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1株式会社の設立

堀川 寿和2021/12/07 13:24

意義

 株式会社の設立とは、株式会社を新たに作ることをいう。会社の根本規則である定款を作成し、株主となる者の募集および確定を行い、出資を履行し、会社の機関を選定することで株式会社の実体が形成される。その上で、株式会社の本店所在地にて設立の登記をすることで会社は成立する。法定の手続きをふんでいれば、会社の設立は認められる。この考え方を準則主義という。


株式会社の設立方法

 株式会社の設立方法には、発起設立と募集設立の2つの方法がある。発起設立であれ募集設立であれ、各発起人は、株式会社設立に際し、設立時発行株式を1株以上引受けなければならない(25条2項)。


(1) 発起設立

 発起設立とは、発起人が設立時発行株式(=株式会社の設立に際して発行する株式)の全部を引き受ける方法をいう(25条1項1号)。


【発起人】

 発起人とは株式会社の設立を企画する者で、とくに定款に発起人として署名した者をいう。発起人は1人でも構わない。複数人いるときは全員で署名する。


(2) 募集設立

 募集設立は、発起人が設立時発行株式を引き受けるほか、設立時発行株式を引き受ける者の募集をする方法をいう(25条1項2号)。募集設立は、株式の引き受けを募集する必要があり、株式引受人を保護するために、発起設立よりも設立手続は複雑かつ厳格になる。


株式会社の設立手続

(1) 概要

 株式会社の設立手続は、おおむね次のようになっている。

定款の作成(26条~29条)
    ↓
定款の認証(30条)
    ↓
発起人の設立時発行株式の引受け(25条2項参照)


【発起設立】

出資の履行が完了
      ↓
発起人の出資の履行(34条)
      ↓
設立時役員等の選任(38条)
      ↓
設立時取締役等による調査(46条)


【募集設立】

設立時発行株式を引き受ける者の募集(57条)
       ↓
設立時募集株式の申込み(59条)
       ↓
設立時募集株式の割当て(60条)
       ↓
設立時募集株式の払込金額の払込み(63条)
       ↓
創立総会の招集(65条)
       ↓
設立時取締役等の選任(88条)
       ↓
設立時取締役等による調査(93条)
       ↓
設立の登記(49条)


(2) 定款の作成

① 定款の作成

 株式会社を設立するには、発起人が定款を作成し、その全員がこれに署名し、または記名押印しなければならない(会社法26条1項)。

 この定款は、電磁的記録をもって作成することができる(同条2項)。


② 定款の記載または記録事項

 定款の記載事項は、絶対的記載事項、相対的記載事項、任意的記載事項の3つに分けられる。

絶対的記載事項定款に必ず記載しておかなければならない事項記載がなければ、定款自体が無効になる。
相対的記載事項決定した場合は、定款に記載しておかなければならない事項記載がなくても、定款自体は無効にならないが、その決定の効力が無効になる。
任意的記載事項決定した場合であっても、定款に記載するかどうかは任意とされている事項記載をしなくても、その効力は有効である。


(a) 絶対的記載事項

 株式会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、または記録しなければならない(会社法27条)。

ⅰ)目的
ⅱ)商号
ⅲ)本店の所在地
ⅳ)設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
ⅴ)発起人の氏名または名称および住所


(b) 相対的記載事項

 株式会社を設立する場合には、次に掲げる事項は、定款に記載し、または記録しなければ、その効力を生じない(会社法28条)。

ⅰ)金銭以外の財産を出資する者の氏名または名称、当該財産およびその価額ならびにその者に対して割り当てる設立時発行株式の数(=現物出資)
ⅱ)株式会社の成立後に譲り受けることを約した財産およびその価額ならびにその譲渡人の氏名または名称(=財産引受)
ⅲ)株式会社の成立により発起人が受ける報酬その他の特別の利益およびその発起人の氏名または名称
ⅳ)株式会社の負担する設立に関する費用(定款の認証の手数料その他株式会社に損害を与えるおそれがないものとして法務省令で定めるものを除く。)

