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1株式

堀川 寿和2021/12/07 13:59

株式総論

株式会社における社員の地位を株式といい、株式を有する者を株主という。ここでは、株主の権利の種類やその内容、株式譲渡自由の原則およびその例外を中心に知識を整理しよう。


(1) 株式の意義

 『株式』とは、株式会社における社員の地位をいう。

 この株式は、原則として、均一の割合的単位に細分化されており、個々の株主は複数の株式を取得することができる。


(2) 株主の権利

① 種類

(a) 自益権

 『自益権』とは、株主が株式会社から経済的利益を受けることを目的とする権利をいう。

具体的には、剰余金の配当を受ける権利(105条1項1号)や残余財産の分配を受ける権利(同項2号)等がこれに当たる。

(b) 共益権

 『共益権』とは、株主が株式会社の経営に参与することを目的とする権利をいう。具体的には、株主総会における議決権(105条1項3号)等がこれに当たる。


② 行使

 株式が2以上の者の共有に属するときは、株式会社が権利を行使することに同意した場合を除いて、共有者は、当該株式についての権利を行使する者1人を定め、株式会社に対し、その者の氏名または名称を通知しなければ、当該株式についての権利を行使することができない(106条)。

(3) 株主平等の原則

① 意義

 『株主平等の原則』とは、株主は、株主としての資格に基づく株式会社に対する法律関係においては、その有する株式の内容および数に応じて平等の取扱いを受けるという原則をいう(109条1項)。

② 内容

(a) 内容の平等

 『内容の平等』とは、各株式の内容が、同一でなければならないことをいう。この例外として、内容の異なる種類の株式(108条)等が認められている。

(b) 取扱いの平等

 「取扱いの平等」とは、各株式の内容および数が同一である限り、同一の取扱いがされなければならないことをいう。

 この例外として、会社法上の権利の行使に当たり一定期間の株式の保有を要件とするもの(297条1項等)または総株主の議決権の一定割合の株式の保有を要件とするもの(297条等)もしくは一定数の株式の保有を要件とするもの(303条等)等が認められている。


cf. 公開会社(=その発行する全部または一部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない株式会社)でない株式会社おいては、i) 剰余金の配当を受ける権利、ii) 残余財産の分配を受ける権利、iii) 株主総会の議決権に関する事項について、株主ごとに異なる取扱いを行う旨を定款で定めることができる(109条2項)。


(4) 株式の内容についての特別の定め

 株式会社は、その全部の株式の内容として、次の事項を定めることができる(107条)。

1. 譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要すること

2. 当該株式について、株主が当該株式会社に対してその取得を請求することができること

3. 当該株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること。


cf. 1. は譲渡制限株式(=株式会社がその発行する株式の内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定めを設けている場合における当該株式)、2. は取得請求権付株式(=株式会社がその発行する株式の内容として株主が当該株式会社に対して当該株式の取得を請求することができる旨の定めを設けている場合における当該株式)、3. は取得条項付株式(=株式会社がその発行する株式の内容として当該株式会社がー定の事由が生じたことを条件として当該株式を取得することができる旨の定めを設けている場合における当該株式)の規定である。 なお、全部の株式の内容が同一であるため、内容の異なる種類の株式がなく、種類株式とはならない。


(5) 異なる種類の株式

 株式会社は、次の事項について異なる定めをした内容の異なる2以上の種類の株式を発行することができる。ただし、指名委員会等設置会社および公開会社は、9. の事項についての定めがある種類の株式を発行することができない(108条)。

1. 剰余金の配当

2. 残余財産の分配

3. 株主総会において議決権を行使することができる事項

4. 譲渡による当該種類の株式の取得について当該株式会社の承認を要すること

5. 当該種類の株式について、株主が当該株式会社に対してその取得を請求することができること

6. 当該種類の株式について、当該株式会社が一定の事由を生じたことを条件としてこれを取得することができること

7. 当該種類の株式について、当該株式会社が株主総会の決議によってその全部を取得すること

8. 株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会または取締役会、清算人会設置会社にあっては株主総会または清算人会)において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とするもの

