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1株式会社の機関

堀川 寿和2021/12/07 12:44

 会社の意思決定や活動をする者として、法によって定められている自然人ないし会議体を「会社の機関」という。本節では、株式会社の各機関がどのような権限を有し、互いにどのような関係を持っているかを中心に学習する。

機関総論

(1) 意義

 会社は法人である(3条)が、観念的な存在であるから、会社自ら意思決定をし、活動をすることはできない。そこで、ある自然人ないし会議体の意思決定や活動を会社自体の意思決定や活動と認める必要がある。このように、会社の意思決定や活動をする者として、法によって定められている自然人ないし会議体を『会社の機関』という。


(2) 株式会社の機関の特徴

① 所有と経営の分離

 株主は株式会社の共同所有者であるから、会社の経営についても、本来、全て共同して処理することができるはずである。しかし、不特定多数の株主の存在を想定している公開会社にあっては、株主が日常的に参集することは困難であり、また一般に株主は会社経営の意思もなければ、能力もない。そこで、会社法は、会社経営が健全かつ合理的に行われるように、所有者たる株主と経営者たる取締役を分離することとした。このため、公開会社については、取締役が株主でなければならない旨を定款で定めることができないと規定している(331条2項本文)。


【公開会社】

その発行する全部または一部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない株式会社をいう(2条5号)。


② 機関の分化

 株式会社のうち公開会社である大会社にあっては、不特定多数の株主が参集し、多数の会社債権者が現れることが想定されている。このような会社においては、株主および会社債権者の利益を保護するため、機関が幾つも分化している。


【大会社】

次に掲げる要件のいずれかに該当する株式会社をいう(2条6号)。

1. 最終事業年度に係る貸借対照表に資本金として計上した額が5億円以上であること。

2. 最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上であること。

 会社法における主な機関は、次の通りである。

株主総会株主により組織される会議体をいい、株式会社の基本的事項について決議する権限を有する必置機関(=必要的設置機関)である
取締役定款に別段の定めがある場合を除き、株式会社(取締役会設置会社を除く)の業務を執行する機関である(348条1項)。取締役自体は全ての株式会社に存在するが、取締役会設置会社においては『機関』ではない
取締役会すべての取締役で組織される会議体をいい、株式会社の業務執行の決定等の権限を有する(362条1項2項)
監査役株式会社の取締役(会計参与設置会社にあっては、取締役および会計参与)の職務の執行を監査する権限を有する者をいう(381条1項)
監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社には設置することができない(327条4項)
監査役会すべての監査役で組織する会議体をいい、次に掲げる職務を行う(390条1項、2項)
1. 監査報告の作成
2. 常勤の監査役の選定および解職
3. 監査の方針、監査役会設置会社の業務および財産の状況の調査の方法その他の監査役の職務の執行に関する事項の決定
監査等委員会すべての監査等委員である取締役で組織する会議体をいい、次に掲げる職務を行う(399条の2第1項、2項、3項)。
1. 取締役(会計参与設置会社にあっては、取締役および会計参与)の職務の執行の監査および監査報告の作成
2. 株主総会に提出する会計監査人の選任および解任ならびに会計監査人を再任しないことに関する議案の内容の決定
3. 監査等委員である取締役以外の取締役の人事(選任もしくは解任または辞任)および報酬等についての監査等委員会の意見の決定
指名委員会等および執行役指名委員会等とは、指名委員会、監査委員会および報酬委員会をいい(2条12号)、各委員会は委員3人以上で組織される(400条1項)。
執行役とは、指名委員会等設置会社において、①取締役会の決議によって委任を受けた指名委員会等設置会社の業務の執行の決定、②指名委員会等設置会社の業務の執行の権限を有する者をいう(418条)


株主総会

(1) 意義・権限

 株主総会とは、株主により組織される会議体であり、株主の意思によって会社の意思を決定する株式会社の最高意思決定機関である。

 株主総会には定時株主総会と臨時株主総会の2種類がある。定時株主総会は毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならず、臨時株主総会は必要に応じて随時召集される(296条1項・2項)。