上記のⅰ)~ⅳ)を、変態設立事項という。変態設立事項が相対的記載事項とされるのは、発起人等がその権限を濫用して会社に不利益を与える危険性が高い事項であるからである。

(c) その他の相対的記載事項、および任意的記載事項

 変態設立事項のほか、株式会社の定款には、この法律の規定により定款の定めがなければその効力を生じない事項(相対的記載事項)およびその他の事項でこの法律の規定に違反しないもの(任的記載事項)を記載し、または記録することができる(会社法29条)。


③ 定款の認証

 定款は、公証人の認証を受けなければ、その効力を生じない(会社法30条)。

 公証人の認証を受けた定款は、株式会社の成立前は、一定の場合を除き、これを変更することができない(同条2項)。


(3) 発起人の設立時発行株式の引受け等

① 発起人の設立時発行株式の引受け

 各発起人は、株式会社の設立に際し設立時発行株式を1株以上引き受けなければならない(25条2項)。発起設立の場合は全株式を、募集設立の場合はその一部(最低1株以上)を引受け、残余の株式については株式引受人を募集する(57条1項)。


② 発起人の出資の履行

 発起人は、設立時発行株式の引受け後遅滞なく、その引き受けた設立時発行株式につき、その出資に係る金銭の全額を払込み、またはその出資に係る金銭以外の財産の全部を給付しなければならない。(34条1項)。発起人のうち出資の履行をしていないものがある場合には、発起人は、当該出資の履行をしていない発起人に対して、期日を定め、その期日までに当該出資の履行をしなければならない旨を通知しなければならず、通知を受けた発起人が、期日までに出資の履行をしないときは、設立時発行株式の株主となる権利を失う(36条)。


(4) 募集による設立

① 設立時発行株式を引き受ける者の募集等

 発起人が設立時発行株式の全部を引き受けることができない場合、発起人は、設立時発行株式を引き受ける者を募集し、募集に応じて申し込みがあると、その者に対して設立時募集株式の数が割当てられる。割当によって引受が確定し、引受人が最終的に払込をすることで、会社設立時に株主になることができる。なお、設立時募集株式の株式引受人が払込を行わない場合は、その者は当然に失権する(63条3項)。

 そして、設立時募集株式の引受人は、設立時募集株式と引換えにする金銭の払込みの期日またはその期間内に、発起人が定めた銀行等の払込みの取扱いの場所において、それぞれ設立時募集株式の払込金額の全額の払込みをしなければならない(63条1項)。


② 創立総会

 創立総会は設立時株主で構成される設立中の会社の最高意思決定機関である。募集設立を行う場合は、発起人は、設立時発行株式の払込期日または払込期間の末日のうち最も遅い日以後において、遅滞なく、創立総会を招集しなければならない(65条1項)。発起設立の場合は、創立総会は開催されない。

 この創立総会において、設立に関する事項の報告(87条)や設立時取締役等の選任等(88条以下)が行われる。なお、創立総会は、この他に、株式会社の設立の廃止、創立総会の終結その他株式会社の設立に関する事項について決議をすることができる(66条)。


(5) 設立過程の調査等

① 設立時取締役の選任

 発起設立の場合は、発起人が設立時取締役を選任する(38条)。募集設立の場合は、創立総会で設立時取締役を選任する(88条)。

② 調査

 選任された設立時取締役は、現物出資財産等の価額が相当であるか、出資の履行が完了しているか等を調査する(46条1項・93条1項)。

(6) 設立の登記

① 登記の申請

 株式会社の設立の登記は、その本店の所在地において、一定の日(例えば設立時取締役等による調査が終了した後、創立総会の終結の日)から2週間以内にしなければならない(911条1項・2項)。

