• 一般知識ー1.個人情報保護
  • 2.行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(行政機関個人情報保護法)
  • 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(行政機関個人情報保護法)
  • Sec.1

1行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(行政機関個人情報保護法)

堀川 寿和2021/12/07 15:28

 個人情報保護法が民間事業者を規制対象としたのに対し、「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」(以下「行政機関個人情報保護法」という)は、国の行政機関が個人情報の取扱いに当たって守るべきルールを定め、個人の権利利益を保護するものである。

目的(§1)

 行政機関個人情報保護法は、「行政機関において個人情報の利用が拡大していることに鑑み、行政機関における個人情報の取扱いに関する基本的事項及び行政機関非識別加工情報(行政機関非識別加工情報ファイルを構成するものに限る。)の提供に関する事項を定めることにより、行政の適正かつ円滑な運営を図り、並びに個人情報の適正かつ効果的な活用が新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するものであることその他の個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする」法律である。

定義(§2)

(1) 行政機関

 この法律の規制の対象になるのは、すべての国の行政機関である(ただし、内閣を除く)。この行政機関には会計検査院も含まれる。地方公共団体は国の行政機関ではないので含まない。


(2) 個人情報

① 個人情報

 「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、次のいずれかに該当するものをいう。

(a) 当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む)
(b) 「個人識別符号」が含まれるもの

 個人情報は、生存する個人の情報であるので、死者の情報は含まない。しかし、死者の情報が、同時に死者の遺族の個人情報となる場合は、生存する個人の情報となる。また、個人情報は日本国民の情報に限られないため、外国人の情報も個人情報である。

 法人に関する情報は、個人に関する情報ではないため、個人情報に該当しない。

② 個人識別符号

 「個人識別符号」とは、次のいずれかに該当する文字、番号、記号その他の符号のうち、政令で定めるものをいう。

(a) 特定の個人の身体の一部の特徴を電子計算機の用に供するために変換(データ化)した文字、番号、記号その他の符号であって、当該特定の個人を識別することができるもの
(b) サービスの利用者等に割り当てられ、または個人に発行されるカードその他の書類に記載された文字、番号、記号その他の符号であって、特定の利用者等または個人を識別することができるもの


③ 要配慮個人情報

 「要配慮個人情報」とは、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報をいう。


(3) 保有個人情報

 「保有個人情報」とは、行政機関の職員が職務上作成し、または取得した個人情報であって、当該行政機関の職員が組織的に利用するものとして、当該行政機関が保有しているものをいう。

 ただし、行政文書に記録されているものに限られる。したがって、官報、白書、新聞、雑誌、書籍等のように不特定多数の者に販売することを目的として発行されるものに記録されているものは、保有個人情報に該当しない。


(4) 個人情報ファイル

 個人情報ファイルとは、保有個人情報を含む情報の集合物であって、次のものをいう。

(a) 一定の事務の目的を達成するために特定の保有個人情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したもの
(b) 一定の事務の目的を達成するために氏名、生年月日、その他の記述等により特定の保有個人情報を容易に検索することができるように体系的に構成したもの


図 行政機関個人情報保護法が定める「個人に関する情報」の相関関係



行政機関における「個人情報」の取扱い

(1) 個人情報の保有の制限等(§3)

 行政機関は、個人情報を保有するに当たっては、法令の定める所掌事務を遂行するため必要な場合に限り、かつ、その利用の目的をできる限り特定しなければならない。

 そして、この特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を保有してはならない。

 また、この利用目的を変更する場合には、変更前の利用目的と相当の関連性を有すると合理的に認められる範囲を超えて行ってはならない。


(2) 利用目的の明示(§4)

① 原則

 行政機関は、本人から直接書面(電磁的記録を含む)に記録された当該本人の個人情報を取得するときは、原則として、あらかじめ、本人に対し、その利用目的を明示しなければならない。

② 利用目的の明示の例外

 次の場合は、利用目的を明示する必要がない。

(a) 人の生命、身体または財産の保護のために緊急に必要があるとき
(b) 利用目的を本人に明示することにより、本人または第三者の生命、身体、財産その他の権利利益を害するおそれがあるとき
(c) 利用目的を本人に明示することにより、国の機関、独立行政法人等、地方公共団体または地方独立行政法人が行う事務または事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき
(d) 取得の状況からみて利用目的が明らかであると認められるとき


(3) 従事者の義務(§7)

 個人情報の取扱いに従事する行政機関の職員または職員であった者は、その業務に関して知り得た個人情報の内容をみだりに他人に知らせ、または不当な目的に利用してはならない。