 株主総会は、会社法に規定する事項および株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる(295条1項)。つまり、会社に関することであれば、何でも決定することができる。ただし、株主が多数いる大規模な会社ほど、いちいち株主総会を開いて会社の意思を決定することは不可能であるし、合理的ではない。そこで、タイムリーで適切な意思決定を行うために、取締役会設置会社においては、会社法に規定する事項および定款で定めた事項に限り、決議をすることができる(295条2項)とする。つまり、会社の基本事項の意思決定については株主総会で行い、その他の会社の経営に関しては経営の専門家の集まりである取締役会に任せることにした。


(2) 定款による権限の委譲の限界

 会社法の規定により株主総会決議を必要とする事項について、取締役、執行役、取締役会その他の株主総会以外の機関が決定することができることを内容とする定款の定めは、その効力を有しない(295条3項)。これは、株主総会で意思決定するべきとされる基本事項は、株主の利益に影響を及ぼす重要なものであるため、株主自身による意思決定を確保するためである。


(3) 株主総会の招集

① 招集の通知

 株主への株主総会の招集通知は、原則として、公開会社の場合は2週間前までに、非公開会社の場合は1週間前までに発しなければならない(299条1項)。この手続きは、株主全員に出席の機会と準備の余裕を与えるため、またどの集会が株主総会であるのかについての紛争を未然に防ぐために設けられている。なお、株主全員の同意があるときは、招集手続きを省略することができる(300条)。

 また、判例によると、招集権者による株主総会の招集の手続を欠く場合であっても、株主全員がその開催に同意して出席していれば、株主総会の権限に属する事項について決議したときには、当該決議は株主総会決議として有効に成立する(最判昭60.12.20)。このように、招集手続きによらず、株主全員が同意して開催された株主総会は、全員出席総会とよばれる。

 なお、書面投票・電子投票制度のある会社は、公開会社・非公開会社ともに2週間前までの招集通知が必要となり、また、株主全員の同意があったとしても招集手続きを省略することができない。

 また、非公開会社(書面投票・電子投票制度のある会社を除く)でかつ取締役非設置会社の場合は、定款で1週間を下回る期間を定めることもできる。

② 招集権者

(a) 取締役による招集

 取締役会非設置会社では、取締役が招集する(296条3項・298条1項)。

 取締役会設置会社では、取締役会の決議により召集を決定し、取締役が招集する。(296条3項・298条4項)。

(b) 株主による招集

 公開会社の場合は、議決権の3%以上の議決権を6か月前から引き続き有する株主は、取締役に対し、株主総会の招集を請求することができる(297条1項)。この請求後も株主総会招集の手続が行われない等の一定の場合には、当該請求をした株主自身が、裁判所の許可を得て、株主総会を招集することができる(297条4項)。

 非公開会社の場合は6か月前からの保有要件はなく、単に保有していればよい。

 この手続によって、取締役会などの恣意によって株主総会が開かれないときに株主の利益が保護される。


③ 株主総会の検査役

 株式会社の経営権などに関して争いがあり株主総会が混乱するおそれがある場合などには、株式会社または株主は、その総会の招集手続きや決議の方法を調査させるために、株主総会に先立ち、裁判所に対して検査役選任の申立てをすることができる(306条1項)。選任された検査役は必要な調査を行い、その証拠などを裁判所に提出したりする(306条5項)。


(4) 株主提案権

 株主提案権には、議題提案権(303条1項)、議案提案権(304条)および議案の要領の通知請求権(305条1項)の3つがある。これは、株主総会の活性化を図り、株主の意思が会社経営に反映できる状況をつくるものである。


(5) 議決権

① 1株1議決権の原則とその例外

(a) 1株1議決権の原則

 株主は、株主総会において、原則としてその有する株式1株につき1個の議決権をもっている(308条1項)。これを、1株1議決権の原則という。

(b) 1株1議決権の原則の例外

 1株1議決権の原則の主な例外は、次の通りである。

ⅰ)議決権制限株式

 議決権制限株式とは、株主総会において議決権を行使することができる事項について制限のある株式をいう(108条1項3号)。例えば、すべての株主総会決議事項について議決権を有しない株式(全部議決権制限株式)はこれに当たる。

