• 民法ー5.債権各論
  • 1.贈与契約
  • 贈与契約
  • Sec.1

1贈与契約

堀川 寿和2021/12/10 13:28

債権各論では、債権の発生原因別に、それぞれに特有のルールを扱う。

贈与契約の成立

 贈与とは、他人に無償で財産をあげることである。財産をあげる人を「贈与者」、財産をもらう人を「受贈者」という。

 贈与契約は、当事者の一方(贈与者)がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方(受贈者)が受諾をすることによって、その効力を生ずる。

 贈与契約は、当事者の合意(口約束)のみで成立し、契約の成立に、書面(契約書)の作成は不要である。しかし、契約を書面によって行ったか否かにより、履行前に解除できるか否かに違いがある。


Point1 贈与も契約であるので、契約が成立するには、受贈者の承諾の意思表示が必要である。


Point2 贈与契約は、片務無償諾成契約である。



書面によらない贈与契約の解除

 書面によらない贈与契約(口約束など)は、各当事者が解除をすることができる。ただし、履行の終わった部分については、解除をすることができない。


事例 AはA所有の甲土地を口頭でBに贈与した。この場合、Aが甲土地をBに引き渡すまでであれば、A・Bいずれのほうからも、贈与契約を解除することができる。しかし、Aが甲土地をBに引き渡した後は(移転登記がまだであっても)、A・Bいずれのほうからも契約を解除することはできない。


Point1 不動産の贈与契約は、所有権移転登記または引渡しいずれかが行われたときに、履行が終わったとされる。


Point2 書面による贈与は、解除することができない(履行が終わっていなくても)。


贈与の効力

(1)贈与者の引渡義務

 贈与契約が成立すると、贈与者は受贈者に対し、贈与の目的である物または権利(契約の内容に適合したもの)を引き渡し、または移転する義務を負う。

 契約の内容については、贈与者は、贈与の目的である物または権利を、贈与の目的として特定した時の状態で引き渡し、または移転することを約したものと推定される。


(2)贈与者の担保責任(契約不適合責任)

 負担付贈与については、贈与者は、その負担の限度において、売主と同じく担保の責任を負う。