- 民法ー2.総則
- 3.取消しと追認
- 取消しと追認
- Sec.1
1取消しと追認
取消しとは、一応有効な契約の効果を取消しの意思表示によりはじめから無かったことにすることをいい、追認とは、取り消すことができる契約を確定的に有効にすることをいう。取消しまたは追認は、相手方に対する意思表示によって行う。
■取消し・追認をすることができる者
取消権者・追認権者 | 追認することができるとき | |
① 未成年者 | 成年に達し、かつ、取消権を有することを知った後 | 法定代理人の同意を得たとき |
② 成年被後見人 | 行為能力者となり(後見・保佐・補助開始の審判の取消しがあり)、かつ、取消権を有することを知った後 | ― |
③ 被保佐人 | 保佐人の同意を得たとき | |
④ 被補助人 | 補助人の同意を得たとき | |
⑤ 制限行為能力者の保護者 | いつでも追認できる。 | |
⑥ 錯誤・詐欺・強迫によって
意思表示をした者 | 錯誤の事実を知り・詐欺の事実を知り・畏怖の状態が終わり、かつ、取消権を有することを知った後 |
■法定追認
取り消すことができる契約について、追認権者が、自ら追認の意思表示をしなくても、その契約を望んでいるかのような行為をした場合には、追認をしたものとみなされ、以後、取り消すことができなくなる。これを法定追認という。
異議をとどめることなく、以下の6つの行為をすると、追認をしたものとみなされる。
① 全部または一部の履行
② 履行の請求(代金を請求する) ③ 更改(有効な契約を一旦消滅させ、新たに契約を成立させること) ④ 担保の供与 ⑤ 取り消すことができる行為によって取得した権利の全部または一部の譲渡(買った不動産を転売した) ⑥ 強制執行 |
Point これらの行為を制限行為能力者が単独でおこなっても法定追認にはならない。未成年者・被保佐人・被補助人がそれぞれの保護者の同意を得てこれらの行為を行った場合は、法定追認としての効力を生じる。
■取消権の消滅時効
取消権は①または②の一定の期間が経過すると、それ以後取消しができなくなる。
① 追認をすることができる時から5年
② 行為(取り消すことができる行為)の時から20年
いずれか早い方で消滅する。
Point1 例えば、12歳の未成年者が行った契約を考えてみよう。本人が追認できるようになったときから考えた消滅時効は23歳、行為の時から考えた消滅時効は32歳。つまりこの場合の取消権は、23歳の年に消滅する。
Point2 成年者Aが相手方の詐欺により自己所有の不動産を売却した場合
①その後Aが詐欺であったという事実を知ったときは、その事実を知った時(追認することができる時)から5年を経過すると、Aの取消権は消滅する。
②その後Aが詐欺であったという事実を知ることなく、売買契約を締結した時(その行為があった時)から20年を経過すると、Aの取消権は消滅する。