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1商号

堀川 寿和2021/12/07 10:35

意義

 商号とは、商人や会社(以下この節では「企業」という)がその営業上の活動において自己を表示するために用いる名称をいう。したがって、商号は商人の同一性を維持し、また取引の相手方などの信用の標的となる機能がある。

商号単一の原則

 1個の営業に数個の商号を認めると、取引の相手方が誰と取引しているかについて誤認する危険があるため、1個の営業には1個の商号のみが許される。この原則を、商号単一の原則という。

 したがって、個人商人が複数の営業を営む場合には、その営業ごとに複数の商号を使用することができる。これに対して、会社にあっては、商号は自然人の氏名と同様にその全人格をあらわしており、すべての生活関係において用いられるべきであるから、複数の営業を営む場合であっても、1個の商号しか使用することはできない。


商号の選定

(1) 商号選定自由の原則

 商人は、その氏、氏名その他の名称をもってその商号とすることができる(11条1項)として、商人が商号を自由に選定できることとした。これを商号選定自由の原則という。


(2) 商号選定自由の原則の例外

 商号の選定が自由といっても、どのような商号をつけてもよいというわけではない。まず、商号は名称であるので、文字で表示されるものでなければならず、記号や図形を商号とすることはできない。

 また、営業主体を誤認させるような商号を用いることは許されない。そこで、取引の相手方の利益が害されることを防ぐために、不正の目的をもって、他の商人であると誤認させるおそれのある名称または商号を使用してはならない(12条1項)とされる。 これに違反する名称または商号の使用によって営業上の利益を侵害され、または侵害されるおそれがある商人は、その営業上の利益を侵害する者または侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止または予防を請求することができる(12条2項)。また、不正の目的をもって、他の商人であると誤認させるおそれのある名称または商号を使用した者は、100万円以下の過料に処せられる(13条)。

 個人商店の場合、商号の使用は強制されないが、会社については、会社はその名称を商号とし、会社の種類にしたがって商号中に株式会社、合名会社、合資会社または合同会社の名称を用いなければならない(会社法6条1項・2項)。したがって、会社は1つの商号しか使用することができない。また、株式会社でない者が株式会社を名乗るように、他の種類の会社であると誤認されるような文字を用いることはできない(会社法6条3項)。また、会社でない者が会社であると誤認されるおそれのある文字を使うこともできない(会社法7条)