② 登記事項

 株式会社の設立の登記には、一定の事項を登記しなければならない(911条3項)。主な登記事項は、次の通りである。

1. 目的
2. 商号
3. 本店および支店の所在場所
4. 株式会社の存続期間または解散の事由についての定款の定めがあるときは、その定め
5. 資本金の額
6. 発行可能株式総数
7. 発行する株式の内容(種類株式発行会社にあっては、発行可能種類株式総数および発行する各種類の株式の内容)
8. 単元株式数についての定款の定めがあるときは、その単元株式数
9. 発行済株式の総数ならびにその種類および種類ごとの数
10. 株券発行会社であるときは、その旨
11. 株主名簿管理人を置いたときは、その氏名または名称および住所ならびに営業所
12. 新株予約権を発行したときは、次に掲げる事項
イ 新株予約権の数
ロ 236条1項1号~4号に掲げる事項
ハ 236条3項各号に掲げる事項を定めたときは、その定め
ニ ロおよびハに掲げる事項のほか、新株予約権の行使の条件を定めたときは、その条件
ホ 236条1項7号および238条1項2号に掲げる事項
ヘ 238条1項3号に掲げる事項を定めたときは、募集新株予約権の払込金額
13. 取締役(監査等委員会設置会社の取締役を除く)の氏名
14. 代表取締役の氏名および住所(23.に規定する場合を除く)
15. 取締役会設置会社であるときは、その旨
16. 会計参与設置会社であるときは、その旨ならびに会計参与の氏名または名称および378条1項の場所
17. 監査役設置会社(監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社を含む)であるときは、その旨および次に掲げる事項
イ 監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社であるときは、その旨
ロ 監査役の氏名
18. 監査役会設置会社であるときは、その旨および監査役のうち社外監査役であるものについて社外監査役である旨
19. 会計監査人設置会社であるときは、その旨および会計監査人の氏名または名称
20. 346条4項の規定により選任された一時会計監査人の職務を行うべき者を置いたときは、その氏名または名称
21. 373条1項の規定による特別取締役による議決の定めがあるときは、次に掲げる事項
イ 373条1項の規定による特別取締役による議決の定めがある旨
ロ 特別取締役の氏名
ハ 取締役のうち社外取締役であるものについて、社外取締役である旨
22. 監査等委員会設置会社であるときは、その旨および次に掲げる事項
イ 監査等委員である取締役およびそれ以外の取締役の氏名
ロ 取締役のうち社外取締役であるものについて、社外取締役である旨
ハ 399条の13第6項の規定による重要な業務執行の決定の取締役への委任についての定款の定めがあるときは、その旨
23. 指名委員会等設置会社であるときは、その旨および次に掲げる事項
イ 取締役のうち社外取締役であるものについて、社外取締役である旨
ロ 各委員会の委員および執行役の氏名
ハ 代表執行役の氏名および住所
24. 426条1項の規定による取締役、会計参与、監査役、執行役または会計監査人の責任の免除についての定款の定めがあるときは、その定め
25. 427条1項の規定による非業務執行取締役等が負う責任の限度に関する契約の締結についての定款の定めがあるときは、その定め
26. 440条3項の規定による措置をとることとするときは、同条1項に規定する貸借対照表の内容である情報について不特定多数の者がその提供を受けるために必要な事項であって法務省令で定めるもの
27. 939条1項の規定による公告方法についての定款の定めがあるときは、その定め
28. 27.の定款の定めが電子公告を公告方法とする旨のものであるときは、次に掲げる事項
イ 電子公告により公告すべき内容である情報について不特定多数の者がその提供を受けるために必要な事項であって法務省令で定めるもの
ロ 939条3項後段の規定による定款の定めがあるときは、その定め
29. 27.の定款の定めがないときは、939条4項の規定により官報に掲載する方法を公告方法とする旨


③ 登記の効力

 登記すべき事項は、登記の後でなければ、これをもって善意の第三者に対抗することができない。また、登記の後であっても、第三者が正当な事由によってその登記があることを知らなかったときは、これをもって善意の第三者に対抗することができない(908条1項)。


(7) 会社の成立

 株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する(49条)。