• 行政法ー6.地方自治法
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1地方自治の意義

堀川 寿和2021/12/06 15:42

地方自治の概念と意義

 地方自治とは、国家が、その内部において、国家とは別の法人格をもつ地域団体を認め、その地域団体が地域における事務を自主的に処理するものである。その場合に、『自治』といえるためには、地域団体がその意思に基づいて行為をすることができることが必要であり、団体においてはその構成員の意思により団体の意思が決定されることが求められる。

 そこで、地方公共団体による自治には、以下のものが求められるのである。

1. 地方公共団体を構成している住民の自由な意思と責任に基づいて、その団体の意思が決定されること。

2. 地方公共団体の意思決定が、他からの干渉なしに自主自律的に行われること。

3. 地方公共団体の行為は、自ら自由に決定した意思と責任に基づいて行われること。


憲法上の保障内容

(1) 地方自治に関する憲法の規定

 現行憲法は第8章に、特に『地方自治』の章を設け、地方自治の制度を保障しているが、このことは旧憲法に地方自治に関する規定がなかったことと比較し、現行憲法がいかに地方自治を重視しているかを物語っているといえる。憲法上の地方自治に関する条文は以下のとおり。

1. 「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律でこれを定める」(92条)

2. 「地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する」(93条1項)

3. 「地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する」(93条2項)

4. 「地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる」(94条)

5. 「一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない」(95条)

 このように、地方自治が憲法上の保障を与えられることになったことは、従来、地方制度がそれまで時の政府の政策に大きく左右され、中央の強い統制下にあったことからすれば画期的なことであり、加えて、地方自治制度が単なる立法政策に委ねられるものではなく、地方自治の本旨に基づき、住民自治と団体自治が実効的に機能することを憲法が直接的に求めていることには大きな価値がある。 


(2) 自治の本質と由来

 地方自治における、自治権の本質的な性格がどのようなものであるかについては解釈が分かれている。大きく分けると、『固有権説』と『伝来説』の2つであり、前者は、自治権を前国家的なもので地方公共団体に固有のものと捉える考え方であり、後者は、自治権も国家の統治権に伝来し、その一部が地方公共団体に委譲されたと捉える考え方である。

 この他にもいろいろな考え方があるが、いずれの説を採るとしても、上記の憲法の条文に照らして、その価値を考えるに、地方自治が国家の承認や許容の下にあり、立法政策によって左右されるような考え方をするのは妥当ではなく、地方自治の保障は、地方自治という歴史的・伝統的制度を保障したものとみる『制度的保障説』が通説・判例となっている。


地方自治の本旨

 憲法92条は、地方自治制度に関する法律が地方自治の本旨に基づくべきことを定めている。そこで、地方自治の本質的な内容であるところの『地方自治の本旨』とは何かが問題となる。

 この点、地方自治の考え方が、民主主義と地方分権(自由主義)の要請が結合してできていることから、『住民自治』と『団体自治』の2つの要素からなるとするのが一般的な考え方である。


住民自治その地域社会の公的事務を、住民の意思に基づいて処理させること。
地方自治の民主主義的側面をあらわす。
団体自治国から独立した地域団体に、地域社会の公的事務を処理させること。
地方自治の自由主義的側面をあらわす。