9. 当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役または監査役を選任すること


cf. 1. は剰余金の配当に関する優先株(=剰余金の配当について優先的な取扱いを受ける株式)・劣後株(これに対して、標準となる株式を「普通株」と呼ぶ)、2.は残余財産の分配に関する優先株・劣後株、3.は議決権制限株式、4.は譲渡制限株式、5.は取得請求権付株式、6.は取得条項付株式、7.は全部取得条項付株式の規定である。なお、6.と7.の基本的な違いは、株式会社の取得要件にある(6.の場合は「一定の事由」、7.の場合は「株主総会の決議」が必要)。


(6) 発行可能株式総数

① 意義

 『発行可能株式総数』とは、株式会社が発行することができる株式の総数をいう(37条1項)。


② 設立時における発行可能株式総数に関する定款の定め

(a) 発行可能株式総数に関する定款の定め

 株式会社の定款には、発行可能株式総数の定めを記載し、または記録しなければならず、これを定款で定めていない場合には、株式会社の成立の時までに、発起人全員の同意によって、定款を変更して発行可能株式総数の定めを設けなければならない(37条1項)。

(b) 発行可能株式総数に関する定款の定めの変更

 発起人は、発行可能株式総数を定款で定めている場合には、株式会社の成立の時までにその全員の同意によって、発行可能株式総数についての定款の変更をすることができる(37条2項)。 

(c) 「設立時発行株式の総数」との関係

 設立時発行株式の総数は、設立しようとする株式会社が公開会社である場合、発行可能株式総数の4分の1を下ることができない(37条3項)。


③ 設立後における発行可能株式総数に関する定款の定め

(a) 発行可能株式総数に関する定款の定めの廃止

 株式会社は、定款を変更して発行可能株式総数についての定めを廃止することができない(113条1項)。

(b) 発行可能株式総数に関する定款の定めの変更

i) 定款を変更して発行可能株式総数を減少する場合

 変更後の発行可能株式総数は、当該定款の変更が効力を生じたときにおける発行済株式の総数を下ることができない(113条2項)。

ii) 定款を変更して発行可能株式総数を増加する場合

 株式会社が公開会社でないときを除いて、変更後の発行可能株式総数は、当該定款の変更が効力を生じたときにおける発行済株式の総数の4倍を超えることができない(113条3項)。


(7) 株主の権利の行使に関する利益の供与の禁止

① 株主の権利の行使に関する利益の供与の禁止

 株式会社は、何人に対しても、株主の権利の行使に関し、財産上の利益の供与(当該株式会社またはその子会社の計算においてするものに限る)をしてはならない(120条1項)。


cf. 株式会社が特定の株主に対して無償で財産上の利益の供与をしたときは、当該株式会社は、株主の権利の行使に関し、財産上の利益の供与をしたものと推定される。また、株式会社が特定の株主に対して有償で財産上の利益の供与をした場合において、当該株式会社またはその子会社の受けた利益が当該財産上の利益に比して著しく少ないときも、同様の扱いとする(120条2項)。


② 利益の供与禁止規定に違反して利益の供与がされた場合

(a) 利益の供与を受けた者

 利益の供与を受けた者は、これを当該株式会社またはその子会社に返還しなければならない(120条3項)。

(b) 利益の供与をすることに関与した取締役

 利益の供与をすることに関与した取締役(指名委員会等設置会社にあっては、執行役を含む)として法務省令で定める者は株式会社に対して、連帯して、供与した利益の価額に相当する額を支払う義務を負う。ただし、その者(当該利益の供与をした取締役を除く)がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合はこの限りでない(120条4項)。

 なお、取締役の支払義務は、総株主の同意がなければ免除することができない(同条5項)。


株主名簿

(1) 意義

 株主名簿とは、株主(および株券)に関する事項を明らかにするために、会社法の規定により作成される帳簿である。株主名簿には株主の氏名・住所、株主の有する株式の数、株式取得日などの株主名簿記載事項を記載し記録される(121条)。株主名簿は会社に対する株主資格を決定する機能があり、会社は株主名簿に記載されている株主に権利を行使させる。株主の権利行使は頻繁に変動する多数の株主によって行われるので、株主名簿を作成することで会社は事務処理を円滑に行うことができる。


