- 民法ー3.物権(担保物権を除く)
- 3.共有
- 共有
- Sec.1
1共有
共有とは、2人以上の者が1つの物を共同で所有しあうこという。一物一権主義に基づき、1つの物には1つの所有権しか存在することができないというのが原則である。しかし、現実には、複数の者による共同所有形態も少なくないため、民法ではこのような共有を認めている。
■持分
共有の対象物 | 共有物 |
共有物の各所有者 | 共有者 |
持分 | 持分とは、各共有者が共有物に対して持っている所有権である。持分は割合の形をとっており、各共有者の持分をあわせると、1つの所有権と内容が同じになる。つまり、共有物の所有権は、各共有者にその持分の割合に応じて帰属するということである。
各共有者は、他の共有者の同意を得ることなく自由にその持分を処分(譲渡・放棄)することができる。 |
持分の割合 | 持分の割合は、法律の規定で定まる場合を除き、共有者間の合意により定める。法律の規定や共有者間の合意がない場合には、各共有者の持分は相等しいものと推定される。 |
持分の譲渡 | 共有者の1人が持分を譲渡すれば、その持分は譲受人に移転する。 |
持分の放棄 | 共有者の1人が持分を放棄すれば、その持分は他の共有者に(その持分割合に応じて)帰属する。 |
持分の相続 | 共有者の1人が死亡して相続人がある場合は、その持分は相続人に移転する。
共有者の1人が死亡して相続人がない場合は、特別縁故者(その共有者の生前に療養・看護に努めた者)への財産分与があるときを除いて、その持分は、他の共有者に(その持分割合に応じて)帰属する。国庫に帰属するのではない。 |
■共有物の利用
(1)共有物の使用
各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。共有者は、たとえ持分がわずかでも、自己の持分に基づいて、共有物の全部を占有することができる。また、共有者は、自己の持分に基づいて、第三者に共有物の占有使用を承認することもできる。なお、具体的な使用方法については、共有者の協議で定められる。
Point1 他の共有者との協議に基づかないで共有者の1人が共有物全部を占有している場合であっても、その共有者は自己の持分に基づいて共有物を占有することができるので、他の共有者は当然にはその共有物の明渡しを請求することができない。
Point2 他の共有者との協議に基づかないで共有者の1人から共有物の占有使用を承認された第三者が共有物全部を占有している場合であっても、その第三者はその占有使用を承認した共有者の持分に基づくものと認められる限度で共有物を占有使用することができるので、他の共有者は当然にはその共有物の明渡しを請求することができない。
(2)共有物の保存・管理・変更
①保存行為
保存行為は、各共有者が単独ですることができる。
保存行為とは、管理行為のひとつであり、共有物の現状を維持する行為をいう。具体的には、共有物の修繕、共有物の不法占有者(不法占拠者)に対する妨害排除請求(明渡請求)、共有不動産に係る債権の消滅時効の中断などがこれにあたる。
Point 共有物が不法占有された場合は、各共有者は自己の持分に基づいて、不法占有者に対して損害賠償を請求することができる。この場合に、各共有者は自己の持分を超えて損害賠償請求をすることができない。
②管理行為
共有物の管理に関する事項は、各共有者の持分の価格の過半数で決する。
管理行為とは、共有物の性質を変えない範囲で利用したり、改良したりする行為をいう。具体的には、共有物の賃貸借契約を解除すること、共有建物に冷暖房を完備したり、リフォームしたりすること、などがある。
③変更行為
各共有者は、他の共有者全員の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。
変更行為とは、共有物の性質を大きく変更するか、共有物そのものを処分してしまう行為である。具体的には、建物の増築・改築・建替え、木を伐採して道をつくる、共有物を売却する、共有物に抵当権を設定するなどがある。
(3)共有物に関する負担
各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。管理の費用には、租税公課のほか、共有物の修繕費など共有物の保存・変更・管理に要するすべての費用を含む。
共有者が1年以内にこの負担義務を履行しないときは、他の共有者は、相当の償金を支払ってその者の持分を取得することができる。
■共有物の分割
(1)共有物の分割
①共有物の分割請求権
共有物の分割とは、共有物の共有関係を解消することである。各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。
②分割禁止特約
共有者は、その全員の合意によって、5年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることができる。この契約は、共有者全員の合意によって更新することができるが、その期間は、更新の時から5年を超えることができない。
(2)共有物の分割の方法
①協議による分割
共有物の分割は、原則として、共有者全員の協議により行う。
協議による分割の方法としては、①現物分割、②代金分割、③価格賠償の3つがあり、どの方法で行ってもよい。
現物分割 | 共有物をそのまま物理的に分ける方法 |
代金分割 | 共有物を売却して、その代金を分ける方法 |
価格賠償 | 共有物を共有者のうちの1人の単独所有または数人の共有として、これらの者から他の共有者に持分の価格を賠償させる方法 |
②裁判による分割
共有物の分割について共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求することができる。
裁判による分割の方法は、原則として現物分割であるが、現物分割が不可能な場合や現物分割をすると著しく価格が減少するような場合は、代金分割を命じることもできる。また、特段の事情がある場合は、判例により、価格賠償の方法による分割も認められている。
Point 共有物の現物を分割することができないとき、または分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは、裁判所は、共有物の競売を命ずることができる。これは、代金分割を命じることができるということである。