• 商法・会社法ー2.会社法
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1総則

堀川 寿和2021/12/07 12:38

 会社法は、株式会社および持分会社(=合名会社、合資会社および合同会社の総称)の設立、組織、運営および管理について定めた法律である。ここでは、商法の規律する個人商人との比較において、会社の特徴を捉えるとよい。

 なぜ会社の制度が必要とされるかというと、人が何らかの事業を行うにあたり、①事業規模を大きくしてしっかりと利益を上げていくためには、個人事業より団体による事業のほうが適切であるということと、②事業への出資者が、会社債権者に対してなんらの責任も負わない仕組みを作ることで、より多くの事業資金を調達したいということがあげられる。


会社の概念

会社とは、株式会社、合名会社、合資会社、合同会社をいう(2条1号)。会社は、事業を行うために出資者(社員)を集め、それによって得た利益を出資者である構成員に分配することを目的とする団体である。

 以下の3つの特徴を有する。


(1) 法人性

 会社は法人とされる(3条)。法人格を認めることにより、団体名で権利を有し義務を負うことが認められる。そして、法人格取得の要件を定め、その要件がみたされたときは、行政官庁の免許等の取得を問題としないで当然に法人格を認める(準則主義)。


(2) 営利性

 会社は営利事業を行い、それによって得た利益を構成員に分配することを目的とする団体である。そのため、会社は、対外的活動によって収益の増大を図ることと、収益を構成員に分配することが必要である。


(3) 社団性

 会社は社団である。社団とは、組合に対する概念で、法的形式として、出資者である団体の構成員が相互に契約関係で結合する団体を組合、構成員が団体との間の社員関係により団体を通じて間接的に結合する団体を社団という。


社員の種類

 会社法にいう『社員』とは、従業員のことではない。あくまで出資者のことである。社員の責任・義務の負い方により、会社の種類が変わってくる。会社財産をもって会社の債務を完済することができないときに、社員が連帯して会社債権者に対して直接弁済の責任を負う場合を直接責任といい、社員が会社債権者に直接責任を負わない場合を間接責任という。また、社員が会社債権者に対して責任を負うときに、社員が会社に出資した限度で責任を負担する場合を有限責任といい、会社債権者に対して債務が残存する限り、出資した限度に関係なく責任を負担する場合を無限責任という。

会社の種類

 会社法上の会社には、株式会社と持分会社の2つの類型があり、持分会社には合名会社・合資会社・合同会社の3つの種類がある。


(1) 株式会社

 株式会社の社員である株主は、間接有限責任社員である。

 つまり、株主は、株式についての払込みまたは給付という形で会社に出資する義務を負うだけで、会社債権者に対して何ら責任を負わない。


(2) 合名会社

 合名会社とは、社員の全員が直接無限責任社員である会社をいう(576条2項)。

 合名会社では、定款に別段の定めがない限り、全社員が業務執行権を持ち(590条1項)、業務執行社員各自が会社を代表する権限を有する(599条1項2項)。また、社員各自が会社債務の全額について、会社債権者に対し連帯責任を負う反面、債権者に会社資産からまず弁済を受けるよう求めることができる(580条1項1号、581条)。


(3) 合資会社

 合資会社とは、合名会社の社員と同じ責任を負う無限責任社員と、定款記載の出資の額までしか責任を負わない有限責任社員からなる会社をいう(576 条3項)。

 合資会社においても、定款に別段の定めがない限り、全社員が業務執行権を持ち(590 条1項)、業務執行社員各自が会社を代表する権限を有する(599 条1項2項)。

 なお、無限責任社員も有限責任社員も直接責任を負う。


(4) 合同会社

 合同会社とは、会社法で創設された新しい種類の会社であり、持分会社の類型に属するが、間接有限責任社員のみからなる会社である(576 条4項)。

 合同会社においても、定款に別段の定めがない限り、全社員が業務執行権を持ち(590 条1項)、業務執行者社員各自が会社を代表する権限を有する(599 条1項2項)。他方、会社の債務については、定款記載の出資の額までしか責任を負わず(580 条2項)、社員の有限責任が保障されている。

【直接責任】

社員(=会社における出資者)が会社債権者に対して、直接に会社の債務を弁済する責任を負うことをいう。

【間接責任】

社員の出資義務の履行によって会社に提供された会社財産が、会社債権者に対する弁済の財源となるという意味での責任をいう。

【無限責任】

会社が負っている債務の範囲内で、社員がその個人財産で限度なしに責任を負うことをいう。

【有限責任】

会社債権者に対し、社員が出資の限度でのみ責任を負うことをいう。