- 行政法ー6.地方自治法
- 4.住民
- 住民
- Sec.1
1住民
■住民の意義と範囲
地方公共団体は、国民により身近な統治団体として、住民自治の理念を基本に住民の福祉の増進を目的とした活動を行うために設けられているものであり、住民はその地方公共団体の構成員であるとともに、地方自治の運営の主体としての地位を持つことになる。
『住民』といえるためには、その地方公共団体の区域内に住所を有する者を意味するが、『住所』の定義については、「生活の本拠」をいうとするのが一般的であり、何をもって生活の本拠とみるかは具体的事実に即して判断されることとなる。
※ 必ずしも「住民登録をしている(住民票を置いている)こと」が住民の定義ではないことに注意。住民登録の事実は、生活の本拠を認定するための一つの資料となるにすぎない。
cf. 『住所』についての意思主義と客観主義
住所について、住所というためには、その場所を生活の本拠とする意思とその意思を実現した事実の両方を必要とする『意思主義』と、客観的に生活の本拠であると認められれば足りるとする『客観主義』の対立がある。 現在の通説は、客観主義であるとされる。 |
■住民の権利
住民は、法律あるいは条例の定めるところにより、その所属する地方公共団体に対して各種の権利義務を有している。そのうち、住民の有する権利については、役務の提供を受ける権利と住民参加の権利があるが、主なものについてみておこう。
(1) 役務の提供を受ける権利
住民は、その属する普通地方公共団体の役務の提供を等しく受ける権利を有している(10条2項)。役務の提供とは要するに行政サービスのことであり、その内容は、公の施設の利用、貸付制度の利用、保険給付、各種福祉サービスの享受など多岐に亘っており、住民であれば等しくこれらのサービスを受ける権利があるということである。
(2) 住民参加の権利
住民自治の観点から、住民には等しくその地方公共団体の政治に参加する権利が認められている。これらの権利には、選挙に参加する権利や直接請求の権利などがある。以下の節でそれぞれ詳細をみておく。
■選挙に関する権利
(1) 選挙権
普通地方公共団体の議会の議員および長の選挙権は、日本国民たる年齢満18年以上の者で、引き続き3カ月以上市町村の区域内に住所を有するものに認められる(18条)。
(2) 被選挙権
① 議員の被選挙権
普通地方公共団体の議会の議員の被選挙権は、日本国民で3カ月以上当該普通地方公共団体に住所を有する年齢満25年以上の者に与えられる(19条1項)。普通地方公共団体の議会の議員の選挙権を有する者であることが要件となっているためである(19条1項、18条)。
② 長の被選挙権
長の被選挙権は、都道府県知事の場合は日本国民で年齢満30年以上の者に与えられ、市町村長の場合は日本国民で年齢満25年以上の者に与えられる(19条2項3項)。これらの場合、広く人材を求める趣旨から、議員の場合と異なり、住所要件はない。
【被選挙権】
議員(19条1項) | 知事(同条2項) | 市町村長(同条3項) | |
年齢 | 満25年以上 | 満30年以上 | 満25年以上 |
その他 | 1. 日本国民
2. 引き続き3ヶ月以上市町村の区域内に住所を有する | 日本国民 | 日本国民 |