- 民法ー8.相続
- 1.相続総論
- 相続総論
- Sec.1
1相続総論
■相続
相続とは、亡くなった人(被相続人)の財産を相続人が承継することである。
(1) 相続開始の原因
相続は、被相続人の死亡によって開始する(882条)。死亡には失踪宣告も含まれる(31条)。
(2) 相続の一般的効力
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する(896条1項本文)。承継される財産には、預貯金や不動産などの積極財産だけでなく、借金などの債務(消極財産)も含まれる。
(3) 共同相続の効力
相続人が数人いる場合を共同相続といい、この場合の各相続人を共同相続人という。相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する(898条)。そして、各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する(899条)。
■相続人と相続順位
法定相続人には相続順位があり、先順位の者がいれば後順位の者は相続人になることができない。
相続人は、配偶者と配偶者以外の相続人に分けることができ、配偶者と配偶者以外の相続人は同順位で、同時に相続人になることができる。したがって、配偶者は常に相続人になることができる(890条)。それに対して、配偶者以外の相続人は、①子、②直系尊属、③兄弟姉妹の順に相続人になることができる(887条、889条)。
(1) 配偶者
被相続人の配偶者は、常に相続人となる(890条前段)。配偶者には、内縁関係にある者は含まれない。
配偶者は、他に相続人がいないときは一人で、他に相続人がいるときは、その相続人と共同して相続人となる(890条後段)。
(2) 第1順位 子
被相続人の子は、嫡出子(婚姻関係にある夫婦間に生まれた子)、非嫡出子(婚姻関係にない男女間に生まれた子)ともに、相続人となる(887条1項)。胎児は、相続については、すでに生まれたものとみなされるため(886条1項)、相続人になることができる。
養子は、嫡出子として相続人となる。
(3) 第2順位 直系尊属
被相続人の直系尊属は、被相続人の子(その代襲相続人を含む)がいないときに限り、相続人となり、親等の異なる者の間では、被相続人に近い者を先にする。(889条1項1号)。
(4) 第3順位 兄弟姉妹
被相続人の兄弟姉妹は、被相続人の子(その代襲相続人を含む)も直系尊属もいないときに限り、相続人となる(889条1項2号)。
(5) 代襲相続人
① 子の代襲相続人
被相続人の子に以下のイ)~ハ)の代襲原因が発生した場合は、その者の子(被相続人の孫)が代襲して相続人(代襲相続人)となる(887条2項)。このような相続を、代襲相続という。
イ)相続開始前に既に死亡した場合
ロ)相続人の欠格事由に該当して相続権を失った場合 ハ)廃除によって相続権を失った場合 |
代襲者(被相続人の孫)に代襲原因がある場合は、さらにその者の子(被相続人の曾孫)が代襲して相続人となる(887条3項)。これを、再代襲という。また被相続人の曾孫にも代襲原因がある場合は、再々代襲も認められる。
Point1 相続開始前に既に死亡した場合に同時死亡も含まれる。たとえば、Xには子AとAの子(Xの孫)Bがいた場合に、XとAが同時に死亡したときは、BはAを相続するだけでなく、Aに代わってXを代襲相続することになる。
Point2 相続を放棄した者は、その相続に関しては初めから相続人とならなかったものとみなされるので(939条)、相続人となるべき者が、相続を放棄した場合には、代襲相続は行われない。
② 兄弟姉妹の代襲相続人
被相続人の兄弟姉妹に上記のイ)またはロ)の代襲原因が発生した場合は、その者の子(被相続人の甥姪)が代襲して相続人となる。なお、兄弟姉妹には再代襲は認められない(889条2項、887条2項)。