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1景気循環と経済指標

堀川 寿和2021/12/07 16:47

景気変動

(1) 景気変動とは

 需要と供給の不均衡によって生じる現象である。資本主義経済では、景気の上昇と下降を繰り返しながら経済が進展していく。この景気変動は、周期的な性格を有しているため景気循環とも呼ばれている。


(2) 景気変動の過程

 経済は、好況、後退、不況、回復の各局面を順次たどりながら進展していく。

① 好況局面

 経済活動が活発で、経済成長率が上昇している状態である。例えば、新技術を応用した新製品への需要が増大し、生産が拡大され、これに応じて投資が拡大し、他の産業部門にも経済効果が波及していく。この好況局面では、生産が拡大し、労働者の賃金の上昇、雇用の増大をもたらす。

② 後退局面

 景気が落ち込み始め、マイナス成長に転じつつある状態である。好況期の有効需要の増大に供給が追いつき、やがて生産過剰となる。このため、価格が下がり、生産規模も縮小し、企業の利潤も低下する。また、この景気の後退が、すべての業種で急激に生じるのが恐慌である。

恐慌になると、物価は急落して生産も激減し、企業倒産等により失業者が急増する。

③ 不況局面

 有効需要に対する供給過剰が続き、経済活動が停滞する。不況時には価格の低迷、失業者の増加で社会は混乱する。この局面では、企業は生き残りのため、合併等の企業再編を行うようになる。

④ 回復局面

 不況のさなかにある企業において、合理化、生産調整が行われて在庫整理が進む等により、景気が好転しはじめ、プラス成長に転じていく。


(3) 景気変動の周期

 景気変動は、一定の周期的な性格を有している。

① コンドラチェフ波動

 最も長期の景気の波で、ほぼ50年の周期を有する。この波を引き起こす原因としては、さまざまなものがあげられるが、技術革新説が有力である。

② クズネッツ波動

 建設循環あるいは建築循環とも呼ばれ、ほぼ20年の周期を有する。この波を引き起こす原因としては、建設投資が挙げられる。

③ ジュグラー波動

 主循環(メジャー・サイクル)とも呼ばれ、ほぼ10年の周期を有する。この波を引き起こす主な原因としては、投資のなかでも中心的な役割を持つ設備投資が挙げられる。

④ キチン波動

 一般に知られる景気の波の中で最も周期の短い波で、ほぼ40か月の周期を有する。この波を引き起こす原因としては、在庫の増減が挙げられる。


インフレーション

(1) インフレーションとは

 物価水準が継続的に上昇する現象をいう。なお、インフレーションとは逆に、物価水準が継続的に下落する現象を、デフレーション(デフレ)という。


(2) インフレーションの種類

① 進行速度による分類

(a)クリ-ピング・インフレーション

 忍び足で進む(creep)インフレーションである。長期間、年率1~4%程度という比較的緩やかな速度で進行する。

(b)ギャロッピング・インフレーション

 駆け足で進む(ga11op)インフレーションである。年率10%超程度で進行する。

(c)ハイパー・インフレーション

 過度の(hyper)インフレーションである。1年間に物価水準が数倍にも高騰する。

② 原因による分類

(a)ディマンド=プル・インフレーション

 超過需要の継続的な圧力によって生ずるインフレーションである。

(b)コスト=プッシュ・インフレーション

 生産コストの上昇によって生ずるインフレーションである。

i)賃金インフレーション

賃金上昇によるコストが上乗せされることによって生ずるインフレーションである。

ii)輸入インフレーション

輸入品の値上がりによって生ずるインフレーションである。


(3) 現代のインフレーション

 資本主義経済の下では、一般的に景気上昇期にインフレーションが生じる。しかし、現代では政府の有効需要創出政策、失業対策等によって、不況(景気停滞)下で商品や労働力の供給過剰が生じているにもかかわらず、物価水準が上昇するという現象を生ずることがある。この不況とインフレーションの併存をスタグフレーションという。



経済指標

(1) 国民総生産(GNP)

 国民総生産とは、1国の国民が1年間に新たに作り出した財・サービスの付加価値の総額をいう。すなわち国民が1年間に生産した財・サービスの総生産額から原材料等の中間生産物の総額を差し引いたものである。

国民総生産=生産物の総額-中間生産物の総額
               =最終生産物の総額
               =付加価値の総額


(2) 国内総生産(GDP)

 国内総生産とは、国内において、1年間に、新たに作り出された付加価値の総額のことである。

国内総生産=GNP-海外からの純所得


「国民」とは、経済主体が経済の活動場所(国内外)を問わず、その国の国民であるかどうかを表す概念である。これに対して、「国内」とは、経済主体の国籍は問わず、経済活動の場が、その国の内か外かを表す概念である。


(3) 国民純生産(NNP)

 国民総生産の中には、生産活動に必要な建物・機械等の固定資産の価値の減耗分(減価償却費)が含まれている。この減耗分を差し引いたものが国民純生産である。

国民純生産=GNP-固定資本減耗(減価償却費)


(4) (狭義の)国民所得(NI)

 (狭義の)国民所得とは、国民個人、企業等の民間の各主体が、生産への寄与の代償として受け取る所得の合計のことである。

(狭義の)国民所得=NNP…(間接税-補助金)


 GNP、GDP及びNNPは、生産物を間接税や補助金が考慮された市場価格によって評価している。ここれに対して、NIは生産物を要素費用(生産者が生産に貢献した労働等の生産要素に対して支払う費用のことで、これは市場価格から間接税を控除し、補助金を付加して求める)によって評価している。このため、NIは要素費用で評価された純生産額とも呼ばれる。