ⅱ)自己株式

 株式会社は、自己株式については、議決権を有しない(308条2項)。これは、会社の意のままに株主総会が操作されることを防止するためである。

ⅲ)相互保有株式

 支配会社によって議決権の4分の1以上を保有されるなどしてその経営が実質的に支配されている被支配会社は、支配会社の株式を保有していたとしても、その議決権を行使することができない(308条1項括弧書)。子会社を利用した親会社による株主総会の操作を防止するためである。


② 議決権の行使方法

(a) 議決権の代理行使

 株主は、代理人によってその議決権を行使することができる(310条1項)。

 わが国では定時株主総会の開催期日が集中していることもあり、総会に自らが出席して議決権を行使することが困難な株主に対して、その議決権行使の機会を保証することが代理行使を認める理由のひとつである。

 なお、代理人資格を誰でもよいことにすると株主総会が株主以外に第三者によって攪乱されるおそれがある。判例は、これを防止するために、議決権行使の代理人資格を定款によって株主に限定することは、会社の利益を保護するという合理的な理由のための相当程度の制限であるとして、その有効性を肯定している(最判昭43.11.1)。

(b) 書面による議決権の行使

 書面による議決権の行使は、議決権行使書面に必要な事項を記載し、これを株式会社に提出して行う(311条1項)。これを、書面投票制度ともいう。

(c) 電磁的方法による議決権の行使

 電磁的方法による議決権の行使は、株式会社の承諾を得て、議決権行使書面に記載すべき事項を、電磁的方法により当該株式会社に提出して行う(312条1項)。これを、電子投票制度ともいう。

(d) 議決権の不統一行使

 例えば、株主が複数の議決権を有する場合において、その一部をもって賛成し、残部をもって反対するように、株主は、その有する議決権を統一しないで行使することができる(313条1項)。

 株主が株式の信託を受けているなど、他人のために株式を保有していることもあるので、このような場合にはその他人の意向に沿って議決権を行使することを認めたほうが妥当だからである。


③ 単元株制度

 単元株制度とは、定款で定めた一定数の株式を1単元として、1単元の株式に1議決権を認める制度である(188条)。この場合、単元未満株式には議決権は認められない。たとえば、1単元が100株とされているときは、100株ごとに1議決権が与えられ、50株のように100株未満の株式しか保有しない株主には議決権は与えられない。株主管理コストの軽減を図るために、この制度は設けられている。

 単元未満株式を保有する株主を単元未満株主という。単元未満株主は単元未満株式について株主総会で議決権を行使することができない。単元未満株主には、会社に対して単元未満株式の買取請求権(192条1項)が認められる。また定款に定めがあれば会社に対して自己の保有する単元未満株とあわせて1単元となる分の株式の売渡請求権(194条1項)が認められている。なお、単元未満株式は議決権を除く株主の権利を有する。 


(6) 株主総会の決議

① 各種の決議

 株主総会の決議は、原則として、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数で行われる(309条1項)。



普通決議法律または定款により別段の決議方法が定められていない事項について、①議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席(定足数)し、②出席した当該株主の議決権の過半数(決議要件)をもって行われる決議(309条1項)
※ 定款の定めにより定足数を加減することは認められる。しかし、役員(取締役、会計参与および監査役を選任し、または解任する株主総会(累積投票により選任された取締役または監査役を解任する場合を除く)の決議は重要な事項であるから、定足数につき、議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1未満に引き下げることはできない(341条)。
特別決議①当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(3分の1以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し(定足数)、②出席した当該株主の議決権の3分の2(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数(決議要件)をもって行われる決議(309条2項)
※ 特別決議を要する主な株主総会の決議事項
1. 譲渡制限株式の譲渡不承認の場合の会社による買取り(140条2項)
2. 特定の株主からの自己株式の取得(160条1項)
3. 株式の併合(180条2項)
4. 累積投票により選任された取締役または監査役の解任(339条1項)
特殊の決議特別決議よりも重い要件が定められている決議


② 株主総会の決議の省略

 取締役または株主が株主総会の目的である事項について提案をした場合において、当該提案につき株主(当該事項について議決権を行使することができるものに限る)の全員が書面または電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の株主総会の決議があったものとみなされる(319条1項)。

