- 民法ー4.債権総論
- 3.債権譲渡
- 債権譲渡
- Sec.1
1債権譲渡
売買代金請求権といった債権は、それ自体一個の財産権だから、売買の対象とすることも可能となる。このように、債権自体を一つの財産権として取引の対象とし、第三者に譲り渡すことを債権譲渡という。ここでは、債権を譲り受けた者が、その債権を行使する場合の要件(対抗要件)を中心に学習する。
■債権譲渡
(1)債権の譲渡
債権は、債権の譲渡人と譲受人との意思表示(合意)により、譲渡することができる。この場合に、債務者の承諾などは不要である。
事例 債権者Aが債務者Bに対して有する貸金債権を、Cに譲渡した。
(2)将来債権の譲渡
債権譲渡は、その意思表示の時に債権が現に発生していることを要しない。つまり、まだ発生していない将来債権も譲渡することができる。
将来債権が譲渡された場合、譲受人は、債権発生時に、発生した債権を当然に取得する。
■債権譲渡の対抗要件
債権譲渡(将来債権の譲渡も含む)が債権の譲渡人と譲受人との間で自由に行われたとすると、債務者の立場からすると次の2点の問題が生じる。
①債務者は債権の譲渡人と譲受人のどちらに弁済すればよいのか。
②譲渡人が債権を二重に譲渡(二重譲渡)した場合に、債務者はどちらの譲受人に弁済すればよいのか。
これらは、対抗要件で解決される。
(1)債務者への対抗要件
債権譲渡があったことを、債務者に対抗するためには、以下の①②のいずれかが必要となる。
① 譲渡人から債務者への通知(口頭でもよい)
② 債務者の承諾(口頭でもよい) |
事例 債権者Aが、債務者Bに対して有する金銭債権を、Cに譲渡した。
Point 通知とは、債権譲渡があった旨を伝えることである。この通知は、譲渡人による通知でなければならず、譲受人による通知は対抗要件とはならない。譲受人が自分で通知をしてきても、それが真実か否かは定かでないからである。
承諾とは、債権譲渡があった事実を知った旨を伝えることである。この承諾は、譲渡人・譲受人のいずれに対するものであってもよい。
(2)債務者以外の第三者への対抗要件
債権譲渡があったことを、債務者以外の第三者(債権を二重に譲り受けた者)に対抗するためには、以下の①②のいずれかが必要となる。
① 確定日付ある証書による譲渡人から債務者への通知
② 確定日付ある証書による債務者の承諾 |
確定日付のある証書には、内容証明郵便や公正証書などがある。
事例 債権者Aが、債務者Bに対して有する金銭債権を、CおよびDに二重に譲渡した。この場合、CD間においては確定日付のある証書で通知または承諾がされているかどうかで決着がつけられることになり、いずれかの対抗要件を備えた者が、債権譲渡があったことを対抗できる。
Point C・Dが共に「確定日付のある通知」を備えている場合は、確定日付の先後ではなく、通知書がBに到達した日時の先後により決する。