• 一般知識ー2.情報通信
  • 1.情報通信における法整備
  • 情報通信における法整備
  • Sec.1

1情報通信における法整備

堀川 寿和2021/12/07 15:49

 情報通信の分野の出題は大きく二つに分けることができる。一つは、情報通信に関連する法律に関する問題、もう一つは、情報通信、特にインターネットに関連する用語の問題である。まず、情報通信に関する法律については、その数が限られているため、各法律のポイントを必ず暗記しておく必要がある。特に法令の改正があった場合には、その内容をしっかり把握しておかなければならない。

 次に、情報通信に関する用語の問題であるが、これは普段から、出題されそうな用語の内容をチェックしておくしかないが、出題内容は常識的なものなので、用語の大まかな内容を把握しておけばよい。


特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限および発信者情報の開示に関する法律(プロバイダ責任制限法)

(1) 趣旨(§1)

 特定電気通信による情報の流通によって権利侵害があった場合について、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示を請求する権利について定めている法律。

 この法律の趣旨であるが、インターネット上で権利侵害(著作権侵害、名誉毀損、プライバシー侵害)を受けた場合、プロバイダ、サーバーの管理・運営者等に対して、削除要請や発信者情報の開示を請求した方が実効性がある。しかし、一方で、プロバイダ等は、発信者から削除が不当であるとして損害賠償を請求されるおそれがあるため、一定の場合にプロバイダ等が損害賠償責任を負わない場合を設け、さらに、発信者情報の開示請求を可能とする規定を設けるというものである。


(2) 内容

① 損害賠償の制限(§3)

特定電気通信による情報の流通により他人の権利が侵害されたときに、関係する特定電気通信役

務提供者(プロバイダ、サーバーの管埋者・運営者等)は、一定の場合、情報を削除または削除し

なかったことにつき、発信者または権利侵害を主張する者に対し、損害賠償責任を免れる。

a) 権利侵害を知らない場合は、削除しなくても被害者に対して免責される。

b) 権利侵害がおきていると信じるに足る相当の理由があるときにおいて削除した場合、発信者に

対し免責される。

② 発信者情報の開示請求(§4)

 侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかで、当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるときには、特定電気通信による情報の流通により、自己の権利を侵害されたとする者は、関係する特定電気通信役務提供者に対し、特定電気通信役務提供者が保有する発信者の情報の開示を請求できる。


不正アクセス行為の禁止等に関する法律(不正アクセス禁止法)

(1) 目的(§1)

 不正アクセス禁止法は、「不正アクセス行為を禁止するとともに、これについての罰則及びその再発防止のための都道府県公安委員会による援助措置等を定めることにより、電気通信回線を通じて行われる電子計算機に係る犯罪の防止及びアクセス制御機能により実現される電気通信に関する秩序の維持を図り、もって高度情報通信社会の健全な発展に寄与することを目的とする」法律である。


(2) 不正アクセス行為の禁止(§3)

 何人も、不正アクセス行為をしてはならない。違反した者は、3年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられる。

(例)不正ログイン(他人のユーザー名・パスワードを無断で使用して利用権限のないコンピュータを利用可能にする行為)

(例)セキュリティ・ホール攻撃(アクセス制御機能のプログラムの瑕疵、アクセス管理者の設定上のミス等のコンピュータシステムにおける安全対策上の不備を攻撃して利用権限のないコンピュータを利用可能にする行為)


(3) 他人の識別符号を不正に取得する行為の禁止(§4)

 何人も、不正アクセス行為の用に供する目的で、アクセス制御機能に係る他人の識別符号を取得してはならない。違反した者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられる。


(4) 不正アクセス行為を助長する行為の禁止(§5)

 何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、アクセス制御機能に係る他人の識別符号を、当該アクセス制御機能に係るアクセス管理者および当該識別符号に係る利用権者以外の者に提供してはならない。相手方に不正アクセス行為の目的があることを知りながら違反した者は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられる。

(例)不正に入手した他人のユーザー名とパスワードを知人に教えた。


(5) 他人の識別符号を不正に保管する行為の禁止(§6)

 何人も、不正アクセス行為の用に供する目的で、不正に取得されたアクセス制御機能に係る他人の識別符号を保管してはならない。違反した者は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられる。


(6) 識別符号の入力を不正に要求する行為(フィッシング行為)の禁止(§7)

 何人も、アクセス制御機能に係るアクセス管理者であると誤認させて、当該アクセス管理者が利用権者に対しアクセス制御機能に係る識別符号を特定電子計算機に入力することを求める旨の情報を、(a)インターネットを利用して公衆が閲覧することができる状態に置く行為や、(b)電子メールにより当該利用権者に送信する行為をしてはならない。違反した者は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられる。


特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(迷惑メール防止法)

(1) 目的(§1)

 迷惑メール防止法は、「一時に多数の者に対してされる特定電子メールの送信等による電子メールの送受信上の支障を防止する必要性が生じていることにかんがみ、特定電子メールの送信の適正化のための措置等を定めることにより、電子メールの利用についての良好な環境の整備を図り、もって高度情報通信社会の健全な発展に寄与することを目的とする」法律である。


(2) 特定電子メール(§2)

 この法律の規制の対象となる特定電子メールとは、電子メールの送信者が自己または他人の営業につき広告または宣伝を行うための手段として送信をする電子メールをいう。


(3) 特定電子メールの送信の制限(§3)

 送信者は、あらかじめ、特定電子メールの送信をするように求める旨または送信をすることに同意する旨を送信者に対し通知した者以外の者に対し、特定電子メールの送信をしてはならない。

 ただし、上記の通知をした者から特定電子メールの送信をしないように求める旨の通知を受けたときは、その通知に示された意思に反して、特定電子メールの送信をしてはならない。


(4) 表示義務(§4)

 送信者は、特定電子メールの送信にあたっては、その受信者が使用する通信端末機器の映像面に(a)当該送信者の氏名・名称、(b)受信拒否の通知を受けるための電子メールアドレスまたはURLなど所定の事項が正しく表示されるようにしなければならない。


(5) 送信者情報を偽った送信の禁止(§5)

 送信者は、送信者情報(電子メールの送信に用いた電子メールアドレスなど)を偽って特定電子メールの送信をしてはならない。


(6) 架空電子メールアドレスによる送信の禁止(§6)

 送信者は、自己または他人の営業のために多数の電子メールの送信をする目的で、架空電子メールアドレスをそのあて先とする電子メールの送信をしてはならない。


(7) 電気通信役務の提供の拒否(§11)

 電気通信事業者は、(a)送信者情報を偽った電子メールの送信がされた場合に、自己の電子メール通信役務の円滑な提供に支障を生じ、またはその利用者における電子メールの送受信上の支障を生ずるおそれがあると認められるとき、(b)一時に多数の架空電子メールアドレスをそのあて先とする電子メールの送信がされた場合において自己の電子メール通信役務の円滑な提供に支障を生ずるおそれがあると認められるとき、(c)その他電子メールの送受信上の支障を防止するため電子メール通信役務の提供を拒むことについて正当な理由があると認められる場合には、当該支障を防止するために必要な範囲内において、当該支障を生じさせるおそれのある電子メールの送信をする者に対し、電子メール通信役務の提供を拒むことができる。