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  • Sec.1

1地方公共団体の財務

堀川 寿和2021/12/06 16:40

地方公共団体の財務に関する法律

(1) 財務の意義

 憲法94条は、地方公共団体に対して、自主行政の権能の一つとして自主財政権を保障している。自主財政権とは、地方公共団体が、その事務処理に必要な経費に充てるため、自治権に基づいて自ら必要な財源を確保し、かつ、これを管理する権能のことである。

 地方公共団体の財務とは、この自主財政権に基づいて、地方公共団体の予算、収入、支出、決算、財産等に関する事務、およびこれらに付随する事務を管理・執行する作用のことをいう。

 さらに、現金と物品の出納・保管に関連する事務を『会計』といい、現金の収入・支出に関する作用を『出納』という。


(2) 財務を規定する法律と地方自治法上の財務に関する規定

 地方公共団体の財務については、地方自治法とその付属法令を始め、地方財政法、地方財政健全化法(「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」)、地方公営企業法、地方税法、地方交付税法等に定めがある。

そして、地方自治法にも財務に関する定めがあり、おおよそ次のように分類することができる。

1. 会計年度および会計区分 2. 予算および決算 3. 収入および支出

4. 現金および有価証券 5. 財産 6. 公正な財務の保障(住民監査請求・住民訴訟)

7. 公の施設


会計

(1) 会計年度独立の原則

 会計年度とは、収入支出の区切りとなる期間をいう。普通地方公共団体の会計年度は、毎年4月1日に始まり、翌年3月31 日に終わる(208条1項)。一定期間ごとに会計を整理区分することによって、収支状況を明確にすることができる。このような会計年度が設けられた趣旨から、原則として各会計年度における歳出は、その年度の歳入をもって充てなければならない(208条2項)。これを会計年度独立の原則という。ただし、この原則を厳格に適用するとかえって円滑な財政運営を阻害する場合があるので、この例外として、継続費(212条)、繰越明許費(213条)等が認められている。


(2) 会計の区分

 普通地方公共団体の会計は、一般会計と特別会計に区分されている(209条1項)。会計は、財政状況を容易に把握できるよう単一であることが本来望ましいが、複雑で多岐にわたる事務を単一の会計で処理することは困難である。そこで、一般会計のほかに特別会計を設けることが認められている。特別会計は、当該普通地方公共団体が特定の事業を行う場合など、特定の歳入をもって特定の歳出に充て一般の歳入歳出と区分して経理する必要がある場合に、条例で設置することができる(同条2項)。


予算

(1) 総計予算主義・予備費

① 総計予算主義の原則

一会計年度における一切の収入および支出は、すべてこれを歳入歳出予算に編入しなければならない(210条)。これを総計予算主義という。

② 予備費

予算外の支出または予算超過の支出に充てるため、普通地方公共団体は一般会計における歳入歳出予算に予備費を計上しなければならない(217条1項本文)。国の場合(憲法87条1項)と異なり、一般会計に予備費を計上することが義務づけられている。ただし、特別会計には、予備費を計上しないことができる(217 条1項但書)。


(2) 予算の調製および執行

 普通地方公共団体の長は、毎会計年度、予算を調製し、年度開始前に、議会の議決を経なければならない(211 条1項前段)。また、長は、政令で定める基準に従って、予算の執行に関する手続を定め、これに従って予算を執行しなければならない(220 条1項)。


(3) 債務負担行為

 一定の場合を除き、普通地方公共団体が債務を負担する行為をするには、予算で債務負担行為として定めておかなければならない(214 条)。