• 行政法ー3.行政作用法
  • 2.行政立法
  • 行政立法
  • Sec.1

1行政立法

堀川 寿和2021/12/06 10:53

 ここからは、行政行為以外の行政作用を見ていく。行政行為とどのように異なるかを意識しながら知識を身に付ける必要がある。

行政立法の意義

 行政立法とは、行政権が法条の形式で(条文の形式で)定立する一般的・抽象的な法規範をいう。一般的・抽象的という点で個別具体的な行為である行政行為と区別される。


(1) 行政立法の必要性

① 福祉国家においては、議会の専門的・技術的能力に限界がある。

② 議会は、状況の変化への即応性に欠ける

③ 客観的・政治的中立の立場で規範を定立すべき場合がある。

④ 地方的事情に配慮する必要がある。


(2) 制定機関による分類

① 政令

 合議体である内閣が発する命令をいう。

② 内閣府令、省令

 内閣府令とは、内閣総理大臣が発する命令であり、省令とは各省大臣が発する命令である。

③ 外局規則

 外局規則とは、各外局の長が個別の法律に基づき発する命令をいう(例:公正取引委員会規則、国家公安委員会規則)。


(3) 効力(内容)による分類

① 法規命令

 法規命令とは、外部的効果を有しており、行政機関が制定する規範のうち、行政主体と私人との間の権利・義務関係を直接規律するものをいう。法規の性質を有しているため、紛争が生じた際には、裁判所は法規命令を適用することになる。法規命令には、「委任命令」と「執行命令」の2種類がある。


(a) 委任命令

委任命令とは、法律の委任により、私人の権利・義務の内容自体を新たに定める規範である。委任命令を制定するには、法律による個別かつ具体的な委任が必要になるとされる。したがって、委任内容が具体化されていない白紙委任や、無条件で一切を委任する包括委任は許されない。

 なお、法律の委任の範囲を超えた委任命令は無効となる。また、個別かつ具体的な法律による委任があれば、委任命令において罰則を設けることも可能である。

(b) 執行命令

 執行命令とは、権利・義務関係の内容自体ではなく、法律を執行するための手続について定める命令である。たとえば、法律によって、ある行為を行うときに行政庁への届出が義務付けられているときに、その届出の様式を定めるものは執行命令にあたる。

 委任命令と異なり、私人との権利・義務の内容を新たに定める規範ではないので、法律の一般的な授権で足りる(個別かつ具体的な委任は必要ない)とされる。


② 行政規則

 行政規則とは、行政機関が定立する規範のうち、行政主体と私人との間の権利・義務を直接規律しない(外部効果を持たない)もの、つまり、行政機関内部を規律するために定められる規範をいう。行政規則は、行政機関内部においては拘束力を有するが、私人の権利・義務に直接影響を与えない(私人を拘束しない)ため、法律の根拠がなくても自由に定めることができる。また、訓令等の行政規則に違反する行為は、職務上の義務違反になることはあっても、私人に関する関係で直ちに違法となることはない。行政規則には訓令、通達などがある。


法律の委任

委任命令にいうところの、『法律の委任』の範囲が問題となる。委任の範囲を超えてしまうと、その委任命令は無効となるからである。


判例監獄法事件(最判H3.7.9)


拘置所に在監中のAが親族であるB(10歳)との面会の許可を拘置所長に求めたが、監獄法施行規則(委任命令)が「14歳未満との接見は原則禁止」と定めていたため許可されなかった。
《論点》上記監獄法施行規則の規定は、監獄法50条による委任の範囲を超え、違法ではないか?
《判旨》監獄法施行規則120条が原則として被拘禁者と幼年者との接見を許さないこととする一方で、規則124条がその例外として限られた場合に監獄の長の裁量によりこれを許すこととしていることが明らかである。しかし、これらの規定は、たとえ事物を弁識する能力の未発達な幼年者の心情を害することがないようにという配慮の下に設けられたものであるとしても、それ自体、法律によらないで、被拘禁者の接見の自由を著しく制限するものであって、法50条の委任の範囲を超えるものといわなければならない。

《POINT》

規則の趣旨は幼年者の心情安定であるが、著しく接見の自由を侵害することになるので、法律の委任の範囲を超える。



行政立法による罰則

法律の委任があれば、行政立法に罰則を設けることは可能である。