(7) 株主総会の議事進行等

① 取締役等の説明義務

 取締役、会計参与、監査役および執行役は、株主総会において株主から特定の事項について説明を求められた場合には、原則として当該事項について必要な説明をしなければならない(314条)。

② 株主総会の議事録

(a) 議事録の作成

 株主総会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成しなければならない(318条1項)。

(b) 議事録の備置き

 株式会社は、株主総会の日から10年間、株主総会の議事録をその本店に備え置かなければならない(318条2項)。

(c) 議事録の閲覧・謄写請求権

 株主および債権者は、株式会社の営業時間内は、いつでも、議事録が書面をもって作成されているときは、当該書面または当該書面の写しの閲覧または謄写の請求をすることができる(318条4項)。

(8) 株主総会の決議に瑕疵がある場合

 株主総会の招集手続や決議方法・内容に法令もしくは定款違反の瑕疵が存在する場合の処置について、会社法は、決議不存在確認の訴え、決議無効確認の訴えおよび決議取消の訴えの制度を設けている。




瑕疵の内容提訴権者提訴期間
決議の不存在の確認の訴え
(830条1項)
決議が存在しない限定がない限定がない
決議の無効の確認の訴え
(830条2項)
決議の内容が法令に違反 限定がない限定がない
決議の取消しの訴え
(831条1項)
1. 株主総会の招集の手続または決議の方法が法令もしくは定款に違反し、または著しく不公正なとき
2. 株主総会の決議の内容が定款に違反するとき
3. 株主総会の決議について特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって、著しく不当な決議がされたとき
株主等、当該決議の取消により株主、取締役、監査役または清算人となる者
(一部の株主に招集通知が発送されていなかったときに、通知の受取っていた株主であっても、手続の瑕疵を理由に決議の取り消しを求めて提訴することができる)
決議の日から3箇月以内
(提訴期間経過後に新たな取消事由を追加して主張することはできない)


なお、決議取消の訴えでは、一定の場合に、裁判所による裁量棄却を認めている。つまり、株主総会の招集の手続または決議の方法が法令または定款に違反するときであっても、裁判所は、その違反する事実が重大でなく、かつ、決議に影響を及ぼさないものであると認めるときは、請求を棄却することができる(831条2項)。


cf. 『株主総会の決議』について特別の利害関係を有する株主は、その決議に加わることができる。これに対し、『取締役会の決議』について特別の利害関係を有する取締役は議決に加わることができない(369条)。株主は本質的に会社に対してなんらかの利害関係を有するのが当然であるし、会社法としては数多くの株主の存在を想定しているから、そういった株主を選んで排除するという作業は非現実的だと考えるのである。一方の取締役会にはそのような事情がないということが比較できよう。



機関設計

(1) 総説

 株式会社の機関の設計については、①株式会社の規模に応じた機関の設計という考え方が、必ずしも適切な企業経営を実現するものではないこと、②株式会社と有限会社を統合して株式会社に一本化するとしても、従来有限会社という特別な類型の会社において認められていた機関の設計を、会社法でも引き続き採用したいとの要望があったこと等の理由から、会社法は、株主総会以外の機関の設置について、①公開会社か否か、②大会社か否かの2つの視点から4つに区分し、その4つの類型に応じた最低限の機関の設置を強制しつつ、それ以上の部分については、各会社が自由に機関の設計を選択することができるようにしている。


(2) 公開会社である大会社

 公開会社である大会社においては、株主が不特定多数であり、かつ、会社債権者が多数であるため、株主および会社債権者の利益を法によって厳格に保護することが要請されている。そこで、会社法は、監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社を除いて、監査役会および会計監査人の設置を義務付けている(328条1項)。したがって、公開会社である大会社は、次のいずれかの機関設計しか認められない。


