる。
② 共有持分
共用部分の持分は、各区分所有者が所有する専有部分の床面積の割合によって決定される。これについては、規約で別段の定めをすることができる(床面積にかかわらず平等など)。
(例) 専有部分の床面積の合計が10,000㎡の場合に、100㎡の専有部分を所有する区分所有者の持分は10,000分の100であり、150㎡の専有部分を所有する区分所有者の持分は10,000分の150となる。
Point1 専有部分の床面積は、壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積が用いられる(内法面積)。これについては、規約で別段の定めをすることができる(壁芯面積など)。
Point2 共有持分の割合を計算する場合、一部共用部分の床面積は、これを共用すべき各区分所有者の専有部分の床面積の割合により配分されて、それぞれの区分所有者の専有部分の床面積に算入される。
(3) 共用部分の持分の処分
民法の規定で考えると、共有者は持分を自由に処分することができる。しかし、これをそのまま区分所有建物に認めることはできない。
共用部分の持分と専有部分の区分所有権とは原則として一体関係にあり、セットになっているものである。つまり、両者を分離して処分することは、原則としてできないことになっている。
Point1 共用部分の共有者の持分は、その有する専有部分の処分に従うので、専有部分に抵当権が設定されれば、抵当権の効力は共用部分の共有持分にも及ぶ。また、専有部分につき取得時効が完成すれば、専有部分だけでなく、共用部分の共有持分も時効取得される。
Point2 専有部分と共用部分の共有持分を分離して処分することができるのは、区分所有法に別段の定めがある場合のみであり、規約に「専有部分と共用部分の共有持分を分離して処分することができる」旨を定めることはできない(定めても無効)。つまり、管理所有者に共用部分を管理所有させる場合や、規約で共用部分の共有持分の割合を変更するような場合にのみ、分離処分が認められる。
(4) 共用部分の使用
各共有者は、共用部分をその用方に従って使用することができる。
① 法定共用部分であれば「廊下を通行するために使用する」。
② 規約共用部分であれば「倉庫と規約で定められた共用部分を倉庫と使用する」。
Point 共用部分は、その用方に従って使用することができるのであり、各共有者の持分に応じて使用を認めるものではない。たとえば、エレベーターの使用頻度を、持分に応じて制限することは妥当ではない。
(5) 共用部分の保存・管理・変更
共用部分の保存・管理・変更の定め方は、次の通り。
区分所有者全員の利害に関係するもの | 区分所有者全員で管理する |
区分所有者全員の利害に関係しないが、
規約に定めがある場合 | |
上記以外 | 一部区分所有者のみで管理する |