(2) 名義書換

① 名義書換請求

 株式を譲り受けたときは、株主名簿の名義を書換えておかないと、会社に対して株主としての地位を主張することができず(130条1項)、株主総会における議決権の行使や配当の請求など、株主としての権利を行使することができない。株券発行会社においては、当事者間では株券を譲渡することで株式の譲渡の効果が生じるが(128条1項)、この場合も、株式会社に対しては株主名簿の名義書換を行わないと株主の地位を主張することができない。

 そこで、株式の譲受人は会社に対して名義書換請求権を有しており、株式を譲り受けた者はその株式を発行した会社に対して、当該株式にかかる株主名簿記載事項を株主名簿に記載し記録することを請求することができる(133条1項)。

 なお、株主名簿の名義書換未了の者を、株式会社の側から株主と認めて権利行使させるのは問題ないとされる。


② 名義書換の拒絶

 名義書換請求が適切に行われた場合は、請求人が権利者でないことを会社が立証したときなどを除いて、原則として請求を拒絶することはできない。なお、株券発行会社の場合に、株主から株券の盗難届が出ているというだけでは、名義書換を請求してきた株券の所持人が権利者でないことの証明にはならない。悪意または重大な過失なく株券の交付を受けた者は、その株券に係る株式についての権利を取得する(131条2項)。これを株式の善意取得というが、この可能性が否定できないからである。

(3) 株主名簿の備置きおよび閲覧等

 株式会社は、株主名簿をその本店(株主名簿管理人がある場合にあっては、その営業所)に備え置かなければならず(125条1項)、株主および債権者は、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。この場合においては、当該請求の理由を明らかにしてしなければならない(同条2項)。

1. 株主名簿が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧または謄写の請求
2. 株主名簿が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧または謄写の請求

 株式会社は、上記の請求があったときは、一定の場合を除き、これを拒むことができない(同条3項)。


(4) 株主名簿記載事項を記載した書面の交付等

 株主名簿に記載または記録された株主は、株券発行会社を除いて、株式会社に対し、当該株主についての株主名簿に記載され、もしくは記録された株主名簿記載事項を記載した書面の交付または当該株主名簿記載事項を記録した電磁的記録の提供を請求することができる(122条1項、4項)。


(5) 株主名簿管理人

 株式会社は、株主名簿管理人を置く旨を定款で定め、株主名簿に関する事務を行うことを委託することができる(123条)。


【株主名簿管理人】

株式会社に代わって株主名簿の作成および備え置きその他の株主名簿に関する事務を行う者をいう。


(6) 株主名簿の基準日

株式会社は、一定の日(基準日)を定めて、その日に株主名簿に記載・登録されている株主を、その権利を行使することができる者と定めることができる(124条1項)。たとえば、株主総会に参加できる株主を、決算日に株主として株主名簿に記載・登録されていた者とすることができる。なお、基準日以前に株式を取得したもので、株主名簿に株主として記載・登録されていない者を、会社のほうから株主として扱い、権利の行使を許容することは許される。


株式の譲渡

(1) 株式の譲渡

① 株式譲渡自由の原則

 株式会社においては、株主の個性は問題とならず、また資本維持の原則がとられているので株主は会社から自由に出資の払戻しを受けることができないから、株主に投下資本回収の手段を保障するため、原則として、株式の自由な譲渡が認められている(127条)。投下資本の回収を認めないと、多くの出資者から資金を集めることが困難になるからである。

 なお、株式の譲渡を株式会社に対抗するためには、その株式を取得した者の氏名・名称、住所を株主名簿に記載・登録しなければならない(130条1項・2項)。


② 株式譲渡自由の原則の例外

 株式譲渡自由の原則には、いくつかの例外があるが、主なものは次の通りである。

(a) 権利株の譲渡制限

 株式会社設立前の株式引受人の地位のことを権利株という。この権利株の譲渡は、株式会社に対抗することができない(35条、50条2項、63条2項、208条4項)。ただし、権利株の譲渡は、その当事者間では有効とされる。

 権利株の譲渡が制限されるのは、株式引受人が交代すると、設立手続や募集株式発行などの手続が煩雑になって滞ってしまうので、これを防ぐためである。したがって、株式会社のほうから権利株譲渡の効力を認めることは差し支えない。


