• 民法ー7.相続
  • 1.相続
  • 相続
  • Sec.1

1相続

堀川 寿和2021/12/10 15:43


 人が死亡することにより、「相続」が開始する。死亡した者の財産(権利・義務)は遺言があれば遺言に従って一定の者が引き継ぐことになるが、遺言がなければ民法の規定に従って一定の者が引き継ぐことになる。


学習のポイント

1. 相続人と法定相続分を覚える。

2. 相続の手続きを覚える。


相続

 相続とは、亡くなった人(被相続人)の財産を相続人が承継することである。


(1)相続開始の原因

 相続は、被相続人の死亡によって開始する。


(2)相続の一般的効力

 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。承継される財産には、預貯金や不動産などの積極財産だけでなく、借金などの債務(消極財産)も含まれる。


Point1 マンションの管理費の滞納者が死亡したときは、そのマンションに居住しているか否かにかかわらず、その相続人は管理費債務を承継する。


Point2 建物の賃貸人が死亡した場合、その相続人は被相続人の賃貸人としての権利義務をそのまま承継するので、相続人が賃貸借契約を解約できるわけではない。


Point3 数人の者が死亡した場合で、同時に死亡した者がいたときは、同時に死亡した者の間では、相互に相続しない。


Point4 数人の者が死亡した場合において、そのうちの1人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定される。つまり、この場合も、同時に死亡したものとして扱われる。

(3)共同相続の効力

 相続人が数人いる場合を共同相続といい、この場合の各相続人を共同相続人という。相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。そして、各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。


Point1 不動産の所有者が死亡した場合で、相続人が数人あるときは、遺産分割がされるまで、その不動産は、これらの相続人の共有となる。その際の共有持分は、法定相続分と同じである。


Point2 債務者が死亡し、相続人が数人ある場合に、被相続人の金銭債務その他の可分債務は、法律上当然分割され、各共同相続人がその相続分に応じてこれを承継する。したがって、マンションの管理費の滞納者が死亡した場合に、遺産分割によって、そのマンションを共同相続人のうち誰が取得するのかが確定する前であっても、各共同相続人に対して、その相続分に応じて、滞納管理費の請求をすることができる。また、マンションの取得者が確定しても、その取得者のみが、債務を承継するわけではない。


相続人の範囲

 民法で定められた相続人を、法定相続人という。

 法定相続人は、被相続人の配偶者、子、直系尊属および兄弟姉妹である。




相続人と相続順位

 法定相続人には相続順位があり、先順位の者がいれば後順位の者は相続人になることができない。

 相続人は、配偶者と配偶者以外の相続人に分けることができ、配偶者と配偶者以外の相続人は同順位で、同時に相続人になることができる。したがって、配偶者は常に相続人になることができる。それに対して、配偶者以外の相続人は①子、②直系尊属、③兄弟姉妹の順に相続人になることができる。


(1)配偶者

 被相続人の配偶者は、常に相続人となる。配偶者には、内縁関係にある者は含まれない。

 配偶者は、他に相続人がいないときは1人で、他に相続人がいるときは、その相続人と共同して相続人となる。


(2)第1順位 子

 被相続人の子は、嫡出子(婚姻関係にある夫婦間に生まれた子)、非嫡出子(婚姻関係にない男女間に生まれた子)ともに、相続人となる。胎児は、相続については、すでに生まれたものとみなされるため、相続人になることができる。

 養子は、嫡出子として相続人となる。


(3)第2順位 直系尊属

 被相続人の直系尊属は、被相続人の子(その代襲相続人を含む)がいないときに限り、相続人となり、親等の異なる者の間では、被相続人に近い者を先にする。


(4)第3順位 兄弟姉妹

 被相続人の兄弟姉妹は、被相続人の子(その代襲相続人を含む)も直系尊属もいないときに限り、相続人となる。


(5)代襲相続人

①子の代襲相続人

 被相続人の子に以下のイ)~ハ)の代襲原因が発生した場合は、その者の子(被相続人の孫)が代襲して相続人(代襲相続人)となる。このような相続を、代襲相続という。

イ)相続開始前に既に死亡した場合
ロ)相続人の欠格事由に該当して相続権を失った場合
ハ)廃除によって相続権を失った場合

 代襲者(被相続人の孫)に代襲原因がある場合は、さらにその者の子(被相続人の曾孫)が代襲して相続人となる。これを、再代襲という。また被相続人の曾孫にも代襲原因がある場合は、再々代襲も認められる。


②兄弟姉妹の代襲相続人

 被相続人の兄弟姉妹に上記のイ)またはロ)の代襲原因が発生した場合は、その者の子(被相続人の甥姪)が代襲して相続人となる。なお、兄弟姉妹には再代襲は認められない。