【公開会社である大会社の機関設計】

① 監査役会設置会社

 株主総会+取締役会+監査役会+会計監査人

② 監査等委員会設置会社

 株主総会+取締役会+監査等委員会+会計監査人

③ 指名委員会等設置会社

 株主総会+取締役会+指名委員会等+会計監査人



cf. 監査等委員会設置会社および指名委員会等設置会社は、会計監査人を置かなければならない(327条5項)。


【会計監査人】

株式会社の計算書類およびその附属明細書、臨時計算書類並びに連結計算書類を監査する権限を有する者をいう(396条1項)。


(3) 公開会社でない大会社

 公開会社でない大会社においては、株式の譲渡制限が設けられている趣旨に鑑み、会社の運営の安定を図りつつ、会社債権者の利益を保護する機関設計が要請される。そこで、会社法は会計監査人の設置を義務づけた上で(328条2項)、監査役会、監査等委員会、指名委員会等の設置については任意としている。したがって、次のような機関設計を採ることが可能である。


① 監査役会設置会社

 株主総会+取締役会+監査役会+会計監査人

② 監査等委員会設置会社

 株主総会+取締役会+監査等委員会+会計監査人

③ 指名委員会等設置会社

 株主総会+取締役会+指名委員会等+会計監査人

④ その他

(a) 株主総会+取締役+監査役+会計監査人

(b) 株主総会+取締役会+監査役+会計監査人



cf. 監査等委員会設置および指名委員会等設置会社を除く会計監査人設置会社においては、業務監査権限を有する監査役を置かなければならない(327条3項、389条)。このように、会計監査人と業務監査権限を有する監査役は一体的関係を有しているが、これは、監査役に会計監査人の選任等に関する議案の内容についての決定権を与えることによって(344条、399条1項)、会社の経営を行う取締役等の圧力から会計監査人の独立性を守ろうとするものである。なお、同様の理由から、会計監査人と、監査役会、監査等委員会または指名委員会等とは一体的関係を有している(328条1項、327条5項、344条3項、404条2項2号、399条2項・3項・4項)。


(4) 公開会社、かつ、大会社でない株式会社

 公開会社、かつ、大会社でない株式会社においては、株式の譲渡は自由であるため、不特定多数の株主が会社に参加することが想定されている。そこで、会社経営の合理化を担保するため、取締役会の設置が義務付けられている(327条1項1号)。しかし、公開会社である大会社と比較して、会社債権者が少ないことが想定されるため、公開会社である大会社において義務付けられていた会計監査人の設置は義務付けられていない。したがって、次のような機関設計を採ることが可能である。

① 監査役会設置会社

(a) 株主総会+取締役会+監査役会

(b) 株主総会+取締役会+監査役会+会計監査人

② 監査等委員会設置会社

株主総会+取締役会+監査等委員会+会計監査人

③ 指名委員会等設置会社

株主総会+取締役会+指名委員会等+会計監査人

④ その他

(a) 株主総会+取締役会+監査役

(b) 株主総会+取締役会+監査役+会計監査人



cf. 取締役会が設置された場合、株主総会の権限が限定され(295条2項)、取締役会が業務執行の決定の権限を有することになる(362条2項1号)ため、原則として、取締役の職務の執行を監査する監査役(監査役会含む)、監査等委員会または指名委員会等を設置しなければならない(327条2項本文)。


(5) 公開会社でなく、かつ、大会社でない株式会社

 公開会社でなく、かつ、大会社でない株式会社にあっても、任意に公開会社または大会社と同様の機関設計を選択することを禁止する必要はない。したがって、2.~4.において認められた機関設計を採ることが可能である。

 また、公開会社でなく、かつ、大会社でない株式会社においては、株主の変動が少なく、かつ、会社債権者の数も大会社と比較して少ないことが想定されるし、株式会社と有限会社を統合して株式会社に一本化したことにより、それまで有限会社において認められていた機関の設計を引き続き採用したいとの要望にも配慮する必要があった。そこで、会社法は、取締役会や監査役の設置については任意としている。したがって、次のような機関設計を採ることも可能である。

① 取締役会設置会社

株主総会+取締役会+監査役(会計監査の権限のみ)

株主総会+取締役会+会計参与

② その他

株主総会+取締役

株主総会+取締役+監査役

株主総会+取締役+監査役(会計監査の権限のみ)


【会計参与】

取締役(指名委員会等設置会社においては執行役)と共同して、計算書類およびその付属明細書、臨時計算書類、ならびに連結計算書類を作成する権限を有する者をいう(374条1項・6項)。