- 一般知識ー4.経済
- 4.金融制度・金融政策
- 金融制度・金融政策
- Sec.1
1金融制度・金融政策
■通貨制度と貨幣の危機
(1) 通貨制度
① 通貨とは
社会で実際に流通している貨幣のことであり、その発行・流通の仕組みを通貨制度という。
② 通貨の種類
(a) 現金通貨
わが国では、日本銀行が発行する銀行券(紙幣)と政府が発行する補助貨幣(硬貨)がこれにあたる。
(b) 預金通貨
小切手の振出しにより、主として企業間の大口取引の決済手段として用いられる当座預金等の預金である。
(2) 金本位制度と管理通貨制度
金本位制度の時代には、通貨の発行量は金と結び付けられ、通貨と金との兌換が保証されていたが、1929年に始まった世界大恐慌を契機に、各国は金本位制度から離脱し、管理通貨制度へと移行した。
この管理通貨制度の下では、通貨と金との関係が断たれ、政府や中央銀行は物価安定や国際収支の均衡といった政策目標を達成するために通貨の発行量を調整している。
これらの制度の内容及び長所・短所は、次のとおりである。
金本位制度 | 管理通貨制度 | |
内容 | 中央銀行が、金と交換することができる兌換紙幣を発行する制度(通貨は金の保有量に基づいて発行される)。 | 国内通貨の流通量を中央銀行が政策目的に応じて管理・調整する制度。この制度の下では、通貨と金の交換は保障されない。 |
長所 | 通貨価格が安定する。 | 弾力的な経済政策の実施が容易である。 |
短所 | 中央銀行の保有する金の量に制約される。 | インフレーションを招く危険性がある。 |
【用語チェック】 中央銀行
1国における金融組織の中核として、金融政策の運営にあたる金融機関である。
(3) 貨幣の機能
貨幣には、おおむね次の4つの機能がある。
価値尺度 | 財貨の価値を測定する尺度としての機能 |
交換手段 | 交換取引の媒介手段としての機能 |
支払手段 | 対価を支払う手段としての機能 |
貯蔵手段 | 貨幣のまま保有することによって、財貨の価値を貯蔵する手段としての機能 |
■金融の仕組みと金融市場
(1) 金融
① 金融とは
資金の需要者と供給者との間の資金の融通(貸し借り)のことである。また、このような金融に関する取引が行われる市場のことを金融市場という。
② 金融の種類
(a) 直接金融
企業が証券市場において株式や社債を発行し、金融機関を通さずに資金を調達する方法である。
(b) 間接金融
銀行等の金融機関に預け入れられた預金が、金融機関を通じて企業に貸し付けられる方法である。わが国では、近年、大企業を中心に直接金融の重要性が高まってきているが、中小企業では依然として間接金融の比重が大きい。
(2) 金融市場の種類
金融市場は、次のように分類することができる。
① 相対型(あいたいがた)取引市場
特定の金融機関と1対1で取引条件を決定する金融市場である。
② 市場型取引市場
不特定多数の経済主体による競争を通じて取引条件が決定される金融市場である。
(a) 短期金融市場
短期金融市場とは、通常、1年以内の短期資金が取引される金融市場のことである。短期金融市場には、市場参加者が金融機関に限られるインターバンク市場と、金融機関以外も参加することができるオープン市場がある。前者の代表例として、短資会社を通じてごく短期の貸借を行うコール市場、後者の代表例として、一定期間後に一定の価格で債券等の売戻し・買戻しを行う債券現先市場が挙げられる。なお、「短期金利」といった場合、通常、翌日物コールレートのことを指す。
【用語チェック】 債券現先市場
債券の現先取引を行う市場のこと。「現先取引」とは、一定期間後に一定の価格で、買戻しをする条件を付けた国債等の取引のこと。
(b) 長期金融市場
長期金融市場とは、1年を超える長期資金が取引される金融市場のことであり、資本市場とも呼ばれている。この市場で取引される主なものは、株式、公債・社債等である。なお、「長期金利」といった場合、通常、10年物利付国債のことを指す。
■銀行業務
(1) 銀行の三大業務
銀行の主な業務は、次の3つである。
1. 預金業務…普通預金や定期預金などの預金を、広く社会から受け入れる業務
2. 貸出業務…借用証書や手形などを受け取り、必要な資金を供給する業務
3. 為替業務…遠隔地間の貸借の決済などを、実際に現金を送ることなく行う業務
(2) 信用創造
銀行は、受け入れた預金を、引出しに備える分(支払準備)を残して貸し出し、貸し出された資金は、再び預金として銀行に還流される。このプロセスを繰り返すと、銀行全体では、当初の預金の何倍もの預金が創出されることになる。この仕組みを信用創造という。
【信用創造の概要】
例えばAがB銀行に10万円の現金を預金したとし、B銀行は、その預金の一定割合、例えば10%を支払準備として保有し(つまり、1万円)、残りの90%(つまり、9万円)を貸し出すことができるとする。そこで、B銀行は、9万円をCに貸し出し、Cは、売買代金の支払いとして、Dに9万円を支払った。そして、Dは、9万円をE銀行に預金した。この結果、B銀行とE銀行に預けた総額は、19万円となった。もともと10万円の現金でしかなかったものが、信用創造が発生したことにより、19万円の預金になったのである。