(b) 株券発行前の譲渡制限

 株券発行会社の場合、株券の発行前にした譲渡は、株券発行会社に対し、その効力を生じない(128条2項)。ただし、株券発行前の株式譲渡であっても、その当事者間では有効とされる。

 株券発行前の株式の譲渡が制限されるのは、株式の取得から株券の発行までには通常時間差が生じるが、株券発行前に株主が交代すると、株券発行事務が滞り、株券の発行を正確かつ円滑に行うことができなくなってしまうので、これを防止するためである。

 なお、判例によると、株券発行会社が、株券の発行に必要な合理的期間を経過したにもかかわらず株券を発行しない場合には、株券発行前に株式が譲渡されたとしても、会社は株式の譲受人を株主として扱わないといけないとする(最判昭47.11.8)。


(c) 定款による譲渡制限

 株式会社は、その発行する全部または一部の株式の内容として、譲渡によって株式を取得する際には会社の承認を要すると定款に定めることができる(107条1項1号、108条1項4号)。これを、譲渡制限株式という。会社の承認なく、譲渡制限株式を譲渡したときも、その譲渡は会社との間では無効であるが、当事者間では有効とされる。

 このような譲渡制限株式が認められるのは、家族や友人だけで経営しているような比較的小規模な会社の場合は、株主を人的な信頼関係のある者に限定したいという要請があるからである。なお、すべての株式が譲渡制限株式となっている会社を非公開会社という。それに対して、譲渡制限株式がまったくないか、一部のみである会社を公開会社という。 

 株式の譲受人が会社に譲渡承認請求をした場合に、会社が承認しないときは、その株式を会社が買い取るか、買い取り人を指定しなければならない(140条)。所定期間の間に、会社が承認するかしないかの通知をしなかったときは、譲渡を承認する旨の通知をしたものとみなされる(145条)。


③ 株式の譲渡の効力・対抗要件

(a) 株券発行会社

 株式の譲渡は、自己株式の処分による株式の譲渡を除いて、当該株式に係る株券を交付しなければ、その効力を生じない(128条1項)。

cf. 株券の占有者は、当該株券に係る株式についての権利を適法に有するものと推定される(131条1項)。この結果、会社は、株券の占有者が無権利者(例えば、株券の拾得者や窃取者)であっても、この者の権利行使に応ずれば、悪意または重大な過失がない限り免責され、真の権利者(例えば、株券の遺失主や被窃取者)からの責任追及を免れることができる。
 また、無権利者から株券の交付を受けた者であっても、悪意または重大な過失がない限り、当該株券に係る株式についての権利を取得する(株式の即時取得、同条2項)。

また、株式の譲渡は、その株式を取得した者の氏名または名称および住所を株主名簿に記載し、または記録しなければ、株式会社に対抗することができない(130条2項)。


(b) 株券発行会社以外の会社

 株式の譲渡は、その株式を取得した者の氏名または名称および住所を株主名簿に記載し、または記録しなければ、株式会社その他の第三者に対抗することができない(130条1項)。

Cf. 平成17年改正前商法における定款による株式の譲渡制限(平成17年の商法の改正により、譲渡制限株式となった)に違反し、取締役会の承認を得ないでなされた株式の譲渡は、会社に対する関係ではその効力を生じないが、当事者間では有効である(最判S48.6.15)。


④ 親会社株式の取扱い

(a) 親会社株式の取得

ⅰ)親会社株式の取得の原則禁止

 子会社は、その親会社である株式会社の株式(以下この条において「親会社株式」という。)を取得してはならない(135条1項)。

ⅱ)例外

 次の場合、子会社はその親会社の株式を例外的に取得することができる(135条2項)。

1. 他の会社(外国会社を含む)の事業の全部を譲り受ける場合において当該他の会社の有する親会社株式を譲り受ける場合

2. 合併後消滅する会社から親会社株式を承継する場合

3. 吸収分割により他の会社から親会社株式を承継する場合

4. 新設分割により他の会社から親会社株式を承継する場合 

5. 1.~4.の場合のほか、法務省令で定める場合

※ 1.~5.の他に株式交換等の場合において、親会社株式を取得することができる(800条)。


(b) 親会社株式の処分

 子会社は、相当の時期にその有する親会社株式を処分しなければならない(135条3項)。


【子会社】

会社がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社その他の当該会社がその経営を支配しているものとして、法務省令で定めるものをいう(2条3号)


