- 行政法ー6.地方自治法
- 2.地方公共団体の意義と種類
- 地方公共団体の意義と種類
- Sec.1
1地方公共団体の意義と種類
■地方公共団体の性質
(1) 概念
地方公共団体とは、地方自治制度において、自治権を行使する主体として位置づけられている団体のことである。地方公共団体は全て法人であり(2条1項)、以下の要素を備えていなければならない。
1. 国の領土の一定の区域を基礎とすること。
2. その区域内の住民を構成員とすること。
3. 憲法及び法律に基づく自治権を有すること。
4. 区域内の地方的な事務を自ら処理する統治団体であること。
(2) 憲法上の地方公共団体の概念
憲法上は、『地方公共団体』の概念について何も規定がない。そのため、憲法上の地方公共団体の概念について、①共同体意識を基礎として判断する考え方、②沿革や行政上の実態を基準に判断する考え方、③これら両方を勘案して判断する考え方、④立法者の意思によるとする考え方、⑤行政執行権能を有するかどうかで判断する考え方等がみられる。
この点、判例は、①と②を基に判断する折衷的な立場を採っているとされる。
判例 | 特別区と憲法上の地方公共団体(最判S38.3.27) |
東京都特別区における区長の公選制を廃止した昭和27年の地方自治法改正の違憲性が争われた事件。 |
《論点》 | 1. 憲法上の『地方公共団体』とは何か?
2. 特別区は地方公共団体といえるか? |
《判旨》 | (論点1)
憲法上の地方公共団体といい得るためには、事実上住民が経済的文化的に密接な共同生活を営み、共同体意識をもっているという社会的基盤が存在し、沿革的にみても、また現実の行政の上においても、相当程度の自主立法権、自主行政権、自主財政権等地方自治の基本的権能を附与された地域団体であることを必要とする。 (論点2) 東京都の特別区は、長い歴史と伝統を有するものではあるが、未だ市町村のごとき完全な自治体としての地位を有していたことはなく、そうした機能を果たしたこともなかった。全く都の下部機構たるに過ぎなかったのである。また、特別区の自治権に重大な制約が加えられているのは、特別区が、東京都という市の性格をも併有した独立地方公共団体の一部を形成していることに基因する。したがって、特別区は、憲法93条2項の地方公共団体と認めることはできない。 |
(3) 成立
地方公共団体は、法律またはこれに基づく処分により設置され、法人格を付与されることで成立する。
■地方公共団体の種類
地方公共団体は、大まかに『普通地方公共団体』と『特別地方公共団体』の2つに分けることができる(1条の3第1項)。
このうち、普通地方公共団体は、一般的・普遍的な公共団体であり、都道府県と市町村の2段階7種類に分けられる。(同条2項)
一方、特別地方公共団体は、政策的見地から特別に設けられたもので、特定の目的を持ち、組織や権能も特殊である。その種類は、特別区、地方公共団体の組合、財産区の3種類に分けられる(同条3項)。
特別地方公共団体も、地方公共団体である以上、全て法人である。
地方公共団体 | 普通地方公共団体 | 都道府県 | 憲法上の地方公共団体 |
市町村 | |||
特別地方公共団体 | 特別区 | ||
地方公共団体の組合 | 一部事務組合 | ||
広域連合 | |||
財産区 |
■普通地方公共団体① 市町村
市町村は、基礎的な地方公共団体であり、地域における事務およびその他の事務で法律またはこれに基づく政令により処理することとされるもののうち、都道府県が処理するものとされているものを除く事務を一般的に処理することとされている(2条3項)。市町村は、住民にもっとも身近な地方公共団体であり、地方自治の基礎となるべきものである。
市となるための要件は地方自治法に定めがあり、①人口5万人以上、②市街地戸数が全体の6割以上、③商工業等従事者が全体の6割以上、④都道府県の条例で定める都市としての要件の具備である(8条1項)。
町となるための要件は、都道府県の条例で定められることになっている(同条3項)。
市町村は、広く地域における公共の事務を処理し、普通地方公共団体の事務とされているもののうち、都道府県が処理するもの以外は全て市町村の事務となる。つまり、市町村は住民の日常生活に直結する事務を幅広く包括的に処理することを任務としているのである。
また、市と町と村の間には基本的に権能の差異はない。ただし、その規模や性質によって、一般の市町村が処理することが適当でないと認められる事務については、その市町村の規模及び能力に応じて処理することができるとされている。
大都市等 | 意義・特徴 |
指定都市
(252条の19~) | 1. 政令で指定する人口50万人以上の市
※ おおむね人口100万人が指定の目安とされている。 2. 本来都道府県が処理すべき事務を、政令で定めるところにより、自ら処理することができる 3. 行政区としての『区』を設けることができる(東京23区とは性質が全く異なる。後述)。 |
中核市
(252条の22~) | 1. 政令で指定する人口20万人以上の市
2. 本来指定都市が処理すべき事務を、政令で定めるところにより、自ら処理することができる。 |