- 行政法ー1.行政法総論
- 1.行政法とは
- 行政法とは
- Sec.1
1行政法とは
■行政法とは
行政法とは、国や地方公共団体の行政活動に関して定められた法律の総称である。つまり、行政法という名称の法典が存在するわけではない。そこで、行政法が対象とする「行政」とは何を意味するのかが問題となる。行政は、一般に立法作用および司法作用とならぶ国家作用の1つと理解されている。この行政の定義について、控除説と積極説という、2つの代表的な考え方がある。
(1) 控除説
控除説によると、「行政とは、国家作用のうち、立法と司法を控除したものである」と説明される。立法や司法は比較的容易にその内容を定義することができる。すなわち、立法とは法規を定立することであり、司法とは、一定の手続に従って、私人間の法的な紛争を解決したり、罪を犯した者に刑罰を科したりすることである。しかし、行政の内容については積極的に定義することが困難なため、積極的に定義しないこととしたものである。
行政の定義に関しては、この控除説が有力である。なお、次に述べる積極説に対比して消極説と呼ばれることもある。
(2) 積極説
控除説に対して、行政の特徴を積極的に定義し、行政に固有の領域を確保しようとするのが積極説である。
積極説によると、「行政とは、法の規制を受けながら、現実具体的に国家目的の積極的な実現を目指して行われ全体として統一性をもった継続的な形成的国家作用である」と説明される。なお、控除説の側からは、この定義は行政の特徴や傾向を大づかみに表現したものにすぎないとの批判がある。
■行政法の内容による分類
行政法は、①行政組織法、②行政作用法および③行政救済法という3つの分野に分類することができる。
行政組織法 | 行政活動を誰が行うかを定める法 |
行政作用法 | 行政活動として何を行うかを定める法 |
行政救済法 | 行政活動によって不利益を受けた国民が、どのようにして救済を求めることができるかを定める法 |
(1) 行政組織法
行政組織法とは、行政を行う組織や機構に関して規定した法律を総称するものである。これは、行政主体(国や公共団体その他の行政活動を行う者)に、その存在の根拠を与えるものであり、行政主体や、設置する行政機関の名称や役割の分担などについて定めている。
具体的には、内閣法、国家行政組織法、地方自治法、国家公務員法、地方公務員法などがある。
(2) 行政作用法
行政作用法とは、行政主体が行政目的を実現するために行う活動の内容を定め、これを行う権限を与える法律を総称するものである。これは、行政主体に、その活動の根拠を与えるものである。なお、行政作用とは、たとえば行政行為や行政上の強制措置のように、行政主体が国民の権利や利益に対して影響を与える行為をいう。
具体的には、警察官職務執行法、生活保護法などがある。
(3) 行政救済法
行政救済法とは、違法な行政活動などによって不利益を受けた国民が、国などに対して救済を求める手段を定める法律を総称するものである。
具体的には、行政不服審査法、行政事件訴訟法、国家賠償法などがある。