【親会社】

株式会社を子会社とする会社その他の当該株式会社の経営を支配している法人として法務省令で定めるものをいう(2条4号)。


⑤ 譲渡制限株式の譲渡に係る承認手続

(a) 承認の請求

ⅰ)株主からの承認の請求

 譲渡制限株式の株主は、その有する譲渡制限株式を他人(当該譲渡制限株式を発行した株式会社を除く)に譲り渡そうとするときは、当該株式会社に対し、当該他人が当該譲渡制限株式を取得することについて承認をするか否かの決定をすることを請求することができる(136条)。

ⅱ)株式取得者からの承認の請求

 譲渡制限株式を取得した株式取得者は、株式会社に対し、当該譲渡制限株式を取得したことについて承認をするか否かの決定をすることを請求することができる(会社法137条1項)。

 この請求は、利害関係人の利益を害するおそれがないものとして法務省令で定める場合を除き、その取得した株式の株主として株主名簿に記載され、もしくは記録された者またはその相続人その他の一般承継人と共同してしなければならない(同条2項)。


(b) 譲渡等の承認の決定等

 株式会社が譲渡等の承認をするか否かの決定をするには、定款に別段の定めがある場合を除いて、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければならない(139条1項)。

 そして、株式会社は、当該決定をしたときは、譲渡等承認請求をした者に対し、当該決定の内容を通知しなければならない(同条2項)。


(2) 株式の質入れ

① 意義

 『株式の質入れ』とは、株式について質権(=債務が弁済されるまで株式を留置し、債務の弁済がされないときは、当該株式を売却する等により優先弁済を受ける担保物権)を設定することをいう。会社法は、株主が、その有する株式に質権を設定することを認めている(146条1項)。 


② 種類

(a) 略式質

 『略式質』とは、株券発行会社の株式の質入れにおいて、当事者間の質権設定の合意と株券の交付を効力要件とし(146条2項)、質権者が継続して当該株式に係る株券を占有することを株券発行会社その他の第三者に対する対抗要件とする質権をいう(147条2項)。

(b) 登録質

 『登録質』とは、当事者間の質権設定の合意(株券発行会社の株式の質入れにあっては、当該株式に係る株券の交付も必要)を効力要件とし、質権者の氏名または名称および住所を株主名簿に記載し、または記録することを株式会社その他の第三者に対する対抗要件とする質権をいう(147条1項)。


③ 株式の質入れの効果

 質権の効力として、留置権(民法347条)、優先弁済受領権(同法342条)、物上代位権(同法350条、304条)、転質権(同法348条)が認められる。

 また、株式会社が、剰余金の配当、残余財産の分配等の行為をした場合には、株式を目的とする質権は、当該行為によって当該株式の株主が受けることのできる金銭等(金銭その他の財産をいう)について存在する(151条)。ただし、登録株式質権者(=質権者の氏名等が株主名簿に記載され、または記録された質権者)は、差押え(民法350条、304条1項但書)を要せず、直接会社から金銭等(金銭に限る)を受領し、他の債権者に先立って自己の債権の弁済に充てることができる(154条1項)。


(3) 株式会社による自己の株式の取得

 自己株式とは、株式会社が有する自己の株式のことをいう(113条4項括弧書)。株式会社は、一定の場合に、自己株式を取得することを認められている(155条)。会社は、取得した自己株式を、とくに制限なく保有することができる。つまり、一定期間内に処分する義務はない。

 自己株式の取得は、すべての株主に申込機会を与えて行う場合は株主総会の普通決議によって行われる。それに対して、特定の株主から取得する場合には株主総会の特別決議を要する。なお、この特別決議において、株式の売主となる株主はその議案について議決権を行使することができない(160条4項)。


(4) 株式の消却

 株式の消却とは、特定の株式を消滅させることをいう。株式の消却は自己株式についてのみ行われる。これにより、発行済株式の総数は減少する。株式会社が株式を消却する場合は、取締役非設置会社の場合は取締役が、取締役会設置会社の場合は取締役会が決定する(178条)。